アニメ若手製作者も救済へ、下請法の改正で「下請けいじめ」対策に大きな前進か

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クールジャパンを担うアニメの制作者に下請法による救済が及ぶことになりました。詳細は以下から。

公正取引委員会は12月14日に下請法の運用基準を改正し、違反対象行為の事例を現行の66から141へと2倍以上に大幅増しました。下請法は不当な代金の値引き要請や支払期日の延期などを防ぐ法律で、大企業による「下請けいじめ」を不正で取引条件を見直し、中小企業の賃上げや資金繰り改善を促すことになります。

同時に親事業者から下請けへの支払いルールも約50年ぶりに見直され、できる限り現金支払いとすることが求められるようになる他、手形を使った場合の支払期日も現行の最長120日から60日以内に短縮するよう求めています。

今回この基準の改正で大きく影響を受けることになるのがクールジャパンのコンテンツ筆頭とも言えるアニメ業界。今年は「君の名は。」「この世界の片隅に」などの傑作アニメ映画が話題になっていますが、多くのテレビアニメではブラックという言葉で表しきれないレベルの劣悪な労働環境や、月給10万円以下という低賃金がまかり通っていることは以前BUZZAP!でも取り上げました。

現在のアニメは以前に比べて制作本数が極めて増加しているため、人員不足が大きな問題となっており、今年の秋には「Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-」「ろんぐらいだぁす!」「第502統合戦闘航空団ブレイブウィッチーズ」などのタイトルが立て続けに制作スケジュールの遅れを理由に放送が延期されて話題となりました。

改正では違反事例にこうしたアニメ制作業界での不当な鳥費観光を違反事例として加えられています。立場が弱くなりがちな個人事業者扱いのアニメーターとの不公正な取引を改善するための第一歩になると日本アニメーター・演出協会(JAniCA)は同サイトの記事上で言及しています。同記事から具体的な記述を引用します。

第2 法の対象となる取引
「アニメーション制作業者が,製作委員会から制作を請け負うアニメーションの原画の作成を個人のアニメーターに委託すること。」

第4 親事業者の禁止行為
(その他の受領拒否)
「親事業者は,継続的に放送されるアニメーションの原画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,視聴率の低下に伴い放送が打ち切られたことを理由に,下請事業者が作成した原画を受領しなかった。」
(その他の買いたたき(3))
「親事業者は,アニメーションの原画の作成を下請事業者である個人のアニメーターに委託しているところ,親事業者の要望を反映させることにより作成費用が当初の見積りよりも割高となることを理由に下請事業者から下請代金の引上げを求められたにもかかわらず,そのような費用増を考慮することなく,当初の見積価格により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。」
(その他の発注内容の変更・やり直し(3))
「親事業者は,アニメーションの動画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,親事業者が内容確認の上,完成品を受領したにもかかわらず,プロデューサーの意向により動画の品質を引き上げるための作業を行わせ,それに伴い生じた追加の費用を負担しなかった。」

アニメーション制作が下請法の適用対象例に追加されました:日本アニメーター・演出協会(JAniCA)より引用)

また、法の適用に関しては以下の通り。

アニメーションの制作については,テレビ局や製作委員会等の発注者から,元請制作事業者, 下請制作事業者へと再委託が行われる重層構造にあり,再委託を受ける事業者は小規模事業者が多く, 元請事業者から不当なしわ寄せを受けやすいと考えられます。このため,御意見を踏まえ, アニメーションの制作に関する情報成果物作成委託の取引例として,「第2法の対象となる取引」において次の事例を追加しました。
(中略)
また,アニメーション制作の取引において下請法違反行為が見受けられた場合には,迅速かつ効果的に対処してまいります。
下請法の対象とならない取引であっても,独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる行為に対しては,厳正かつ効果的に対処してまいります。
低賃金や長時間労働の背景に親事業者による下請法違反行為がみられる場合には,迅速かつ効果的に対処してまいります。

アニメーション制作が下請法の適用対象例に追加されました:日本アニメーター・演出協会(JAniCA)より引用)

協会は「下請法はアニメーション制作に関わる仕事の全てに適用されるものではありません」と但し書きを付けていますが、下請けの中でも特に待遇の酷さが指摘されていた業界であるだけに、改善されれば他業界も含む「下請けいじめ」の構造に焦点が当てられていくきっかけにもなりそうです。

クールジャパンの代表選手は現場のブラック労働の産物という汚名を返上することができるのでしょうか?よりよい環境があればこそ多くの才能が集まるのは世の常。間違いなく素晴らしいポテンシャルを秘めていることを世に明らかにした今年のアニメ業界ですが、こうした改善がさらなる飛躍の大切なステップとなることは間違いありません。

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