カナダのオンタリオ州で行われたベーシック・インカムの試験導入、受給者らの生活に大きな変化も

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今年4月から試験的に導入されたベーシック・インカムが興味深い成果を上げています。詳細は以下から。

◆試験導入されたベーシック・インカム
2017年春からカナダのオンタリオ州で3年間の期限付きで4000人を対象に開始されたベーシック・インカムの試験導入からおよそ半年が経ちました。

この実験の対象は18歳から64歳までの失業者や低所得者からランダムに選ばれ、年間で最大で17000カナダドル(約148万円)を支給された上に労働で得た所得の半分を保持することも許可されます。つまり、労働に対するインセンティブも働くということ。

もちろん3年間の実験の最初の半年で結論を出すには早すぎますが、現時点の受給者らの声には耳を傾けるべきポイントがあります。

◆受給者らの語る生活の「多大な変化」
AP通信の取材に対しTim Buttonさんはベーシック・インカムの支給が「多大な変化」をもたらしたと回答しています。

Buttonさんは以前警備員として働いていましたが、屋根から落ちて大けがを負って仕事ができなくなっていました。「支給は鬱を解消してくれ、私はより社会的になった」とButtonさんは語ります。

ベーシック・インカムの支給によってButtonさんの収入は6割上昇し、ここ数年来で初めてクリスマス休暇に家族を訪れる計画を立てることができました。Buttonさんはより健康的な食材を買い、歯医者に通い、仕事を見つけるための職業訓練コースに通うこともできました。

また、46歳のDave Cherkewskiさんは2002年から精神的な病を患って働くことができませんでしたが、毎月750カナダドル(約65000円)を受け取ることになりました。

Cherkewskiさんは「働けなくなってからの14年間の極貧生活の中で、今が一番いいよ」と述べており、現在は精神的な病を持っている人を助ける仕事を探しています。

そして「ベーシック・インカムのおかげで私はやりたいことをはっきりさせて現実にできるようになる。私は家賃や携帯代を払ったり、食事やその他のことに使うお金を心配せず、目標にむけて集中できるから」と語っています。

オンタリオ州はこの3年のベーシック・インカムの導入実験が望ましい結果を得られれば、1420万人の州の住民に向けて制度を拡大していき、他国に対しても推奨していく方針です。

これからの2年半でどのような結果が見えてくるのか、現時点で全てを見通すことはもちろんできません。しかし受給者らの言葉からは貧困が人々の生活から何を奪い、もしその貧困に対して金銭的な保証が行われる時にどのような変化が起こるのか、その一端を垣間見ることができます。

◆貧困対策として見たベーシック・インカムの効果
注目すべきは、ここで語られている内容は、以前ツイッターの#最低賃金1500円になったらというハッシュタグで呼びかけられた際の回答と非常に似通っていること。

ベーシック・インカムの導入と最低賃金1500円は方法は違えど、貧困対策としての役割を担うという共通項があります。この導入実験で示されているのは、人は貧困が解消に向かえば自己投資を行い、健康に気を使い、早い段階で病気に対処し、旅行の計画を立てるということ。

つまり消費が喚起され、医療費が削減され(病気が予防されたり初期対応されれば重症化してから治療するよりも当然安く上がります)、技能を持った労働者が増えるということになります。

日本では「貧困層に金をばらまいてもろくな使い方をしない」といった批判が少なからずありますが、既にベーシック・インカムはフィンランドやアメリカ合衆国のハワイ州、カリフォルニア州オークランド、オランダのユトレヒトなどでも試験が行われています。

今後どのような結果が出され、どのように拡大していくことになるのでしょうか?

Canadian province trials basic income for thousands of residents _ The Independent

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