生命線となる技術も流出、Appleを訴えた日本の部品メーカーはどれだけ悲惨な状況に立たされているのか



新型iPhoneが発売される度に「日本製の部品がどれだけを占めているか」が話題となる中、部品を提供しているメーカーがAppleを訴えるという事態が発生しました。

どうやら部品メーカーは徹底的に買い叩かれるどころか、Appleにより技術を流出させられるというリスクに苦しんでいるようです。詳細は以下から。

日本の中小企業が訴えたアップルの“横暴”の内幕|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン

週刊ダイヤモンドが報じたところによると、電源アダプタのコネクタ部分などに使われる「ポゴピン」というピンを製造する島野製作所が今年8月、Appleを独占禁止法違反と特許権侵害で訴えたそうです。


これは「横暴」とも呼べるAppleの圧力によるもので、島野製作所が被った損害をざっくりとまとめると以下のような内容に。

・Appleから依頼を受けて新製品用のピン開発や量産体制を構築するも、合意を無視して半年で発注激減。おまけに島野製作所の特許権を侵害する形で別のメーカーに代替ピンを製造させる
・取引再開を求めるとAppleは値下げと、手元にある在庫分を値引きする形となるリベート(約1億6000万円)を要求

さらに同様のケースとして、ある部品メーカーの幹部の手元に、Appleが別の企業に送ろうとした資料が誤って届いたところ、自社技術に関するデリケートな情報が書かれていたことが挙げられています。

まさに優越的立場を濫用したやり方としか言いようがありませんが、2013年発売の書籍「アップル帝国の正体(後藤 直義、森川 潤著)」を引用したライフハッカーの記事では、Appleの部品メーカーに対する値下げ圧力の強さが浮き彫りになっています。

「アップルが定期的に求めてくるコスト削減のターゲット(目標)は、絶対に下がらない」。ある取引先メーカーの首脳はそのように断言する。アップルの購買担当者と価格交渉をする際には、アップルの言い値に難色を示したりすると、「原価はこれくらいだから、できるはずだ」と一刀両断されたという。
(62ページより)


また、今回のように日本企業の技術がAppleによって流出するケースも紹介。かつてiPodで採用されていた鏡面仕上げの裏蓋は、新潟県燕市にある中小企業の職人が手作業で磨きあげていましたが、以下のような経緯を経て人件費が安く、大量に処理できる別の国に技術が移植されてしまいました。


しかしこの日は、小型のビデオカメラを片手に、朝から晩まで、じっと彼らの動作を撮影している男が立っていた。
「ちょっと作業風景を撮影させてほしい」
アップルに金属部品を収めている地場の金属加工メーカーから派遣されてきたというこの男は、職人たちに近寄ると、彼らの手元にレンズのピントを合わせていった。(中略)親方の小林は、このビデオ撮影が何を意味するのか、直感的に理解していた。
(38ページより)


「iPodを磨く作業のビデオ撮影は3日間続きました。でも注文をくれる地場の親会社から頼まれたら、我々は断れませんからね」
ビデオ撮影を受け入れてからほどなくして、小林はこの仕事から手を引いた。そしてピーク時には地元の研磨業者約20社が1日で1万5000~2万台も磨き上げていたiPodの仕事は、地元から消えてしまったのだ。
(39ページより)


歩留まり(良品率)が悪く、大手メーカーが原価割れの危機に苦しんだiPhone 5のインセル液晶のように、製造にあたってのハードルが高いものが多いApple製品の部品。

しかしAppleはメーカーがさまざまなコストを投じてようやく実現にこぎつけた部品を買い叩くだけでなく、製造技術そのものを移転させ、安く作れるようになれば元のメーカーはお払い箱……とでも言わんばかりのやり方を採用しているわけです。

スマホやタブレットなどの最終製品で海外メーカーに太刀打ちできず、部品メーカーとして血路を見いだす日本メーカーが多い昨今ですが、完全に生殺与奪を握られてしまっている現状で、はたして浮上することはできるのでしょうか。

アップル帝国の正体
アップル帝国の正体
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後藤 直義 森川 潤
文藝春秋

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