京都、鴨川の源流域に「もののけ姫」着想の舞台、役小角ゆかりの志明院を訪れました

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京都の街中を流れ、京都人の憩いの場である鴨川。その源流域を訪ねてみると驚きの山寺がありました。

京都の街中を南北に流れる鴨川。夏には鴨川沿いの川床で鴨川と東山を眺めながら料理を楽しめることで有名ですが、暖かい季節には三条川原にはカップルが等間隔で並んで愛を語り合い、下鴨神社付近の鴨川デルタでは日々コンパや飲み会、ピクニックが行われるなど京都人の生活に密着した河川として親しまれています。

この鴨川には大原から流れる高野川、鞍馬山の奥から流れ出づる鞍馬川、貴船神社の脇を流れる貴船川など多くの支流が合流してきます。それぞれの支流の先には大原三千院、鞍馬寺、貴船神社などの有名な寺社があり、少なからぬ観光客が訪れています。

しかし、実は鴨川自体の源流域はあまり知られていません。鴨川は下鴨神社の南の鴨川デルタで高野川と合流する以前は加茂川もしくは賀茂川と表記されていますが、河川法によると起点までが鴨川と統一されています。今回BUZZAP!取材班はこの鴨川の源流域へと足を運ぶことにしました。

そこは雲ヶ畑と呼ばれる、古くから皇室や朝廷と深い繋がりを持つ地であり、その最奥に存在する岩屋山志明院は役小角に弘法大師、そして菅原道真ゆかりの寺でした。

雲ヶ畑があるのは上賀茂神社付近から府道61号線を延々上っていったところ。一番奥の志明院までも13km程度と、距離的には思ったよりもかなり近いです。ただし、国道の通っている大原や叡山電車の走る鞍馬・貴船に比べるとアクセスの悪さは段違いです。

以前走っていた京都バスも2012年に撤退。現在の公共交通機関は北区雲ケ畑自治振興会が運営主体となり、北王子駅前から雲ヶ畑岩屋橋の間を1日2往復するジャンボタクシータイプの「雲ケ畑バス~もくもく号~」のみとなっています。訪れる場合はレンタカーやカーシェアリングなどをうまく使いたいところ。

こちらは雲ヶ畑の岩屋橋。もくもく号の終着地点です。志明院までは1.4km。

辺りの地図はこんな感じ。

すぐ側に料理旅館の洛雲荘があります。

こちらでは白味噌仕立ての牡丹鍋を楽しむことができ、夏には川床でお料理を頂くことも可能。ちょっとお高いですが…。

橋の向こうにはもう1軒、畑嘉というお店も。奥に見えるのは権力闘争に翻弄され、雲ヶ畑に隠棲して出家した惟喬親王を祀った惟喬神社。雲ヶ畑はこの惟喬親王にまつわる伝承が数多く残されています。

奥の志明院まで来てみました。離合困難な山道の一番奥にひっそりと佇んでいます。ゴールデンウィーク中だったので、訪れる人も普段よりは多かったと思われますが、それでもこれだけ空いています。

駐車場の脇には鴨川の支流が流れています。

参拝時間は8時から17時まで。境内での飲食は自然環境保護のため禁止されています。

志明院はシャクナゲの花が有名なのですが、4月末に咲いてすぐに儚く散ってしまいます。合掌。

苔むした階段と新緑が目にまぶしいです。

階段の途中がお花畑になっていました。

住職さんご夫妻の住居です。ここで拝観料300円を払い、内部の説明を聞きます。志明院は650年に役小角が草創。その後829年に淳和天皇の命で再興しています。本尊の不動明王淳和天皇の勅願による弘法大師の直作と伝えられています。さらに最奥の根本中院本尊眼力不動明王は宇多天皇の勅願で菅原道真が彫刻したものと伝えられます。

さらにはこの志明院は歌舞伎十八番の一、「鳴神」の舞台にもなっています。役小角や弘法大師も行法したとされる護摩の岩屋に、朝廷に恨みを持った鳴神上人が籠もって護摩行を行い、竜神を封じ込めて都を旱魃に陥れた時、洛中一の美女である雲の絶間姫がハニートラップで上人を破戒させ、竜神を封印した注連縄を切って雨を降らせるというストーリーです。

以前は宿坊もあったようですが、現在はやっていないとのこと。司馬遼太郎が不思議な体験をし、宮崎駿にそれを話したところ「もののけ姫」の着想に繋がったという現場と考えるとなんだか不思議。

司馬遼太郎がエッセイに書いたこの話を一部引用すると以下の通り。

寝につくや、三方の障子が不意にガタガタと鳴りだして、とても寝ていられない。地震でも突風でもないのに、障子だけが激しく音を立てて揺れるのである。障子を開けて縁側に出てみると、誰もいない。小首をかしげて寝床に戻ると、また鳴りだす。そのくり返しが続くので、たまらなくなって障子を開け放しておくと今度は屋根が鳴りだす。小童が屋根に登って四股を踏んでいるように、ドスン・・・ドスン・・・と響くのである。姿を見た人は誰もいない。

と、楼門を潜る前にお腹いっぱいになりそうなエピソードがてんこ盛りなのですが、実は志明院は楼門の先は現在も修行者がいるために撮影禁止。奥に進むごとにもののけ姫のシシ神の森を思わせる静かな景色が広がっていましたが、そこはぜひ自らの目で確かめてみてください。撮影OKだった楼門周りの風景がこちら。ここだけでもほんとうに美しいです。

立派な楼門。

清らかなお手水。

ほとんど終わってしまったシャクナゲの花ですが…。

まだほんの少しだけ残っていました。

とてもゆったりとした猛犬がお昼寝していました。

なお、根本中院の奥には岩から水が染み出している場所があり、水量が少ない時期を除けば鴨川の「最初の一滴」の音を聞くことができます。鴨川の源流域は雲ヶ畑一帯を指すことが多いため、あくまで象徴としての源流と言えますが、京都の暮らしを支える鴨川に思いを馳せながらじっとこの山寺の静けさに身を委ねてみるのもよさそうです。

特に京都人や京都は何度も来て気になるところは見尽くしたという方、少し足を伸ばしてみてはいかがでしょうか?

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