【追記あり】改正風営法が施行、クラブの終夜営業が可能となるも地域規制で明暗

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「客を踊らせてはいけない」時代が終わり、快晴風営法が施行されました。しかし、それは手放しで喜べるものではありませんでした。

2010年の大阪に始まる風営法を理由とした大規模なクラブ摘発。2012年にLet’s Dance署名推進委員会による16万筆を集めた署名運動が始まり、そしてロビイングの中で70名超の超党派のダンス文化推進議員連盟が生まれ、クラブとクラブカルチャーを守る会(CCC)といった団体が設立され、2015年6月17日にクラブなどの「ダンスと飲食をさせる営業」の規制を撤廃する改正風俗営業法が成立しました。

この改正風営法が2016年6月23日に施行され、「客を踊らせてはいけない」時代がついに終了しました。客に飲食とダンスをさせる営業を行うクラブは風俗営業から除外され、今後は店内の明るさが照度10ルクスを超えていることを条件に、新設された「特定遊興飲食店営業」の許可を取得すれば終夜営業可能となり、朝まで合法的に音楽をかけ、客を踊らせることができるようになります。なお、深夜までであれば通常の飲食店営業で「ダンスと飲食をさせる営業」を行うことが可能。

一見素晴らしい改正に見えますが、残念ながらそうは言えません。まず、新たに導入された「遊興」という考え方がダンスどころではなく極めて広範囲に及び、しかも抽象的であることから恣意的に運用される可能性が非常に高いこと。警察庁の辻生活安全局長が昨年の風営法改正を巡る国会質疑の中で「警察庁の想定する『遊興』」について行った回答は以下の通り。

「遊興」という擁護は一般には「遊び興じる」という意味で、法律上では現行法でも既に使用しています。風営法の規制の対象となる「遊興」は「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」と解釈しています。具体的には音楽を流して不特定の客にダンスをさせる行為、不特定の客にダンス、ショー、演芸等を見せる行為、歌、バンドの生演奏を不特定の客に聞かせる行為、のど自慢大会等の不特定の客が参加する遊戯、ゲーム、競技等を主催する行為がこれに該当するとして警察庁のサイトでも公表している。

つまり、深夜以降に「客を踊らせること」は確実に「遊興」に含まれると明言されている他、ショーや演芸、音楽ライブによって客に遊び興じさせたり、聴衆参加ののど自慢大会やゲーム、競技などを主催することも全て「遊興」に引っかかるのです。

ではなぜ「遊興」に引っかかることがそんなに大事になるのでしょうか。それは現行法では「深夜遊興の禁止」の規定に違反しても刑事罰は受けなかったのですが、改正風営法では営業停止に加えて2年以下の懲役、200万円以下の罰金という思い刑事罰が課されるようになります。

そして、これに絡む大きな問題は地域規制。各都道府県のどのエリアを「特定遊興飲食店」の営業ができる地域にするかは地方自治体による条例に委ねられたのですが、基本的には1平方キロメートルに300軒以上の店が集まる繁華街と、深夜に居住する人が少ない港湾地域・倉庫街などとされており、これは多くの場合風俗営業をできる地域と被っています。

現時点で44の都道府県で営業地域を条例で定めており、先月末までに特定遊興飲食店営業許可の申請は14都府県で70件だったということ。これは少なからず営業地域から外れた場所に存在していた既存のクラブなどが特定遊興飲食店営業の許可申請をできなかったということを示しています。

これまで地域コミュニティと対話し、問題を解決しながらシーンの支持を得て続けられてきたクラブは日本各地に少なからず存在しており、それらが各都市のシーンを支えてきました。

しかし改正風営法によって営業地域外であるとされれば、朝まで客を踊らせるクラブとしての営業許可を取得することができず、法的に担保された営業を行うことができません。しかも、これからは刑罰は営業停止だけでなく「2年以下の懲役、200万円以下の罰金」となり、リスクが改正前よりも大幅に増大しています。

また「×県では県庁所在地の〇市の□地区のみ営業地域で、△市では特定遊興飲食店営業はできない」といったケースも存在しており、その場合にはまるごと△市のクラブシーンが壊滅的なダメージを受けることが容易に想像できます。東京などの都市部であれば30分電車に乗ればクラブのある繁華街に行けるかもしれませんが、車社会の地方ではそうした移動も簡単なことではありません。

もちろん改正風営法の「遊興」はクラブだけに関係した話ではありません。ライブハウスやスポーツバーなどをはじめとした、警察が「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」と解釈できる行為を行っている全ての店舗に影響を及ぼします。そうなれば、営業地域外とされたエリアで深夜帯の営業活動に致命的なマイナス効果を及ぼすことにも繋がります。

クラブシーンが地域と密接に関わり合って悪いイメージを払拭することも、企業と結びついてインバウンドビジネスとして発展していくことも素晴らしいことですが、これまで草の根的に続けられてきた日本各地の小さなクラブシーンの目の前に迫った危機に対応していくことは必須。そうでなければいったい誰のため、何のためのクラブシーンなのでしょうか。

【6/23 18:50追記】
毎日新聞により申請の詳細が報じられたため追記。東京都で22日までに行われた申請は26件で、23日に許可を得たのは4店舗に留まっています。警視庁は都内に当該店舗が300店ほどあると見ており、この数字を信じるならば申請した店舗が1割以下、許可を得た店舗は2%にも満たない計算になります。

申請をしない理由としては、許可を得るために改装工事が必要な店舗が多く、手間や費用が掛かる上に工事中は営業できないため収入がなくなり、客が離れる原因にもなることが挙げられています。

営業地域内であったとしても、多くのクラブにとって「朝まで踊らせる営業」の許可を得ることがが極めて高く付くことが示された形になりました。果たしてこのあり方は時代に即していると言えるのでしょうか?

改正風営法施行:ダンス営業緩和に高い壁 改装に手間費用 – 毎日新聞

クラブ営業、オールナイトOK 改正風営法が施行:朝日新聞デジタル

クラブ 一定条件で朝までOK 改正風営法が施行 NHKニュース

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