ヘイトスピーチ対策法、いったいどんな内容?

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Photo by Guido van Nispen

与党の提出したヘイトスピーチ対策法案が参院法務委員会で全会一致で可決されました。どういった内容となっているのでしょうか?詳細は以下から。

特定の人種や民族に属するマイノリティに対して差別を扇動する表現、ヘイトスピーチの解消を目指す与党提出のヘイトスピーチ対策法案が本日5月12日の参議院法務委員会において全会一致で可決されました。明日参院本会議で可決された後に衆議院に送られ、今国会中に成立する見通しです。

◆法案のヘイトスピーチの定義
同法案ではヘイトスピーチを「生命や身体に危害を加える旨を告知し、著しく侮蔑するなど、外国出身者であることを理由に、地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」と定義しています。

◆相手が「外国出身者」でなくともヘイトスピーチは成立
ただし、この定義ではアイヌや沖縄、被差別部落出身者のような「外国出身者」ではないマイノリティに対するヘイトスピーチへの対策にならないのではないかとの危惧もありましたが、これは京都の朝鮮学校襲撃事件などを受けてこうした記述にされたもので、法案発議者の公明党の矢倉克夫議員は「それ以外のものが許されるという意味ではない」と断言しています。

◆「著しく侮蔑」もヘイトスピーチに該当
なお、この法案では直接的に加害を告知したり排除を扇動していなかったとしても「著しく侮蔑」していればヘイトスピーチとされるところも画期的です。相手の民族を蔑称で呼ぶなどといった行為がここに該当します。

◆米軍基地反対運動はヘイトスピーチ?
なお、米軍基地反対運動はヘイトスピーチに当たるのかとの質問に、もうひとりの法案発議者である自民党の西田昌司議員は「立法事実として全く想定していない。政治的な活動・批判であり本法案とは関係ない。憲法で保障される表現の自由の範囲内」と断言。

◆政府批判はヘイトスピーチ?
また、政府への批判がヘイトスピーチに当たるかどうかを確認したところ、西田議員はまったく当たらないと断言。矢倉議員も対抗言論を許さない形で社会を分断する様態のものを駄目だと言っていると明言しています。

◆附則と付帯決議
もちろんこれだけで鉄壁のヘイトスピーチ対策となるわけではありませんが、自公両党が「法律の施行後も実態を勘案して必要に応じ検討を加える」との附則を盛り込む方針を示し、民進党もこれに賛成。全会一致での可決となりました。

また、3項目の付帯決議が民進党の有田芳生議員から提出され、こちらも全会一致で可決されています。1番目は「外国出身者」でない相手に対する差別的言動が許されると考えるのは誤解であり、同法案及び憲法、人種差別撤廃条約の精神に鑑みて対処されるべきものだというもの。

2番目はヘイトスピーチの頻度が地方自治体によってばらつきがあり、地域社会に深刻な亀裂を生じさせる場合は、解消に向けて自治体が条例などで対策すべきとのこと。3番目は街頭演説やデモのようなリアルでのヘイトスピーチだけでなく、現在根深くインターネット上にはびこっているヘイトスピーチへの対処を求めています。

◆今後の取り組み
この法案はあくまで禁止規定や罰則の定められていない理念法であり、ヘイトスピーチのみによって逮捕されることはありません。よって附則にもあるように、実態を勘案して必要に応じた検討を加えていくことが今後の大きな課題となります。

もちろんこの法案の成立でヘイトスピーチがなくなれば言うことなしですが、そうでない場合も十分に考え、法改正で抜け道を丹念に潰し、地方自治体の条例で規制するなど、継続的な注目と対応が必要になってきます。

実際にヘイトスピーチが法的に規制されたり社会的に大きな制裁を受けるような国でも現時点でヘイトスピーチが根絶されているわけではありません。あくまでこれはゴールではなく、大きいながらも一歩前進と考えておくのが良さそうです。

ヘイトスピーチ法案修正合意 今国会で成立の公算 NHKニュース

ヘイトスピーチ解消法案 参院法務委で可決|日テレNEWS24

(Photo by Guido van Nispen

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