パケット代青天井は「抑止力」、ソフトバンクが落とし穴だらけの新料金プランに対する考えを表明



1月24日にソフトバンクモバイルが「VoLTE時代の革新的な新定額サービスが登場!」と鼻息荒く発表した新料金プラン。データ通信と通話定額オプションを統合したプランではあるものの、パケット代が青天井になるなどの問題もあるわけですが、同社が考えを表明しました。

◆ソフトバンクが発表した新定額サービスをおさらいしてみる
ソフトバンクモバイルが2014年4月21日に開始する予定の通話定額サービスは以下の3パック。内容はSoftBank 4GおよびSoftBank 4G LTEに対応するすべてのスマートフォンで、ソフトバンクおよび他社携帯電話、固定電話などへの国内音声通話が無料になるという内容です。

Sパック(月額5980円):1回3分以内の通話が月50回無料、データ通信は2GBまで
Mパック(月額6980円):1回5分以内の通話が月1000回無料、データ通信は7GBまで
Lパック(月額9980円):1回5分以内の通話が月1000回無料、データ通信は15GBまで



専用基本料は2年契約時、月額980円。テザリングオプション、Wi-Fiスポットは無料です。


◆パケット代青天井など、新定額サービスの落とし穴をまとめてみた
新プランについて「音声定額とパケット定額がセットになったパックプランは、米国など世界の携帯電話事業者ですでに導入されている先進的な料金プランです」とソフトバンクは述べていますが、今までのサービス形態と大きく異なることによる「落とし穴」が多いのも事実。まず問題点をまとめてみました。

・そもそもVoLTEではない
「VoLTE時代の革新的な新定額サービス」と謳っているものの、今回の新サービスは音声をデータ化し、LTEネットワークのパケット通信網を利用して通話する「VoLTE(ヴォルテ、Voice Over LTE)」ではなく、従来通りの回線交換方式を用いて通話するものです。

VoLTEを実現するためにはLTEのカバーエリアを3Gと同じレベルにまで広げる必要がありますが、ソフトバンクモバイルの場合、建物の中などでも利用できるプラチナバンド版LTEは今春サービス開始予定。当面はエリアが虫食いになる可能性も浮上しているため、VoLTE開始にこぎつけるには今しばらく時間がかかる公算です。


・ソフトバンクユーザー同士の1~21時通話無料が無くなり、通話料も高い
ソフトバンクモバイルといえば、大手3社で初めて1~21時にユーザー同士の通話が無料になる「ホワイトプラン」を導入したキャリアですが、今回の新料金プランでは例え相手がソフトバンクユーザーであっても、1回3分または5分しか定額で通話できません。

さらにホワイトプランの場合、他社や無料時間帯以外のソフトバンクユーザーへの通話は30秒20円であるのに対し、新プランでは無料通話時間超過後の通話料が30秒30円と高額に。

ソフトバンク傘下のウィルコムが展開している「キャリア間24時間通話無料」や「だれとでも定額」の「10分以内の国内通話が月500回無料、超過後の通話料は30秒20円」と比較しても条件が良いとは言えないのが現状です。

・パケット通信料金が青天井、追加課金がシームレスに
そして最も恐ろしいのが、新サービスのパケット料金プラン。規定の通信量を超過した場合、Sパックは100MBごとに250円、Mパックは100MBごとに125円、Lパックは100MBごとに100円の通信料が発生するため、事実上従量課金が復活した形になります。

各パックで大容量通信した場合のパケット料金をグラフにするとこんな感じ。


なお、ソフトバンクモバイル広報室によると、規定の通信量を超過しても通信はカットされず、通信したデータ量に応じて追加料金が自動課金される仕組み。

従来提供されてきたデータ通信超過時に通信速度を128kbpsに減速する代わりに追加料金が発生しないサービスを利用する場合、月額300円のオプションプランに申し込む必要があるため、セーフティーネットが有料化されたことになります。

・使わせてくれそうにないLパックの「15GB」
このように通話・データ通信両方に思わぬ落とし穴がある新サービスですが、ヘビーユーザーが歓迎しそうなプランが「Lパック」。なんとMパックのわずか3000円増しで、一般的なLTEサービス(7GB)の2倍以上にあたる15GBも通信できるという、長時間の電車通勤を強いられ、動画を観ることだけが心の癒やし……といったユーザーなどにとって、夢のような内容です。

しかし各所での報告を見てみると、ソフトバンクは「前日までの直近3日間」に1GB通信すると、当日6時から翌6時までおおよそLTEとは思えないほどの速度にまで減速される通信速度制限を厳格に適用中。


制限に引っかからないようにするには、ざっくり考えて1日の通信量を333MB程度にすればいいわけですが、それでは1ヶ月に10GB程度しか通信できず、新サービスの開始に合わせて制限が緩和されない限り、Lパックの「15GB」は有名無実化している感が否めません。

◆「青天井は抑止力」、ソフトバンクが狙いを語る
【インタビュー】ソフトバンク新料金プラン その狙い、メリットを聞く……VoLTE時代を見据えて?(1/2) | RBB TODAY

新サービスの発表を受け、株式会社イードが運営するITニュースサイト「RBB TODAY」がソフトバンクモバイル マーケティング統括 カスタマー戦略本部 料金サービス統括部 統括部長 須賀裕氏に対して行ったインタビューによると、課金は帯域を圧迫するようなごく少数のユーザーへの抑止力であるそうです。

パケット料金の設定は「多くのユーザーに公平に安定したサービスを利用してほしい」という考えを受けたもので、須賀氏は標準的なプランとして考えているMパックの制限(7GB)を超えるのは全体の10%以下、Lパックの制限(15GB)を超える人は1%にも満たない、かなり限られた数と想定しているとのこと。

また、気になる通話料金の超過分についても、携帯電話会社の業界団体「TCA(電気通信事業者協議会)」が出しているデータにおける平均的な通話時間が2分半、1日あたりの通話回数は1.3回であるため、Sパック(3分以内・月50回)でもこれをクリアするとしています。

◆思わぬ事故で青天井課金も、セーフティネットは必須
スマートフォンの普及により通信量が増大する中、ネットワークの公平利用は携帯各社共通の課題であることを考えると、ソフトバンクの「抑止力」という考え方は理解できなくもありませんが、その一方で将来的に問題になりそうなのが、予期せぬ形で課金地獄に陥ってしまうケース。

新サービスではテザリングが標準で提供されていますが、筆者は先日「外出先でテザリングを利用した後、自宅のWi-Fiスポットに切り替えていたつもりが、家でもテザリングを使っていた」という出来事を経験。思わぬ形で通信量が増大し、気がついた時には追加課金が始まっていた……という事態も十分考えられるわけです。


ほかにも「各所に大量に設置されたWi-Fiスポット同士が干渉してつながりにくく、わずらわしいため、Wi-Fiをオフにしたのを忘れて家に帰り、LTE接続のままスマホでYouTubeやニコニコ動画をガンガン再生してしまった」などのケースも決して有り得ないとは言えません。

そのような惨劇を回避するためには、今までのように追加課金が発生せずに済むセーフティネットをキャリア側が標準で提供する必要があると思われますが、ソフトバンクはあくまでこの内容で進めるつもりなのでしょうか。

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