選挙での「白票」を「社会を変える力がある」とミスリードする謎の集団「日本未来ネットワーク」のサイトが突如出現

公示を間近に迎えた衆議院議員総選挙。ここで突如「白票」に「今の社会を変える力があります」と主張する妙に洗練されたサイトが登場し、憶測を呼んでいます。

◆白票を投じるようミスリードする謎の集団「日本未来ネットワーク」
このサイトを作成したのは「日本未来ネットワーク」を名乗る集団。「黙っていないでNOと言おう。」のキャッチコピーの下、投票したい候補者がいなかったら「白票」を投じようと呼びかけています。

黙ってないで、NO!と言おう。 日本未来ネットワーク魚拓

まず前提として、白票には全く意味がありません。候補者以外の名前を書いたり判読できない票と同様に無効票として扱われるため、棄権と同様、候補者の当落には一切関係ありません。

投票しても無効になる白票の行方|政治・選挙プラットフォーム【政治山】

白票とは (ハクヒョウとは) [単語記事] – ニコニコ大百科

しかしこのサイト上では

入れたい候補がいないとき、誰に入れてわからないときは棄権せず、”誰もいないよ!”と言いましょう!その思いを白票に込めて投票しましょう!
その声は、きっと政治家達に、権力者達に伝わります。そして彼らはその声に配慮せざるを得なくなります。

と主張。あまりにも無茶過ぎる発想に唖然とする他ありません。システム上無効票でしかない白票にどのような効果が期待できるというのか納得できる説明はなく、ここで述べられているのは希望的観測以上のものではあり得ません。

例えば今年3月に行われた大阪市長選挙では投票総数の1割を超え、2位候補の得票数の2倍近い45098票もの白票が投じられました。しかし再当選した橋下徹氏は「白票が多かったのは、メディアの責任だ。皆さんも反省してほしい」と述べて自らの責任とは考えておらず、政策にも大きな変更はありません。

【大阪市長選】「白票が多かったのはメディアの責任」 橋下市長が就任会見で – MSN産経west

大阪市長選 白票4万5098票 橋下氏再選も最低投票率 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

このサイトには女性政治家を題材にマンガが載せられていますが、あたかも白票がプレッシャーを与えるかのようにミスリードする内容。

◆「信頼できる政党か不安」とさりげなく野党批判、「与党 or 白票」を迫る形に
特定候補者への不信任を示すのであれば対立候補に投票するのが一般的な投票行動と言えますが、このサイトでは「与党に反対する野党に至っては、そもそも信頼できる政党たりえるのかが不安な状況で、投票するのがはばかられるような現状」とひとくくりに批判し、あくまで白票を推奨します。

投票率が下がったり無効票が増えれば組織票を持つ大政党が有利になることはこれまでも繰り返し指摘されてきました。ここで勧められているような白票での投票は「黙っていないでNOと言おう」どころか、結果的に強烈な規模の与党が生まれることに「YES」と言っているのと何一つ変わりません。

選挙で支持したい人がいないから抗議の意を込めて白票を投票…とは言うものの

しかもサイトの文章の締めには

アメリカのように2大政党が競り合うより、安定した与党が変革を重ねるほうが国民性に合っていると思われる日本で、投票したい候補がいないという気持を白票で表現するという、日本独自の民主主義文化を創り上げていけたらと思っています。

などと、2大政党制ではなく「安定した与党が変革を重ねることが日本の国民性に合っている」という無根拠な論を展開。さらに「投票したい候補がいないという気持を白票で表現」することを「日本独自の民主主義文化」にしていきたいと結んでいます。

◆お金を払ってページを宣伝させていることも明らかに
政治にNOを言うはずが、結局は与党が安定的に主導して変革を行うことを是とし、民主主義の自殺と呼んでも過言ではない白票を日本独自の民主主義文化にするなど、全く以て理解不能な「日本未来ネットワーク」の主張。

いったい彼らは何者なのか?ネット上を検索してみても情報は一切見当たりません。不思議なほど小奇麗で洗練された当該サイトとツイッターアカウントのみが存在しており、活動実績は一切不明です。

日本未来ネットワークのアカウント。11月25日に以下のつぶやきを1度行ったのみで、その前後の履歴は確認できません。フォロー先も公式アカウントを中心とした有名人だけです。

しかも非常に興味深いのが、以下のように「SNSで特定の商品などを紹介したユーザーがお小遣いをもらえるサービスを用いて、同サイトの宣伝・拡散が行われている」という点。つまり日本未来ネットワークには、そのようなサービスを運営する業者と交渉し、広告を出稿するだけの組織力と資金があるわけです。

日本未来ネットワークの意見広告が拡散される様子 – Togetterまとめ

「棄権するより白票を」という主張は珍しいものではありませんが、それが「今の社会を変える力があります」と強引にミスリードした上に、政治にNOと言うはずが「安定した与党が変革を重ねる」ことを是とするなど非常にちぐはぐな同サイト。これから総選挙までの間にどのような情報が発信されていくことになるのか、非常に注目されます。

◆かなり早い段階でサイト開設準備、時系列をまとめてみた
なお、記事公開後にBUZZAP編集部でドメイン登録情報を検索したところ、「日本未来ネットワーク」を名乗る集団が公開したサイトのドメイン「mirai-senkyo.com」が取得されたのは2014年11月12日の23時43分ごろ。

先日話題となった、大学生2名が小学4年生になりすまして作成し、炎上した政治サイト「どうして解散するんですか?」のドメインが取得された時期(11月18日)よりも前のことです。

なお、今回の解散総選挙を主要メディアが報じ始めたタイミングと合わせて時系列をまとめるとこんな感じになります。

・11月9日
読売新聞が「増税先送りなら解散、年内にも総選挙 首相検討」と報道

・11月10~11日
主要各紙が追従

・11月12日
日本未来ネットワークを名乗る団体が「mirai-senkyo.com」を取得

・11月17日
内閣府が2期連続マイナスとなるGDP速報値発表

・11月18日
安倍首相が解散総選挙の実施を表明

・11月18日
NPO法人代表、青木大和氏が「どうして解散するんですか?」のドメイン「why-kaisan.com」取得

・11月22日
「#どうして解散するんですか?」公開→炎上を経て青木大和氏、Tehu氏が謝罪

・11月25日
「黙っていないでNOと言おう。」公開

つまり解散が確定していないどころか、解散やむなしの空気を決定づけた7~9月期の国内総生産(GDP)速報値発表よりも前から準備が進められていたことになる今回のサイト。いったい誰が何の目的で立ち上げたのでしょうか。非常に気になります。

◆11月28日12:58追記
日本未来ネットワークとやらについて

有志が洗い出しを開始しました。BUZZAP編集部でもお伝えしたように、どうやらかなり入念に身元の隠ぺいが図られているものの、一方でページ内の情報にヒントになるかもしれないフレーズが確認できたとされています。

◆11月29日12:25追記

サイトの結びの部分が修正されています。修正部分は以下のとおり。

アメリカのように2大政党が競り合うより、安定した与党が変革を重ねるほうが国民性に合っていると思われる日本で、投票したい候補がいないという気持を白票で表現するという、日本独自の民主主義文化を創り上げていけたらと思っています。
11月27日15:31時点での魚拓

投票を棄権せずに、有権者が全ての候補者に対して支持する気になれないという気持ちを、白票を投じて候補者たちに伝えることで、政治にプレッシャーをかけて政治家の質を上げてゆく。そういった有権者の意思表示の仕方を市民感情の表現手段の一つに加えることは大きな意味を持ちます。市民が政治家を切磋琢磨し鍛え上げるという、これまでの”政治のことは政治家にお任せ”的な他人任せでなく、広く市民が参加し、市民が政治を、政治家を育て上げてゆくという、一歩成熟した民主主義国家へのステップアップに繋がってゆく活動であると考えております。
11月29日12:25時点での魚拓

「安定した与党が変革を重ねるほうが国民性に合っていると思われる」とした部分は本記事へのツイッター上のコメントでも「与党に何らかの関係がある組織がこのサイトを作ったのではないか」などと大いに疑念の対象となっていましたが、その文言が削除されました。

しかし前述したように、なんら意味を持たない無効票である白票を、あたかも棄権と違って「政治にプレッシャーをかけて政治家の質を上げてゆく」ために有効な手段であるとするミスリードについてはさらに弁を重ねているものの、何ら根拠はないままで詭弁の粋を出ていないのが現状。

どうやら日本未来ネットワークはただ単にサイトを立ち上げただけでなく、ウェブ上での反響をチェックしているようですが、これでは「無効票を増やしたいだけなのではないか」「無効票が増えて喜ぶ政党の関係者の仕業ではないか」などの疑念を晴らすことは到底できなそうです。

◆12月3日18:25追記

日本未来ネットワークのFacebookページが確認できましたので追記します。ページは11月25日に開設されており、26日にウェブサイトへのリンクを張ったポストで論戦となっており、11月30日までのコメントが確認できます。現在の「いいね!」は44件ですが、必ずしも賛意を示すものではなさそうです。

日本未来ネットワーク

このFacebookページでは日本未来ネットワークのいわゆる「中の人」が投稿に対してコメントをつけているのですが、その中で同団体の代表者や関係者に関する質問に対しては非公開とする旨を告げた上に以下のように回答しています。

ごく一般市民の活動です。派手な露出は社会生活に影響がでると困るのでシークレットにしています。普通の一市民レベルでもこうやって世の中に関与するような活動ができるのがネット社会の良い特質であり、一市民でも国を憂いて実際の活動を起こす気になるのは戦後70年間の民主主義の成果かとも思います。
漫画はネットで「漫画制作 商品説明 パンフレット」とかで検索されればお近くの業者さんがみつかります。

また、白票は無意味であるという至極まっとうな意見に対してはサイト上で行っていたのと同様に、以下のように回答。

無効票はこれまでのデーターから大体何%ぐらいのものかは出ているはずです。ですから投票数の1/3とか1/2とかが無効票の場合は、書き損じやふざけの従来のタイプの無効票でないことは明らかです。また、そこまでいけばこのHPの存在も社会的に認知されているでしょうから、明らかにこの活動に連動した有権者の行動であると社会は認識します。

確かに結果は変わらないかもしれませんが、得票数の半分以上もの白票がありますと、当選者も落選者も何故なのかを考えると思います。
黙っていて投票で意思表示しないと候補者たちは自分たちの都合のいいように理解してしまいます。それとよりましでまあこの候補ならという気になればそれでいいのですが、ボーダーをクリアできていない候補ばっかりだと感じる時は棄権せづに白票をとおじれば、候補者たちには、投票に行くのが面倒で投票率が低いのではなく彼らは支持できる候補者がいないからなんだ、ということを認識させることができます。そのことが今後の政治を変えて行くチカラになるのだと思っています。(原文ママ)

単に反自公票を無効とするだけではないかという懸念に対しては

反自公票が白票に向かうのではありません。白票を投じるのは入れるべき候補者がいないと判断した時です。通常は棄権して投票率が下がっていた層の声を白票として拾って候補者達に認識させるのが目的です。つまり、候補者全員が立っている舞台に向かって、全員ダメだとブーイングを浴びせるという感じです。

と、あくまでも白票に寄るブーイングで政治家が反省して認識を変えるという前提を崩そうとはしません。

立候補して白票となる票を集めては、という意見についてはなぜか

ただ、現状の我が国の政治的な素地ではそんなハイレベルな行動まではちょっと距離があると感じています。まずなんとか硬直し馴れ合いになっている日本の政治環境に変化をもたらしたい、そのためには思っていても棄権してしまって声にならなかった部分を声として表現することから変革が始まるとおもいます。ステレオタイプの理想論にこだわって結局何もしないで終わるより、身近な手がかりをつかんで行動に移すことが大きな理想に近づくきっかけになるということは事実です。棄権するぐらいなら、思いを白票に込める方が実りへの道を進むことになります。

と及び腰。「ステレオタイプの理想論にこだわって結局何もしないで終わるより、身近な手がかりをつかんで行動に移すことが大きな理想に近づくきっかけになる」などと、なぜか何もしないで終わることになっています。立候補まではしなくとも、通常考えられるような「対立候補への投票」をすればいいものを、白票にあくまでこだわっています。

これまで本件については背後での与党や宗教団体の関与などまでが噂されていましたが、サイトの作成に関する情報の匿名性などは高く、いわゆる「ネットの集合知」ですら現在までに背後関係の特定には至っていません。しかし、コメントの内容はサイトと同様に事実を踏まえず、絵空事レベルの希望的観測を繰り返すなど、しっかりしたバックが存在すると考えるには少々稚拙に過ぎるかもしれません。

白票を投じるのであれば、むしろ現在ネット上で話題となっている「戦略的投票」を試してみる方がより積極的な意味を持つことになりそうです。

典型的な戦略的投票の一例はこうだ。例えば小選挙区で、AとBの候補者がいて自分はどちらも支持していない。棄権をしたくなるが、こうした場合でも、どちらがより支持できないか、どちらがより嫌いかを考える。最も嫌なのがAなら、Aを倒すためにBに入れる。

ほかにも例えば、A、B、Cの候補者がいて、自分はAの候補者を支持しているけれどもとても当選しそうにないという場合。BとCを比較してよりAに近い考え方を持つBに投票する−−これも戦略的投票だ。

衆院選 投票先に悩むアナタへ…「戦略的投票」のススメ – 毎日新聞

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