NTTドコモが「Tizen」発売を見送った理由が判明、Windows Phoneなどにも影響か



「第3のOS」としてリリースすることを決めていた「Tizen」搭載スマートフォンについて、NTTドコモが導入を見送ることを表明しましたが、その理由が判明しました。詳細は以下から。



◆突然Tizenスマートフォン発売見送りを表明したNTTドコモ
NTTドコモが今年1月16日に報道関係者向けに行った告知では、同社がTizen OSを採用したスマートフォンの導入を当面見送ることが表明されています。

株式会社NTTドコモは、2013年度内の導入を目指しておりましたTizenOSを搭載したスマートフォンに関して、モバイル市場を取り巻く環境の変化に鑑み、導入を当面見送ることと致しました。

引き続き、Tizen Associationのメンバーとして、TizenOSの普及に向けて取り組んで参ります。


◆Tizen販売延期はiPhoneの不振が原因に
昨年7月に「Tizenが死に体状態にある」という海外報道を受け、発売予定について問い合わせた際、「予定通り、年内に発売する予定です」とコメントしていたNTTドコモ。しかし結局年内発売は延期され、今年度中の発売すら実現しなかったわけですが、気になるのはその背景。

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「週刊ダイヤモンド」の報道では発売見送りが発表された1月16日は本来、渋谷ヒカリエでTizenスマートフォンが大々的に発表される予定だったことや、関係者に向けて案内を送る準備がほぼ整った2013年末に急遽ストップがかかったことが明かされています。

また、「端末は出来上がっている」と訴える開発陣を尻目に、1月16日当日の幹部会議で導入を見送る決定が下されたことにも触れられており、NTTドコモが述べた「モバイル市場を取り巻く環境の変化」の具体例として、iPhone 5s/5cを導入したにもかかわらず、スマートフォンの販売台数が想定ほど伸びず、Tizenで勝負に出るわけにはいかなかったことが挙げられています。

◆純増No.1獲得も携帯電話契約はいまだに純減しているNTTドコモ
なお、NTTドコモは2013年12月度に「PS Vita」向けプリペイドカード発行ラッシュが訪れた2011年12月以来、実に2年ぶりとなる純増1位を獲得。人気機種「iPhone 5s」の品薄が解消し、大きく伸びを見せたためと思われていましたが、以前もお伝えした通り、契約数の内訳を見ると決してそうではないことが分かります。

これが2013年12月度のNTTドコモ契約数の内訳。プリペイド契約が7900、通信モジュールサービス契約は1万4700純増する一方で、iモードやspモード契約自体は1万3600の純減。つまりフィーチャーフォンやスマートフォンといった純粋な「携帯電話」の契約は減少しているわけです。


そして地域別の内訳を見ると、純増数27万9100のうち、24万200契約が関東・甲信越地方と突出。同地方では日本通信やIIJ、OCNなどの事業者がドコモ回線を用いて提供している安価なSIMカードの契約数が一括カウントされるため、純増トップはスマートフォンを含む携帯電話販売の増加ではなく、格安SIMカード発行によるものだと分かります。


◆「勝負に出られない」NTTドコモ、TizenだけでなくWindows Phoneなどにも影響か
武器となるはずのiPhoneが思ったほど威力を発揮せず、おまけにAndroidスマートフォンの売り上げにまで影響を及ぼす中、アプリケーションやサービスも十分に揃っていない第3のOS「Tizen」で勝負に打って出ても、討ち死にしかねない……というのが今回のTizen延期の背景ということになりますが、懸念されるのが他のプラットフォームへの影響。

2012年11月にマイクロソフトと法人向けタブレットで提携した際、NTTドコモの加藤社長がWindows Phoneについて「市場の動向を注視していきたい」とコメントしていましたが、1年以上が経過した今も一切リリースされていない現状を考えると、ドコモ社内ではTizenと同じ扱いになりつつあるのではないでしょうか。


ちなみにソフトバンクモバイルは2013年冬~2014年春モデルのAndroidスマートフォンを3機種(ディズニー・モバイル向けの派生モデルを除く)にまで絞り込んだほか、発表会では孫正義氏がWindows PhoneやTizen、Firefox OSについて「他社さんは興味を持つかもしれないけれども主流になるとは思わない」とコメントし、興味がないことを明確にしていました。


コンスタントに売れるiPhoneと、ラインナップを先鋭化して絞り込んだAndroidのみの展開にとどめれば、販売促進費用を低減できるだけでなく、特定の端末が壊滅的な売り上げ不振に見舞われる事態も回避できるなど、リスクを最小限に抑えられるため、間違っていないと思われるソフトバンクの方針。

しかしコスト削減のためにメーカーが各携帯電話会社向けにほぼ同じ内容のモデルをリリースするようになった今、「横並び」の様相は強くなる一方で、必然的にユーザーの選択肢は狭まらざるを得ないわけですが、各社が同様の方針を採用し、新たなOSや今までに無かったような機種といった新しい風が吹き込まないのであれば、スマートフォンはどんどん「つまらないもの」となってしまうのではないでしょうか。

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