自己負担引き上げの介護保険関連法案を強行採決、「森友学園問題に触れた」という理由で

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野党が森友学園問題に触れたという理由で、自己負担引き上げを容認する介護保険関連法案を強行採決しました。詳細は以下から。

自民党と公明党、日本維新の会は4月12日の衆議院厚生労働委員会において、一定の所得以上の介護サービスの利用者の自己負担割合の引き上げなどを盛り込んだ介護保険制度関連法案を予定を繰り上げて強行採決しました。

◆安倍内閣支持者の6割さえ求める森友学園問題の究明を拒否
発端となったのは民進党の柚木道義議員の質問。柚木議員はその質問の冒頭でこれまで森友学園の補助金不正受給や園児の虐待問題の議論をしてきた経緯を説明、NHKの世論調査でも国有地の安価での売却に政治家の忖度はなく適正であるという政府の説明に78%が納得できないと答えている事実を伝え、森友学園に触れました。

NHK世論調査 安倍内閣「支持」53%「不支持」27% _ NHKニュース

また、迫田国税庁長官や安倍昭恵さんら関係者の証人喚問が「必要だ」と答えた人が42%、で「必要ではない」の22%の2倍近くに及んでいることも指摘、忖度などないという説明責任を果たすために安倍首相から関係者らに公の場で説明を行ってもらうよう指示願いたいと発言しました。

これに対して安倍首相はいきなり「内閣支持率は53%で、民進党の支持率はご承知のとおりでございます」「この件には委員会で従来より何回も説明してきたとおり」「十分ご理解いただいていないのは大変残念」と返答。

その後柚木議員は財務省が消されたとされたデータが復元可能であると答えている事、今年6月にシステム入れ替えが行われるため証拠が消滅する恐れがあるため、安倍首相から財務省と森友学園側との交渉データを復元して公表するように一言指示して欲しいと要望。

安倍首相は質問に答えず、委員長も「質疑は議題の範囲内でお願いします」と繰り返し柚木議員に伝えますが、柚木議員は「質問権は一定の範囲内で保障されていると考えている」として食い下がります。

しかし委員長は「速記を止めてください」として森友学園問題への質問を完全に封じてしまいます。なお、柚木議員は8分ほどのこのやり取りの後は(以下動画9:22頃から)介護保険制度関連法案についての質問を予定通り行っています。

安倍への森友質問は禁止される!柚木道義(民進)【全】:衆院・厚労委4_12 – YouTube

しかし、「委員会で従来より何回も説明」した上で国民の78%が森友学園問題に納得していないというのが現実であり、国民が納得していないのは政府側が納得のできる説明をせず、財務省のデータ提出や迫田国税庁長官や安倍昭恵さんの証人喚問を頑なに拒否しているためであり、決して政府側から「大変残念」などと言える話ではありません。

首相が答弁の最初に「内閣支持率は53%」と数字をいきなり出してくる辺りはフリーザ様もびっくりですが、この数字は最低でも31%の回答者が安倍内閣を支持するとしながら同時に森友学園への説明には納得がいかないと回答したということ。

さらに言うならば、これは安倍内閣を支持すると答えた人においても、その最低でも6割ほどが森友学園への説明に納得がいかないと答えているということ。つまり、安倍首相は自らの内閣の支持者の最低でも6割が求める極めて大きな問題への説明と事態の解明を拒否したということになります。

また、民進党の支持率にまで言及したところも極めて大きな問題で、自らの内閣や自民党よりも支持率の低い野党の質問にまともに答える必要がないと考えているのであれば、議会制民主主義を根本から理解していないことになります。

安倍首相が国政選挙で選ばれた「民意の代表」たる代議士のひとりであるとするならば、同時に民進党を始めとする野党の議員も国政選挙で選ばれた「民意の代表」たる代議士であることには変わりはありません。

当選に必要なだけの民意を得票して当選した議員は与野党関係なく日本国民の一定の割合の民意を代表して国会という場に立っているわけですから、野党議員を軽視するということは、国民という主権者の存在自体を軽視していることと同義です。

そして、この後の展開も議会制民主主義を根底から踏みにじるものでした。

◆「懲罰」としての強行採決?

上記動画にもあるように、柚木議員は冒頭で森友学園問題に触れた後、介護保険関連法制について質疑を行っています。しかし日本会議国会議員懇談会に所属する自民党の田村憲久理事が激怒、審議をストップさせます。

緊急理事会の後に同じ自民党の丹羽厚生労働委員長が職権で委員会を開き質疑が行われましたが、予定されていた野党側の質問が終わったところで、自民党の三ツ林裕巳議員が「ただちに採決すべき」と質疑の終局と法案の採決を求める動議を提出、委員長が賛成議員の起立を求め、自民党、公明党、維新の会による強行採決が行われました。

本来なら13日も同法案の審議が行われ、14日に採決が行われる予定でしたが、これらが全部すっ飛ばされた形になります。

田村憲久理事は「法案以外のことを質問するなら十分質疑をしたという証拠だ」などと強弁していますが、これらは完全に別問題であり極めて稚拙な詭弁。強行採決は森友学園問題封じの言い訳に過ぎません。

今回の強行採決の極めて重要な問題は、政府が触れられたくない問題に国会で多少なりとも触れた途端、その議題の審議を打ち切って強行採決するという「恫喝」や「懲罰」の手段として強行採決が用いられていること。

これでは「政府が触れられたくない問題を野党側が追求する」という民主主義を民主主義たらしめる根本的な自浄作用がまったく機能しなくなります。ある議題について審議を行うために、森友学園問題という絶対に究明されるべき大問題を封印することが強要されるのであれば、これはもはや議題や法案を人質に取ったある種の独裁政治であると言う他ありません。

実際に今回の介護保険制度関連法案は年収340万円以上の単身者の介護サービスの自己負担割合を、2割から3割に引き上げることが柱となっており、12万人に影響する話であって決して審議を打ち切ってよい話ではありません。

これまでも自民党は安保法制やTPP関連法案、カジノ法案などの国のあり方に関わる重要法案で強引な強行採決を繰り返してきました。今後はこれに疑惑隠しの手段としての強行採決が加えられる事になるのでしょうか?そうなれば議会制民主主義は完全に形骸化する事になります。

介護保険法改正案を強行採決 森友問題の質疑で紛糾:朝日新聞デジタル

「森友」質問で打ち切り 野党、態度を硬化:日本経済新聞

東京新聞:介護保険関連法案、衆院厚労委で可決 民進の「森友」質問後に採決強行:政治(TOKYO Web)

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