震災・列島・“みんな”、超巨大GPS文字を描き伝えたかった思いとは?【未来美術家・遠藤一郎さんインタビュー(1)】

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日本の現代アートシーンの中でも、ひときわ素朴でストレートな作品を生み出し続けている「未来美術家」・遠藤一郎さん。彼は一目見たら忘れられない愛車「未来へ号」で車上生活を送り、車体に出会った人々の「夢」を書き込んでもらいながら、日本全国を走り回っています。彼は今年1月、日本全国を車で走破。GPSを使って日本列島に巨大な文字を描き、2011年3月11日「以後」だから伝えたいことを表現しました。

大学を出て就職するという現代日本の「普通の生き方」とは違う道を突き進み、「未来美術家」という仕事を信念一つで創り出した遠藤さんに、直近のプロジェクトのいきさつから「朝起きて最初にすること」まで、直球で尋ねてみました。

インタビュー当日は、東京都心に雪が降り積もっていました。

杉原:
今現在は「未来美術家」という肩書きをお持ちの遠藤さんですが、現代アートの文脈とは異なる所に赴く時には、どのようにご自身をご紹介されることが多いですか?

遠藤:
分かりやすく表に出るときは「未来美術家」という形で表に出ることは多いかな。自分で自分を紹介する時は、最近なんて言ってるかな。「ドライバー」っていうことが多いかな。

杉原:
「ドライバー」ですか。

遠藤:
「『未来へ号』のドライバー」って言うことが多いし、自分もその意識の方が強いね。

その延長で美術とか。もちろん美術とか芸術とかをやっている意識もあるけど、自分で言う時は「ドライバー」というのが一番多いね。

杉原:
日本列島にGPSでメッセージを描いた直近の一大プロジェクト「RAINBOW JAPAN」を実行に移したきっかけを教えて下さい。

遠藤:
僕は「未来へ号」でずっと移動してるんだけど、当てもなく動いてるわけじゃなくて、プロジェクトだとか仕事だとか、何かしら目的がある。車にGPSを積んで軌跡を描いて、「こういう風に走っているんだ」っていうのをラインで見せたら面白いなって思ってて、GPSを使おうかというアイデアはずっとあったんだ。

だけど本当に、「よしこれはもうやるしかない」っていう直接のきっかけになったのは、やっぱり震災があったから。震災があって、僕は手伝いをしに東北に行ったりしていたんだけど、それは(今回のプロジェクトとは無関係の)ごく普通の手伝いだったの。

その当時、日本のある一部分で物凄いことが起こっていて、そこにいろんな意識がばーっと集中してるような感じだったけども、本当は日本全体でそれは考えていかなきゃいけない。日本全体のものとして捉えていかなきゃいけないという意識がすごくあったんだよ。現地だけで抱えてしまうにはとんでもなく苛酷なわけだから。もちろん他の地域からも意識を向けてはいるんだけど、そこでもいろんなことが起こってて。

例えば、同じ時期に九州でも噴火したりとかしてたじゃない?実は、そっちには人が全然行ってなかった。だから、早めの時期に震災の手伝いに行って、その後九州まで下って、そこの仲間の連中に会って話したりして、また北上して東北に手伝いに行って。その中で、列島として、何かひとつの共有意識みたいなのが必要だって思ったんだ。

でも、コンセプトだけだと全然伝わらない。だから実際に目に見える形で、列島全体にメッセージを描くしかないなと思ったんだよ。そしてそれを、「ほおら」って言って見せる。「フォトショのペンで上から書いて作ったんじゃないんだよ、実際に全国を回ったからあるんだよ」っていって。

そうしないと伝わらないしさ、見せられた人も実感として入ってこないでしょ。見た人が「そうかあ」って思って、共鳴していく。実際に日本を走ったのってまやかしじゃないじゃない、リアルなわけだから。そういうところで共鳴っていうのは作って行きたいね。

杉原:
なるほど。

それとね、(プロジェクトを実行したのは)もうひとつ理由があって。これまでずっと「未来へ号」に乗ってきて、いろんな人が未来へ号に夢を書いてくれてるの。

未来へ号に書かれることって、その時の世相みたいなもの……、その場所とかその時の世相みたいなのがすごく現れる。この場所の人はこんなことばかり書くんだなとか。この時期の中学生はAKBのことばっか書くんだなとか。そういうのがすごく現れる。

震災が起こってから、東北やそれ以外の地域でも「みんな」っていう言葉が書かれることがすごく増えたの。「“みんな”で帰りたい」とか、「“みんな”で元気になりたい」とか。自分だけじゃなくて周りがあって自分が生きてるっていう、むちゃくちゃ当たり前のことだけど、それがすごいクリアでリアルになってて、それに気づいたのも、すごい大きな理由だった。

震災の前から「みんな」っていうワードは作品で書いてたりしてて、それが足りないからいろいろ(作品制作などを)やるわけだけど、それが震災後のメッセージにすごいリアルに出されてて。それこそ“みんな”がそう書いてるから、目に見える形で「みんな」ってどういうことなのかっていうのを見せなきゃいけないなって思った。社会にはいろんな役割があるけど、「芸術家」とかさ、「未来へ号ドライバー」とかさ、そういうヤツに出来る仕事じゃん、そういうことって。

杉原:
そんなに露骨に、傾向が現れるものなんですね。

遠藤:
露骨だったよ。まあ、俺はずっと「未来へ号」に乗ってまわってたから、敏感になってたというのはあるけど。

杉原:
「RAINBOW JAPAN PROJECT」で描く文字、私はてっきり「未来へ」になるんじゃないかと思って、活動報告をする遠藤さんのツイートをリアルタイムで見ていました。

YouTubeにアップロード後、ツイートで拡散されていた、プロジェクトの進捗を伝えるムービー。何本にもわたる動画の大トリで、文字の内容バレもありますが、遠藤さんの魂がこもったシャウトはぜひ音声で聞いてみてほしいところ。

未来へ号 RAINBOW JAPAN vol.21 2012.1.29 #GoForFuture – YouTube

遠藤:
でしょ?俺も「未来へ」になると思ってた。

杉原:
えっ?

遠藤:
俺も「『未来へ』かなー、さしあたり」って思ってたけどね。だけどね、(「未来へ」と書かなかったのは)すごく単純な理由なのよ。

列島に「未来へ」って書いたら、何かもうちょっと書けそうだったの。列島が余ったの。かといって、うまいこと「未来へ」って入れようとするとさ、すげー横長になる。普通のすげーシンプルな理由だったりするよ、そういうことって(笑)

完成したGPS文字。「いっせ~の~せ」と本州全体を使って描かれています。

「未来へ」はもう間違いないんだけど、そのメッセージは車に書いて日本全国を回ってる。だから今回は列島全体で「さあっ!」っていう共鳴みたいなものを、どうせなら、どーんとやりたかったのよね。で、「みんな」ってことを伝えたくて、大人からお年寄りまでわかんなきゃなんない。その言葉一発で「おっ」とみんな巻き込んでしまう、となると、「いっせ~の~せ」かなって。……伝わった?

杉原:
うーん、何となく。

遠藤:
何となく?ほんと?(笑)

杉原:
「いっせ~の~せ」って、おそらく前から作品でも書いてまgkk-すよね?

遠藤:
たぶん書いてたと思うよ。名刺とかにも「せ~の」って書いてあるしね。この写真は震災よりも全然前に撮ったんだけど。「せ~の」だなっていうのはずっと前から言ってた。

遠藤さんの名刺に使われている写真。せ~の、と書かれた名刺の裏一面に印刷されています。

杉原:
GPSで文字を書き終わったから、てっきり「RAINBOW JAPAN PROJECT」自体が終わったのかなと思っていたんですけど、3月24日~25日に行われる「六本木アートナイト」の予定プログラムの紹介文を読むと、まだ続いてるような感じがあったんですが、実はまだ続いてるんでしょうか?

遠藤:
続いてる、続いてる。1回じゃあなかなか伝わらないよ。何回もやらないと。

しかも、列島にメッセージを書くってさ、見たことないでしょ?見たことないから、みんな分かんないし実感もわかない。だからこそやったんだけど、「ほらこうなった、実際に書いてあるじゃん」というのを一発目に見せて、そこからどんどんいろんな人が協力して「面白いから一緒にやろうよ」ってなって巻き込まれて、そこから広がっていくから、ここで止まったら、自分たちがやったということだけで終わっちゃう。

杉原:
「六本木アートナイト」では、新聞などですでに掲載されているのとは別の文字を発表するんですか?

遠藤:
いや、「六本木アートナイト」で発表するのは第一弾(いっせ~の~せ)を発表する。その後で、5月、6月くらいでまた描きに出ようかなと思って。それから3回目やって、ユーラシア大陸行って。

杉原:
大陸全体に文字を?

遠藤:
そりゃあそうだね。スケールが大きくなっていくのが面白いじゃない(笑)

続いて、最近遠藤さんがよく用いる「凧」についての話から、「未来美術家」という仕事を創り出すに至るまでのいきさつなどに迫ります。

<info>
3月24日(土)、25日(日)に開催される「六本木アートナイト」に、遠藤一郎さんも出展します。詳細は下記HPにて。

六本木アートナイト Roppongi Art Night

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