「公立小中学校の教員が全国で700人超不足」という異常事態の意味すること、なされるべき対策は?

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あまりにも衝撃的な数字です。詳細は以下から。

NHKが7月4日に全国の公立の小中学校の教員数が、2017年4月の時点で定数よりも700人以上不足していること、そして一部の学校で計画どおりの授業ができなくなっているという異常事態が発生していることを報じました。

◆公立小中学校の教員が全国で700人超不足という正真正銘の異常事態

その理由として挙げられているのが「これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足」という事で、既に異常事態を自転車操業状態で辻褄を合わせてきたものの破綻が起こっていると言うしかない事態になっています。

そもそも公立小中学校の教員は、児童・生徒の数に応じて国が毎年定数を算出し、この数値をベースにして全国各地の教育委員会が配置しているもの。

NHKが全国の都道府県と政令指定都市の合計67の教育委員会に取材したところ、全体の半数近い32の教育委員会で定数を確保できず少なくとも717人の教員が不足していたことが判明しました。

これによって3週間美術の授業ができない、英語の少人数授業が行えないなど、実際に義務教育の授業に支障が出ているのが現状です。臨時採用の教員を他県まで探したりハローワークで求人を出してもなかなか見つからないという、極めて深刻な「人手不足」が明らかになっています。

これは日本国憲法第26条が遵守されていないという事を意味します。憲法では

すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

と定められており、小中学生は義務教育を受ける権利があり、また国民は「保護する子女に普通教育を受けさせる義務」を負っています。しかし公立小中学校が教員不足という理由でまともに義務教育を実施できないのであれば、これは公立小中学校側が憲法第99条

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

という憲法尊重擁護義務違反になってしまいます。いったいどうしてこのような事態になってしまったのでしょうか?

◆低賃金低待遇の「臨時採用」教員で凌がざるを得ない悲惨な状況
この事態が発生した理由は上述したように「これまで欠員を埋めてきた臨時採用の教員の不足」とされています。しかし臨時採用の教員はあくまで非正規雇用であり、待遇が不安定な上に給料が低いため、なりたがる人が極めて少ないのが現状です。

どこかで聞いたことのあるような話ですが、これはまさに運輸業界が厳しい待遇で人手不足となり、ようやく運賃値上げや週休3日制などによって雇用を確保しようとしているのと似ています。

しかし、介護施設や育児施設、飲食業界などでは人手不足が解消できず、老人ホームの入所待ち問題、「保育園落ちた日本死ね!」ブログで大きく取り上げられた待機児童問題、24時間営業の中止や定休日再設定などで持ちこたえている状況です。

ただし、義務教育で授業ができないという事態は絶対に起こってはならないことのはず。そして解決策は既に分かっていて、それは「十分な賃金と常識的な待遇を提示して正規雇用で教員を募集する」という、保育士や介護士とまったく解決策です。

しかし、文科省はそう考えてはいないようです。

◆文科省の「教員の働き方改善を議論」という的外れさ

NHKの取材に対して文部科学省の佐藤光次郎教職員課長は「最近、特に出産や育児などで休職する教員が増えていることもあり、臨時教員の確保が難しくなっている課題があることは受け止めている。子どもたちの学習環境を維持するために必要な教員を確保することは基本なので、国としてもしっかり対応しなければならない」とコメント。

しかし対策についてはなぜか「教員の仕事の負担が重かったり多忙になったりということがネックとなり、教員のなり手を十分に確保できていないことが背景にあると思う。教員の働き方は使命感や、やりがいと表裏一体だと思うので、それについてもどう改善していくか幅広く議論し、人が集まるような環境にしていきたい」としており、なぜか「使命感や、やりがい」というブラック企業丸出しの発想しか出てきていません。

改善すべきは「教員の働き方」というふわふわした何かではなく、正規雇用と十分な賃金です。授業以外の雑用が多過ぎる、部活動の顧問の負担が大過ぎるといった問題は確かにありますが、それはあくまで教員として採用された後の付随的な問題であり、正規雇用による安定した長期的な雇用と十分な賃金に先立つものはありません。

教育は国の要であり、これを軽視する国が将来的に反映することは考えられません。既に大学の高額な学費問題、奨学金返済問題や、若手研究者の雇用問題など、日本の高等教育はズタボロになっています。

これに加えて義務教育までもがおざなりにされ、日本の将来を担う子ども達がまともな教育すら受けられないようになるのであれば、日本は今後衰退以外に辿る道がなくなることは間違いないでしょう。

公立小中学校の教員数 全国で700人以上不足 _ NHKニュース

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