青色LEDでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏はなぜアメリカ人になったのか?

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Photo by Lux magazine

昨日青色LEDを発明した日本人3人がノーベル物理学賞を受賞したと報じられましたが、後のそのうちの1人、中村修二氏がアメリカ人であると訂正されました。もともと日本人だった中村氏がアメリカ人になったのはなぜだったのでしょうか?

昨日、日本中を揺るがしたノーベル物理学賞。中村修二氏、天野浩氏、赤崎勇氏の3人が「明るく省エネルギーな白色光を可能にした効率的な青色発光ダイオード(LED)の発明」によって受賞。

それまで作成が困難とされてきた青色LEDが発明されることによって光の三原色の全てをLEDで実現。これにより白熱電球よりも遥かに効率がよく、寿命の長いLED照明が実用化され、まさに世界の風景を大きく変えるさせる大発明となりました。

報道各社は「3人の日本人研究者」の受賞としてこれを大々的に報じ、号外も出されています。しかしBBCなどは「a trio of scientists in Japan and the US」と表現。これは受賞者の1人、中村修二氏がアメリカ合衆国の市民権を取得しているためです。

BBC News – Invention of blue LEDs wins physics Nobel

中村修二氏は現在カリフォルニア大サンタバーバラ校教授として活躍を続けていますが、彼が日本を去ったのみならず、アメリカ国籍を取得するに至るには青色LED発明に関する所属会社との大きな争いがありました。

通称「青色LED訴訟」と呼ばれるこの裁判は中村修二氏が青色LED発明当時に在籍していた日亜化学工業に対し、発明品の特許権の帰属と発明対価として200億円を求めて起こしていたもの。

青色LEDの発明と実用化によって日亜化学工業は多くの特許を取得し、莫大な利益を上げたものの、社員だった中村修二氏がこの発明に対して受け取ったのはわずか2万円の報奨金のみ。

これを不満とした中村修二氏が起こしたのが青色LED訴訟ですが、東京地裁の判決が200億円の支払いを命じたものの、控訴審で東京高裁が示した和解案は8億4391万円と大きく後退。制度上、上告しての再逆転が非常に困難であるとの判断から中村修二氏サイドは和解を受け入れました。

ノーベル賞学者は10年前、「敗軍の将」として何を語っていたか:日経ビジネスオンライン

ノーベル賞 中村さんの発明の対価訴訟 象徴的存在に – 毎日新聞

中村修二氏は訴訟開始前の2000年には「日本の企業にこれ以上しがみついていても,何もいいことはない。プロ野球選手に習ってFA宣言した」としてカリフォルニア大学の教授として勤め始めていましたが、和解案に対して「日本の司法制度は腐っている」と発言しており、後に米市民権を取得。日本は二重国籍を認めていないため、自動的にアメリカ人となりました。

僕が会社をやめたわけ–青色LEDの発明者 中村修二氏に聞く – 技術経営 – 日経テクノロジーオンライン

中村修二氏は今回のノーベル物理学賞に対する記者会見でも「日本の研究者はサラリーマンで、良い研究をしてもボーナスが増えるだけ」「日本には自由がない」と揶揄しています。

ノーベル賞 中村氏「日本に自由ない」、研究環境の改善を – 毎日新聞

時事ドットコム:ノーベル賞、勝因は「怒り」=日本企業に苦言も-中村さん

結果的に日本の企業と司法制度がノーベル賞を受賞できるクラスの研究者を自らの制度と方針で海外流出させてしまったと言えるでしょう。先日BUZZAP!でも職務上の発明を企業に帰属させる方針についてお伝えしましたが、政府や経団連らがこうした方向性を確定させれば世界的な発明や発見を行う優秀な研究者の海外流出が今後さらに進む可能性があります。

経団連:職務発明の法人帰属化に向けた声明 (2014-02-18)

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