それでいいの?農水省が「納豆」の国際規格策定を求める方針


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みんな大好きな納豆。ですが、国際規格を作ることに効果はあるのでしょうか?

いつの間にか西日本でも日常的に食されるようになり、日本人のソウルフードと言って差し支えない地位を築き上げた納豆。健康志向や日本料理への関心の高まりから外国人でも食べられる人が増えてきています。

その当然の帰結として、日本の納豆が海外に輸入されていくのと同時に、海外でも納豆が作られるようになり始めています。そしてもちろん、そんな海外産の納豆の中には粗悪品も混じっています。

◆農水省は納豆の国際規格を作る方針
農林水産省はそうした「納豆もどき」とも言える商品が流通していることを問題視、食品の国際規格を作るコーデックス委員会に対して納豆の規格策定を求める方針を固めました。9月にインドで開催予定の同委員会アジア地域調整部会で提案する見通しです。

産経新聞の報道では全国納豆協同組合連合会のコメントを掲載しています。それによると「1年ほど前、豆が赤みがかっているものや粘らないものなど、日本人が考える納豆とは違うものが中国などで『納豆』として販売されているのを業者が確認している。レンズ豆を使った納豆の開発も行われていた。規格がないと、納豆とはいえないものが海外で『納豆』として流通する恐れがある」とのこと。

同会は2015年秋に日本の納豆を「日本の伝統的な大豆発酵食品。蒸し大豆を納豆菌で発酵させたもので無塩。攪拌(かくはん)によって白濁し、特異の粘性物質が確認できるもの」と定義。農水省もこの定義に沿った国際規格の策定を求める方針です。

◆アジアの「豆を使った発酵食品文化」と納豆
では、それは本当に納豆にとってプラスになるのでしょうか?同記事ではアジアにも大豆を発酵させた食品が存在していることから、他の国からの要請によって「豆を使った発酵食品全般」が納豆の国際規格とされてしまう可能性を指摘しています。

実際にJBPRESSのこちらの記事で紹介されているように、「アジアの納豆」は製法や料理法も日本の納豆の枠にとらわれておらず、非常に自由。長く文化として息づいています。むしろアジアの「豆を使った発酵食品文化」の中のひとつとして日本の納豆が位置づけられるとも言える状況です。

だとすれば、むしろそうした文化の代表として「Natto」という日本語が位置づけられれば、それはむしろ納豆にとって大きなプラスにもなり得ます。

◆海外でのアレンジと逆輸入という発展性・可能性
例えば全世界に広がって食されるようになった「Sushi」は日本の寿司の常識や定義を大きく逸脱する商品を生み出しました。その中でも最も有名なアボカドを使った裏巻きのカリフォルニアロールはいつしか逆輸入され、スーパーなどでも売られるようになっています。もし寿司が日本の中だけに留まっていたとしたら、日本人が寿司ネタにアボカドを使うのはどれほど遅れたことでしょうか?

また、外来の食品を独自にアレンジするのは日本人の得意とするところ。原型は発酵食品の熟れ寿司だった寿司が鮮魚を使った江戸前寿司になったり、中華麺をラーメンへと昇華させたり、スパゲティに明太子という日本の伝統食品を用いて鉄板のスタンダードメニューとするなど、枚挙に暇がありません。

ある国の食品や料理が国や文化を超えて食されるようになった時、そこでは必ずと言っていい程受け手側の文化に基づいた解釈がなされ、独自のアレンジが生まれます。辛くない麻婆豆腐、ゆず胡椒をソースに使ったのカルパッチョ、小麦粉の入ったカレーライス、どれも元の国にはないものです。

そうした変化を目くじらを立てて咎めて規制を求めるのでは無く、広い心で成り行きを見守るくらいの方がよいのではないでしょうか?粗悪な「納豆もどき」が試行錯誤の過程や悪質な業者によって作られることはあるでしょう。

しかし、そうした中から今現在では考えつかないような納豆の未来が生まれることも十分に考えられるはずです。そんな時はさっそく逆輸入し、再アレンジを加えて世界に発信してもよいのです。門戸を広げた方が、より納豆の未来は明るくなっていくのではないでしょうか?

なお、日本テレビの番組「世界の果てまでイッテQ」によると、大豆以外の豆で作る納豆はどれも実食に耐えられる美味さにはならなかったとのこと。他の豆ではタンパク質が足りず、発酵によってグルタミン酸があまりできないためとのこと。中国で開発されているというレンズ豆の納豆、果たして新しい納豆としてデビューできるのでしょうか?

粘らない・赤い…海外の「納豆もどき」排除 農水省、国際規格化提案へ - 産経ニュース

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