安倍首相「政府軍と反政府勢力の銃撃戦は数百人の死傷者が出ても『戦闘行為』じゃなくて『衝突』だ、法的な定義がないから!」

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Photo by UNAMID

死傷者の出る銃撃戦は日本語では戦闘行為とは呼ばないそうです。安倍首相が国会で断言しました。詳細は以下から。

安倍首相の手に掛かると政府軍と反政府勢力が銃撃戦を行い、兵士と民間人ら合わせて最低でも数百人が犠牲になった戦闘行為すら単なる「衝突」でしかないようです。

安倍首相は10月11日の参議院予算委員会の集中審議で民進党の大野元防衛政務官から、安保法制に基づいて新たな任務として付与される「駆け付け警護」について、「南スーダンでは、ことし7月に政府軍と反政府勢力との衝突事案があったが、これは『戦闘』ではないのか。新たな任務を付与するのか」と質問。

これに対して安倍首相は「PKO法との関係、PKO参加5原則との関係も含めて『戦闘行為』には当たらない。法的な議論をすると、『戦闘』をどう定義するかということに、定義はない。『戦闘行為』はなかったが、武器を使って殺傷、あるいは物を破壊する行為はあった。われわれは、いわば一般的な意味として『衝突』という表現を使っている」と回答。

ここで大野議員が取り上げている衝突事案とは今年7月に南スーダンの首都ジュバで発生した大規模な戦闘のこと。キール大統領の政府軍と、反政府勢力のリーダーから副大統領になったリヤク・マシャール氏を支持する反政府勢力が激しい銃撃戦を繰り広げました。これにより、双方の兵士と市民ら数百人(ガーディアン紙は7月11日時点で300人と報道)が殺害され、PKOに参加した中国人兵士2名も殺されています

南スーダンの首都ジュバで戦闘、兵士150人以上死亡 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

首都で戦闘、情勢緊迫=300人死亡か-南スーダン:時事ドットコム

この戦闘について、日本ボランティアセンター(JVC)のスーダン現地代表である今井高樹さんが以下のように現地からの報告を記事にしています。長文ですが一部を抜粋、引用します。

南スーダン政府が発表した270人という数字が実態を反映せず、ほんの一部でしかないことは現地にいた多くの人が指摘しています。各所で道路に散乱する死体が目撃されており、欧米メディアのインタビューに答えたあるNGOスタッフは「犠牲者は千人に達するのでは」と話していました。現地は雨季でもあり、スマホの画面で見たように、死体は腐敗する前にすぐに埋められてしまいます。正確な犠牲者の数は、永遠に分からないことでしょう。

大統領派の軍と、副大統領派の軍(元反政府軍)とによる戦闘は、戦車や武装ヘリコプターが動員され、ロケット砲など重火器が使用された激しいものでした。ジュバ西郊にそびえる「ジェベル・クジュール」(魔女の山、の意)の裾野にある副大統領派の拠点を中心に、戦闘は空港付近や市内各所で行われ、避難民が駆け込んだ国連の保護施設までもが巻き込まれました。避難民の多くは、副大統領と同じ民族グループ、ヌエル人です。これに対して、大統領派の兵士の多くはディンカ人。「保護施設の中に副大統領派が逃げ込んでいる」として、大統領派は保護施設に砲弾を撃ち込み、多くの死傷者が出ました。避難民には、もはや逃げ場もありませんでした。

両軍による直接の戦闘だけではありません。戦闘が収束してからの人々の証言で、この5日間に兵士、あるいは平服をまとい誰かも分からない武装グループが一般市民の住居を襲撃し、住民を射殺し、略奪を働いていたことが明らかになりつつあります。その際に、特定の民族グループがターゲットにされたとも言われています。

市場、商店はいち早く略奪されました。国連が援助物資を保管している倉庫も狙われました。物流の大動脈であるウガンダ国境からジュバに向かう道路では積み荷を狙った車両への襲撃が横行しています。ジュバ市内の食料不足は深刻で、避難民への支援活動にも影響が出ることは必至です。

JVC – 南スーダンの首都ジュバ、戦闘は終わったけれど・・ – スーダン日記

極めて凄惨な戦闘に加え、ヘイトクライムや略奪行為も発生していたことが証言から見て取れます。また、この戦闘に際しては、PKOに参加する陸上自衛隊の宿営地の100mほど隣にあるビルで2日間にわたって銃撃戦が繰り広げられ、政府軍の兵士2人が殺害されていたことも明らかにされています。

これが戦闘行為でなければいったい何が戦闘行為なのか、という程に苛烈な戦闘行為が発生していたわけですが、安倍首相からすれば「衝突」に過ぎず、戦闘行為ではないとのことです。

また、白紙領収書問題で揺れに揺れている稲田朋美防衛相は「法的な意味における戦闘行為ではなく、衝突だ」「戦闘行為とは、国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたはモノを破壊する行為だ。こういった意味における戦闘行為ではないと思う」と述べています。

稲田防衛相の提示した解釈に従うのであれば、国際紛争ではない内戦やISなどのテロ組織の行動は全て戦闘行為ではないという極めて馬鹿げた結論になってしまいます。また、安倍首相の答弁に寄れば「戦闘」に法的な定義がないということなので、稲田防衛相の答弁も極めてふわふわとした「思う」以上の根拠がないことになります。

であれば、定義がない以上7月のジュバでの戦闘を戦闘行為と呼ばない理由も存在していません。実際に国連は7月のジュバでの戦闘をfighting(=戦闘)と表現しており、日本が敢えて「戦闘行為」という言葉を理由もなしに避けるのは極めて政治的な思惑によるものと考えるしかなくなってきます。

そして稲田防衛相はジュバを視察した上で「駆け付け警護」に関して以下のように答弁しています。

私が視察をした首都ジュバの中は落ち着きはあったと思う。新たな任務を付与するかどうかは、今後、政府全体で決めることになる。『駆け付け警護』は、緊急、やむをえない場合に、要請に応じて人道的観点から派遣をしている部隊が対応可能な限度において行うものだ。したがって新たなリスクが高まるということではなく、しっかりと安全確保したうえで派遣することになる。

しかし、10月10日にはジュバの近くの道路で、北部の紛争から逃れてきた女性や子供を中心としたトラックに反政府勢力とされる集団が待ち伏せ攻撃を仕掛け、21人が死亡、20人が負傷するという事件が起きており、またジュバとウガンダの首都カンパラを結ぶ道路を走行していたバス3台が銃で武装した正体不明の男らに襲撃され、一部の乗客が拉致されています。

南スーダン首都近郊で車両襲撃、21人死亡 反政府勢力の犯行か 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

国家の要人として視察した稲田防衛相の目からは危険に見えず、リスクが高まることがないように見えたとしても、無差別な民間人の虐殺事件が発生しているのがジュバの現状。戦闘行為を衝突と言葉の上で言い換えるだけではなく、戦闘行為が発生していないからリスクが高まらないと結論づけるのであれば、これは明確な詭弁。自衛官の命が掛かっている事案である以上、危機管理を最優先して当然の場面と言えるでしょう。

弾薬も手榴弾もミサイルも武器ではないと珍定義を披露した「前科」のある安倍政権のことですから、戦争が「平和創出活動」と呼ばれる日もそう遠くはないのかも知れません。

首相 南スーダン“衝突あったが戦闘行為にはあたらず” _ NHKニュース

安倍首相「戦闘行為ではなく衝突」 ジュバの大規模戦闘:朝日新聞デジタル

(Photo by UNAMID

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