上皇?前天皇?退位後の称号について報道各社が混乱、謎の脅威論も

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今上天皇の譲位に伴う退位後の称号について各社の報道が混乱しています。

当然ながら上皇となることが予測されていた退位後の今上天皇の称号ですが、有識者会議などで異議が噴出したことから報道各社の報道が入り乱れる状態となっています。

日本史を少しでもかじったことがある人であれば、退位後の天皇の称号が上皇となることは基本中の基本。明治以前の日本の古く正当なる伝統です。昨年今上天皇が生前の退位を希望する「お気持ち」を表明した際、日本人であれば誰もが退位後は上皇となると考えたはず。

しかし、日本政府や譲位に関する議論を行う有識者会議の関係者の中にはこの当然の伝統を当然と思えない人間が混じっていることが明らかになりました。

毎日新聞は上皇が歴史的な称号で権威と結びつく可能性から有識者会議関係者が「二重権威になっていさかいが起こるイメージがある」と発言したことを取り上げ、「国民統合の象徴の分裂」が起こるという脅威論を紹介。

政府が「上皇が天皇より上位にあるとして政治に関与した歴史があり、皇位の安定性に懸念を抱かせる恐れがあると判断」したとしています。この際、天皇より上位とみなされにくい「前天皇」や「元天皇」という称号を用いることを検討しているとしています。

退位後称号:「上皇」使わず 政府、「前天皇」など検討 – 毎日新聞

朝日新聞は官邸幹部の「議論が煮詰まっていない」という認識を伝え、2月から複数回の会合を開き、有識者会議に一定の方向性を示させるとしています。称号に関しては専門家のヒアリングで「太上(だいじょう)天皇、ないし通称の上皇」という意見が出たことを述べるのみで、上皇に否定的な意見が出ているとはされていません。

退位後の呼称など議論 有識者会議、3月末にも最終提言:朝日新聞デジタル

一方、日経新聞は政府が退位後の称号を「上皇(太上天皇)」とする方向で検討に入ったとしており、毎日新聞とは真逆。有識者会議による専門家へのヒアリングで呼称を「太上天皇」や「上皇」とするのが望ましいとの意見が相次いでいたことにも触れ、政府関係者の間でも一般的になじみの深い略称である「上皇」を用いる案が有力視されているとしています。

ただし、こちらでも「歴史上、退いた天皇が上皇として権力を握り、院政の弊害が生じた例がある」ことに触れ、有識者会議での論点のひとつとなっていることに触れています。

天皇退位後「上皇」に 政府検討:日本経済新聞

ここでひとつ忘れてはならないのは、政府が皇室典範の改定ではなく、今上天皇の一代限りの特別法によって今回の譲位を処理しようとしている点。皇室典範の改定が行われるのであれば、システム的に院政の弊害が生じる可能性について言及し、対策を考えることには一定の妥当性があります。

もちろん、現憲法下では一切の政治的活動のできない象徴天皇制である以上、論理の飛躍であり杞憂であるとも言えますが、現在では不可知の未来の状況について「転ばぬ先の杖」として制度の整備を議論することを積極的に排除する理由はありません。

しかし、特別法によって今上天皇のみを対象として議論しているのであれば、政府や有識者会議は今上天皇が退位後に上皇として「院政の弊害」を生じさせ、「国民統合の象徴」を分裂させる可能性があると言っていることになってしまうのです。

つまり、特別法という方法にこだわりながら同時に「上皇」という称号を危険視するということは、退位後の今上天皇の言動を危険視することと同義になります。

例えば今上天皇と安倍政権の憲法観は真っ向から対立すると言っていい程に違っていることはこれまでの発言から明確ですが、政府によって上皇の称号を使わせないという決断がなされれば、対立がより鮮明に浮かび上がることになりそうです。

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