宗教と科学の狭間で、私たちの脳には何が起こっているのか?



古代ギリシャ時代から続いてきた宗教的な信仰心と科学的思考の対立。その時脳の中では何が起こっているのでしょうか?詳細は以下から。

神や宇宙存在を信じる心と科学的な思考は、現代では概ね相矛盾するものとして考えられています。もちろんニュートンのようにある時代の科学者たちが神の作った世界の謎を解き明かすことが信仰の証であると考えたりもするなど、その関係は一言では言い表せません。

しかし長い歴史の中で科学が発展し、神の居所が科学の中には無くなって行くにつれ、宗教は非科学的なもの、迷信であるといった言説が広まっていったのは間違いありません。それでもなお人類の大半が今でも何らかの宗教を信仰し、場合によっては血で血を洗う争いにまで発展しているのも事実。

では、そんな宗教的な信仰心と科学的な思考の狭間にあって人間の脳には何が起こっているのでしょうか?ケース・ウェスタン・リザーブ大学とバブソン大学の研究チームが成人したアメリカ人を被験者として8つのアンケート調査と思考実験を行いました。

被験者は実験によって159人から527人まで変動しており、神や宇宙存在などのスピリチュアルな対象への信仰心を持つ人と宗教的な信仰心を持たない人が共に含まれています。

研究チームによると、宗教的及びスピリチュアルな信仰心を持つ人は共感的思考に携わるために、分析的思考に用いられる脳のネットワークが抑制されがちであることを発見しました。同様に、信仰心を持たない人は分析的思考に携わるために共感的思考が抑制されがちでした。

研究チームのリーダー、Tony Jack博士はこうした傾向について以下のように述べています。

信念に関する質問は分析的な観点から見ると不合理に見えるかもしれない。しかし、私たちが脳に関して理解していることからすれば、超自然的な存在の中で信念から信仰へと跳躍することは、批判的、分析的な思考を押しのけることに等しく、そのことは我々がより偉大な社会的、感情的な洞察に至ることを助けてくれるのだ。


研究によると、分析的思考と共感的思考のふたつのネットワークは常にお互いを抑制し合おうとしているため、その帳尻を合わせることは非常に難しいとのこと。しかし、研究チームによれば、どちらか片方の思考のみで世界の偉大な問いに答えることはできません。私たちの本性は私たちの経験に双方の思考パターンで携わらせ、探らせるのです。

Jack博士はさらに以下のように述べます。

宗教は世界の物理的な側面について何も教えてはくれない。それは科学の仕事だ。科学は私たちに倫理上の論拠の情報を与えてくれるが、何が倫理的か、そして人生の意味と目的をどのように組み立てればいいのかを決め手はくれない。


もちろん現代のノーベル賞受賞者の多くが信仰を持っていることからも分かるように、宗教と科学は単に対立するものではありません。分析的思考と共感的思考のどちらかに振り切れてしまうことなく、意識的に両者を用いていくことができればよいのでしょうが、それは簡単なことでもなさそうです。

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