【Boom Festivalレポート】「ダンスは瞑想である」Boom Festivalに連綿と流れ続ける通奏低音

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Boom Festivalは単にダンスミュージックで踊るというフェスではありませんでした。

Boom Festivalレポートをどのように、どういった切り口で書き連ねてゆくか。1週間にも及ぶキャンプインフェスティバルであるこのBoom Festivalはとても広く、奥深く、多くの魅力に満ちあふれています。時系列に沿っているだけでは見失うものもあります。

そこでまず、なんだかんだ言ってもBoom Festivalの中心である音楽とダンスについて触れてみることにしましょう。

Boom Festivalには複数のステージが存在しています。メインのダンスステージであり、トランス寄りのアーティストが多数出演する「Dance Temple」、テクノからトランスまで幅広いダンスミュージックを楽しめる「Alchemy Circle」、ゆっくりとチルできる音楽を横になって味わえる「Chill Out Guardens」、そしてバンドなどのライヴが多い「Sacred Fire」。

他にもワークショップや講演などの多いステージで音楽が演奏されることもありますし、出店しているカフェが音を流すこともあります。公式情報には載っていない謎の小さなDJブースが出現することも。

ですがやはりBoom Festivalの中心となるのはやはりDance Temple。オープニングセレモニーなどもここで行われます。その際には「ダンスは瞑想であり、トランス・ミュージックは瞑想のための音楽だ」という趣旨の話がありました。


日本人からするとちょっと怪しい、宗教っぽいと感じてしまうかも知れません。ですが、この発言はBoom Festivalがどんなものかを極めてよく表しています。このDance TempleでプレイするアーティストやDJの音楽はそのほとんどが広義のサイケデリック・トランスに属しています。

サイケデリック・トランスはBoom Festivalが始まった1996年当時にはゴア・トランスと呼ばれていたジャンルです。インドのゴアに集まったトラベラーたちが野外にサウンドシステムを持ち出し、DATテープでそれぞれの作ったテクノやアシッド・ハウスの音源をプレイしていたのがその名前の由来だとされています。

いわゆるレイヴ・カルチャーとインドにビートルズ時代から連綿と続くトラベラーによるヒッピー・カルチャーが融合し、4つ打ちのダンスミュージックにアラビアやインドのエキゾチックな音階によるメロディラインが付与され、エフェクトを多用したトリッピーな音楽が生まれていったのです。

ただし、そうしたアーティストやDJたちはインドに定住して生活し、音楽生活を行っていたわけではありません。彼らの多くはヨーロッパ(そう、多くがヨーロピアンでした)とインドを行き来し、ロンドンをはじめとしたヨーロッパで楽曲制作を行っていたのです。

理由としては20世紀のインドはダンスミュージックの制作環境としては決して適していると言えなかったことが挙げられます。当時のインドは物価こそ安かったものの、同時に今よりもずっと貧しく、治安も悪い国でした。宿に泊まっても貴重品は必ず身につけて持ち歩けと言われるような状況で、高価な機材を持ち込んで制作活動に励むというのは現実的ではありません。現代のようにPCを使ったDTMもまだ存在していない時代です。

また、ガンディーの提唱したスワデーシー(国産品愛用)の気風があるため、この時代は海外から物品を調達することも簡単ではありませんでした。当時はその辺りのレストランでもコカ・コーラを普通に飲むことができなかったと言えば少し理解してもらえるでしょうか?つまり、機材や配線の追加での調達、修理やメンテナンスも容易ではありませんでした。

加えてインドの季節は極めてはっきりしていて強烈です。ゴアであれば3月後半から酷暑期に入り、その後にはモンスーンの季節が到来します。どちらもお世辞にも快適とは言えません。

そうした理由からゴアのハイシーズンである10月から3月頭に掛けてアーティストやDJがゴアに集まり、そこで開催されるレイヴを目指してインド中からトラベラーが集まってくるというリズムができました。そして同時にゴアがオフのシーズンに彼らはヨーロッパに戻り、楽曲制作を行って夏のヨーロッパのレイヴや野外フェスに出演したのです。

話が大きく逸れましたが、こうしたサイクルの中でゴア・トランスという呼び名が生まれた90年代中頃の黎明期にBoom Festivalが始まり、今に至るまで続いていると考えてみると、「ダンスは瞑想であり、トランス・ミュージックは瞑想のための音楽だ」という言葉はまさに原初の息吹が今に生きているということだとお分かりいただけるかも知れません。

その後、2000年前後からサイケデリック・トランスという呼び方が生まれてゴア・トランスに取って代わり、多くのサブジャンルを生み出しながら連綿と今に至っています。日本では2003年頃にピークを迎えた後に流行は下火になりましたが、ヨーロッパでは廃れることなく、脈々と今もその歴史を重ね続けているのです。

Dance Templeに出演したアーティストのAvalonは「Boom Festivalは全てのトランス・フェスティバルの母艦だ」とコメントしていますが、規模としてもコンセプトとしても古くからこのカルチャーを牽引するフェスティバルであったことを今回の滞在のうちに思い知らされることになりました。

と、長くなりましたがDance Templeがどんな場所だったかというと、構想やデザインから1年間をかけて作り上げられた巨大な木製のドームがダンスフロア全体を覆い、カラフルなシートで屋根が作られています。



昼の間は一部がオープンになり、木製の枠には散水装置がビルトインされています。

こちらはリハーサル時の模様ですが、ホイールローダーや高所作業車が入ってメンテナンスを行っています。
Boom Festival 2016 Rehearsal – YouTube

南欧の内陸部ということで林は密ではなく、日陰が少ないためこのダンスフロアは格好の日陰スポットになり、しかも昼の暑い時間帯(真夏の東京の日差しをさらに強くして乾燥させたような暑さです)には常にミストが降り注いでくるため、端の方では布を敷いてゆっくり休んでいる人も。

ただし人気のアーティストの時にはそんな場所も見る間にダンスフロアに呑み込まれてしまいます。

ダンスフロアの中にいるとこんな感じです。


Boom Festival 2016 Day Time – YouTube

ある時こんなサインを見つけました。「WE ARE ONE」、幸せな瞬間です。

Dance Templeの奥はすぐに湖のため、踊り倒した人がそのまま水浴びに向かう姿も風物詩。

夕方の17時になると基本的に音楽が止まり、ブレイクタイムに入ります。そして21時から22時に再び音楽が始まります。この際にまた重機が入ってメンテナンスが行われます。夜になるとDance Templeはまた違った顔を見せてくれます。昼間は青空が見えた場所に白いシートが張られ、VJがデコレーションにプロジェクションマッピング仕様の映像を映し出します。

Boom Landは乾燥しているため、砂漠のように夜は長袖が必要なほどにまで冷え込みます。そして夜のDance Templeは踊る人の熱気でかなり暖かいのです。なのでふらふらとダンスフロアの真ん中に向かうと、とんでもない極上の音響でトランスミュージックに包まれて思わず踊り続けてしまうことになります。

Boom Festival 2016 Dance Temple Night Time – YouTube

音響についてですが、ファンクションワンの創始者がBoom Festivalのオーガナイザーと組んで特別なサウンドシステムを構築しているという話を何度も聞きました。実際にDance Templeには3階建てのビルのような巨大なサブウーファーが備え付けられています。踊っている人と比べてみて下さい。

このサウンドシステムが非常に優秀で、ダンスフロアの外に出て多少離れても十分音が通り、気持ちよく踊れます。このためステージから離れた自分の好みの場所でゆっくり踊る人もあちこちに見られます。


また、指向性を持たせてあるのか、他のステージに向かうとあるポイントからふっと音が聞こえなくなるのです。このためステージ感の音の被りが気になることはありません。極めて綿密にステージ間の音響が調整されていたことには驚かされました。

ということでざっと説明してきました。長くなったため、他のステージについては次のレポートでお伝えします。

BOOM FESTIVAL, 1997-2016, Oneness _ Music _ Arts _ Environment _ Culture _ Love

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