有機ELで出遅れたジャパンディスプレイ、自社がまとめた「事業等のリスク」が当てはまりまくる事態に

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気が付けば国内唯一のディスプレイメーカーとなったジャパンディスプレイ。あまり業績が芳しくなく、身売りの話すら持ち上がる同社ですが、事業のリスクが跳ね上がっていることが明らかになりました。詳細は以下から。

◆ジャパンディスプレイ公式ページの「事業等のリスク」が的確すぎる
まず確認してもらいたいのが、ジャパンディスプレイが昨年公表した「事業等のリスク」というページ。同社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクをまとめたもので、読み進めると恐ろしいほど当てはまっていることが分かります。

IR情報:事業等のリスク|株式会社ジャパンディスプレイ

◆生命線のハイエンドスマホ向け液晶が今後一気に縮小する見通し
最も大きな問題は、ジャパンディスプレイの売り上げに大きく貢献しているスマホ向けハイエンド液晶市場が今後縮小する見通しであるということ。

これは先進国などでハイエンドスマホの売れ行きが鈍りつつあることも一因ですが、ジャパンディスプレイが有機ELの製造ラインを立ち上げられていないにもかかわらず、世界シェア上位のスマホメーカーが軒並み有機ELを採用しようとしていることが根本的な原因です。

有機ELパネルが足りないため、2017年時点ではSamsung、Apple、Huawei、Oppo、Vivoといった世界シェアトップのスマホメーカーはハイエンドモデルを中心に有機ELディスプレイを搭載する見込み。つまり、今年から主力製品の需要が一気に減るわけです。

さらにLGディスプレイの上席副社長兼CTO、姜仁炳氏によると、ディスプレイメーカー各社が有機ELへと注力することを受け、2018年にはスマホのディスプレイで有機ELと液晶が逆転する可能性があるとのこと。この2年で液晶はあっという間に時代遅れになります。

これらのリスクについて、ジャパンディスプレイは以下のように解説しています。

特に、当社グループの売上高への貢献の高い高価格帯スマートフォンについては、近年先進国においては市場の成熟化の兆しが見え、また、新興国においては低価格帯スマートフォンの拡大が続いており、当社グループの期待どおりに高価格帯スマートフォンの市場が拡大しないおそれがあります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

完成品メーカー等が有機ELディスプレイを完成品に優先的に採用する場合や、有機ELディスプレイ技術が強みを有するフレキシブルなディスプレイへの需要が高まる場合等には、LTPS技術自体の競争力が低下し、かつその場合に当社グループが有機ELディスプレイ技術を利用した製品を製造又は供給できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

◆Appleなどに依存する構造も問題に
また、ジャパンディスプレイはiPhoneなどのApple製品向けディスプレイの製造を担当。新たに稼働した白山工場の建設費用についても、Appleの投資を受けています。

そんなジャパンディスプレイは「当社グループの売上高は当該特定機種の完成品メーカー向けの販売に相当程度依存しています」と自ら依存していることを認めているのが現状。

当社グループは、現在世界的にシェアの高い特定のスマートフォン向けディスプレイの生産を手掛けており、上記完成品メーカー又は上記特定機種の競争力が減退すること、当社グループの製品が当該完成品メーカーの要求する水準を満たせないこと及び競合他社が既存製品に代替する新製品を開発すること等により、当該完成品メーカーが当社グループへの発注を減少若しくは停止した場合、又は当該完成品メーカーとの取引の利益率及び取引条件が改善しない場合には、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

もしApple製品の売り上げが失速、あるいはAppleが有機ELをはじめとしたディスプレイを他社から調達するようになった場合、ジャパンディスプレイはかなりのダメージを受けてしまいます。

そのためAppleなどの大口顧客は、競合他社の液晶や有機ELディスプレイをダシに、いくらでもジャパンディスプレイの製品を買い叩ける立場にあるわけです。これでは健全な商売ができるはずもありません。

◆懸念事項は全部で26項目
他にも経済状況の変動によるモバイル製品の需要減少、競争の激化、販売価格の下落、市況及び季節性変動、消費者の嗜好の変化、研究開発投資の効果の不確実性、東京オリンピックや東日本大震災の復興需要による工場建築コストの上昇、知的財産権訴訟、筆頭株主である産業革新機構の動向、為替相場の変動……など、とにかく考えられる限りのリスクが26項目にわたって列挙されています。

◆肝心の有機ELは?
そんな厳しい状況にあるジャパンディスプレイが他社と同じラインに立つためには、やはり有機ELへの本格参入は必須。ハイエンドスマホに有機ELが優先的に採用される以上、その流れには抗いようがありません。

しかしパナソニックとソニーの有機EL事業を合併した「JOLED」の子会社化は、「有機EL(OLED)ディスプレイの事業化に関し、新しい事業モデルの構想を進めておりますが、更なる検討を行うため」として、2017年12月下旬に延期されてしまいました。

株式会社 JOLED の株式の取得(子会社化)に関する日程変更のお知らせ

韓国や中国勢が有機ELに1兆円を超える投資を進める中、足踏みしているジャパンディスプレイ。

これだけの危機を予見しつつも手をこまねく形となったことに、同社経営陣の苦悩も見えてきます。

そして一番の問題は、ジャパンディスプレイの”仕掛け人”で主要株主の産業革新機構が日本のディスプレイ産業を一体どうしたいのかが見えないこと。

有機ELの隆盛に危機感をおぼえながらも産業革新機構やメーカーの顔色をうかがうしかない立場のジャパンディスプレイにとって、旗振り役は欠かせないわけですが、それでも国は同社を漂泊させ続けるのでしょうか。

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