「保育園落ちた日本死ね!!!」からの塩崎厚労相への署名27000筆提出に見る「政治利用」の大切さ

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Photo by Kenny Lam

わずか3週間あまりの間に、ひとつの匿名ブログの叫びが国会をも揺り動かしました。この間に何が起こったのでしょうか?

◆「保育園落ちた日本死ね!!!」への共感と拡散
はてなダイアリーに匿名で怒りに満ちた保育園落ちた日本死ね!!!と題されたブログがアップされたのは2月15日のことでした。内容は広く拡散されているのでここでは改めて説明はしませんが、日本の育児に関する制度的な不備が激しい感情と共に的確に批判されているため、ネットで大きな反響を呼びました。

いち早くこのブログに反応したのは認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表理事。「「保育園落ちた日本死ね」と叫んだ人に伝えたい、保育園が増えない理由」と題したブログをアップ。ハフィントンポストやYahoo!ニュースに取り上げられました。そこでは保育園が増えない理由として保育士の待遇の低さなどの3つの理由を挙げた上で

怒りましょう。僕たちは怒って良い。予算配分は不当だし、このままだと少子化も進行し社会保障も危機になり、それは将来、可愛い我が子たちの生活を直撃するでしょう。

そして怒りを原動力に、行動しましょう。
まず、政府に対しては、保育士給与引き上げのための、予算増額の世論を高めることです。

として、怒ること、政府に対して行動を起こすことを勧めました。同様に反応したのは東京都議会のおときた駿議員。「「保育園落ちた日本死ね!!!」って言われたけど、むしろ東京都は保育園をつくるべきではない理由」としたブログの中でバウチャー制への移行を主張すると同時に保育士の待遇の改善を訴えており、「全体的に子育て世帯・子どもたちに対する投資額が、わが国は先進国にあるまじき低さであることが諸悪の根源」と喝破します。

その後もネットでは話題が続き、GLAYのボーカルのTERUさんが実体験を交えて賛意を示し「政府には本気で考えて欲しい問題です」と訴えたことも大きな話題となりました。

◆国会でのヤジ、署名と抗議活動
この流れがターニングポイントを迎えたのが2月29日。民主党の山尾志桜里議員が衆院予算委員会で「保育園落ちた日本死ね!!!」を紹介したことに始まります。山尾議員がブログを読み上げる最中には平沢勝栄議員が「誰が書いたんだ」とヤジを飛ばした他、「中身のある議論をしろ」「ちゃんと本人を出せ」「うぜえ」などとヤジが続きました。

安倍首相も「私は承知をしておりませんが、かつまた、匿名ということですので、これ、実際にどうなのかということは、匿名である以上ですね、実際にそれは本当であるかどうかを、私は確かめようがないのでございます」と回答。

この首相と与党の対応に母親らの怒りが爆発。ツイッターの「 #保育園落ちたの私だ」ハッシュタグには続々と実体験や批判が寄せられるようになりました。そして3月3日にはオンライン署名サイトchange.orgで「#保育園落ちたの私と私の仲間だ」という署名が安倍首相宛に登場。

匿名ブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」について、安倍晋三首相は「匿名である以上、実際本当に起こっているか、確認しようがない」と述べ、また、野党議員がブログの内容を読み上げたところ、議員席から「中身のある議論をしろ」「誰が書いたんだよ」などのヤジが飛んだとのこと。驚愕しています。

これが豊かな国、美しい国、一億総活躍、女性も輝く社会の先進国日本において、一日3億円もかけ運営される国会で、国民の代表である議員の方々が表明される「歯止めが止まらない少子化」への認識。そう思うと、暗澹たる気持ちになります。が、きっと首相はじめ与党の皆さまは現状をご存知なく、調べる気力とお時間がないだけなのだと拝察致します。

「実際何が起こっているのか」「中身」を国会議員の皆さまにお伝えするべく、署名活動を行いたいと思います。

誰もが働きたいと思った時にいつでも安心して預けることができてこそ、「産みやすく」「働きやすい」社会になります。

#保育園落ちたの私と私の仲間だより引用)

また、3月4日と5日には「保育園落ちたの私だ」などのプラカードを掲げて無言で立つ抗議行動が起こされており、こちらも大手メディアが取り上げ、全国的な話題になっています。

こうした認識の広がりによって「#保育園落ちたの私と私の仲間だ」はほんの数日の間に2万7000筆以上を集め、本日9日に山尾議員に託され、ブログ賛同者と山尾議員によって塩崎厚労相に直接手渡されました。この際山尾議員は「保育士さんの給与を引き上げる法案を準備して今国会に提出する」との意向を明言しています。

◆「#保育園落ちたけど政治利用されるのはごめんだ」という本末転倒
ですが、この流れは一枚岩ではもちろんありません。保育問題というシングルイシューで集まっている以上、支持政党が違ったり、政治に対する関心の高さが違うのも当然のこと。そうした中で民主党議員が質疑でこの問題を取り上げたこと、共産党の吉良よし子議員が自らも同じ体験をしたと公表したことなどにより、反発が起こりました。

一部の人々が自分たちの保育園に落ちたという叫びが野党による倒閣運動に「政治利用されている」と考え始めたのです。それを表すのがこのツイッターのハッシュタグ「#保育園落ちたけど政治利用されるのはごめんだ」でした。

ですが、私たちは本当に誰かによって「政治利用される」だけの受け身の存在なのでしょうか?ブログを書いた人、それに反応して声を上げた人、ハッシュタグを作った人、署名した人、国会前で抗議をした人、彼ら彼女らが保育園に落ちたことは政治に利用されたのでしょうか?

それは逆です。彼ら彼女らが声を上げ、行動したことが政治を動かしたのです。つまり、彼ら彼女らが「政治を利用」して保育問題というイシューの解決に向けて駒をひとつ進めたということなのです。

国民主権である日本において、政治家は主権者たる国民の意思を反映し、代わりに議論する「代議士」に過ぎません。政治家先生をお上として崇め奉るような風習が根強いため勘違いしがちですが、国民が声を上げ、政治家がその声を聞いて国会という政治の場で論戦を行う、それはこれ以上無いほどに正常な民主主義のあり方です。

だから民主党であれ共産党であれ、利用すればいいのです。今回、自民党は安倍首相の反応と幾人かの議員の聞くに堪えないヤジによって批判の対象となりましたが、自民党や公明党内にこの問題を真剣に考える議員がいれば、そちらも利用すればよいのです。超党派の議員連盟を作るように働きかけてもいい。

目的が保育所の待機児童が無くなるなり、子供を持つ母親が安心して子育てをできる環境を作るなりということなのですから、そのために利用できるのならどの政治家であれ、どの党であれ利用すればよいのです。

野党からの追及だけでなく、ネットやマスメディアでの大きな反響、署名などによって与党側の反応が大きく変わってきたことが報じられています。そして山尾議員は保育士の給与を引き上げる法案を今国会に提出すると明言しました。既に「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログ公開から3週間あまりでここまで到達しているのです。これはまさに彼ら彼女らが「政治を利用」し、生活を向上させようとした結果と言っても過言ではありません。

今回は保育園の問題でしたが、介護問題、ブラック企業問題、社会保障問題など、私たちの生活には多くのイシューがあります。それぞれにおいて怒り、声を上げ、行動することで政治を動かしていくという「政治利用」を、国民はこれからもどんどんやっていけばいいのではないでしょうか?

(Photo by Kenny Lam

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