エンゲル係数が上昇しても景気回復、安倍首相が斬新すぎる新解釈を披露

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経済の基本のキなのですが、安倍首相にとっての解釈は別物のようです。

◆エンゲル係数に対する驚きの新解釈
2017年2月に1987年以来29年ぶりの高水準となったことが報じられた日本のエンゲル係数。家庭の消費支出全体に占める食費の比率を示すエンゲル係数は、高校生ですら「生活水準が高くなるにつれて数値が低くなる」事を知っている有名な経済指標です。

日本ではこのエンゲル係数は戦後長く下落傾向が続き、記録がある1970年には34.1%だったものが、2005年には22.9%にまで低下。しかし、第2次安倍政権が発足し、アベノミクスがスタートした2013年以降は上昇に転じ、2016年には25.8%と家計の消費支出の1/4を越え、1987年の26.1%と同レベルにまで達してしまったのです。

この事実を引き合いに、1月31日の参議院予算委員会で民進党の小川参院議員会長は「国が行った調査で、エンゲル係数が上がってる国民の生活は苦しくなっている。これがアベノミクスの実質じゃないですか」と追求。

しかし安倍首相は「厳然たる事実の一つは、やはり働く場所があるということだろうと思います。47すべての都道府県において(有効求人倍率が)1倍を超えた、これは高度経済成長期にも、あるいはバブル期でもなかったことでありました。それはやはり、この景気回復の波が全国津々浦々に及んでいるということであります」と答弁。

エンゲル係数が29年ぶりの高水準となった事実に対して有効求人倍率がこれまでになく高いという事実を示し、「この景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」という認識を示したのです。

◆有効求人倍率が上昇している理由は人口減少
まず前提として指摘すると、有効求人倍率が高くなっているという事実は景気回復とは特に関係がありません。

昨今の有効求人倍率の増加は少子高齢化による労働人口の減少による人手不足に伴うものと考えるべきもので、実際に総務省の資料によると、15~64歳の生産年齢人口が2013年10月時点で7,901万人と32年ぶりに8,000万人を下回っており、今後も減少傾向が続くことが予測されています

これを裏付けるように、民間の信用調査会社「東京商工リサーチ」によると、2017年10月に1000万円以上の負債を抱えて倒産した企業の数が733件と前年同月から7.3%増加してこの4年間で最多となりました。

倒産件数が前年を上回ったのは2ヶ月連続で、産業別ではサービス業などが215件で最多。建設業が148件で続き、卸売業が111件となっています。この中でも特に人手不足による人件費の高騰などで経営悪化して倒産した企業は39件となり、前年同月より70%以上も増加し、この4年で最も多くなりました

◆賃金も消費支出もアベノミクスの下で伸びず
賃金を見てみても日本だけがG7(主要7ヶ国)の中で2000年の物価の影響を除いた各国通貨ベースでの実質賃金を下回っています。また、世帯収入の中央値は22年前のバブル崩壊後の1995年にはピークの550万円を記録していますが、2017年までの22年の間に122万円も減少しています。

中央値は21世紀になって500万円を割り込み、リーマン・ショックの2008年には427万円まで低下。その後民主党政権になって東日本大震災があったものの2012年までは432万円で維持しています。

しかし安倍政権が2012年12月に誕生し、2013年の中央値は415万円へと落ち込みます。2014年は427万円、2015年は428万円と微増しますが、3年経っても東日本大震災後の民主党政権最後の年のラインに戻すこともできていません。

その当然の帰結として、2017年5月には1世帯当たりの消費支出が15カ月連続のマイナスを記録、リーマン・ショック超えとなり、比較可能な2001年以降で最長を更新しました。同時期には既婚者の小遣いは月平均で2万5082円となり、2007年の調査開始以来、過去最低となった事も報じられており、趣味や嗜好品に使える可処分所得が減っている現状も浮き彫りになっています。

◆非正規雇用の増大と貧困の蔓延

なお、この賃金の減少の大きな要因となっているのが2015年に4割にまで達した非正規労働者です。2017年に発表された国税庁の民間給与実態統計調査によると、非正規労働者の平均給与は172万円で正規労働者よりも315万円低く、アベノミクスの中で格差は4年連続で拡大しています。

特に働き盛りで労働人口の主役とも言える世代のはずの40代が世帯主の低所得世帯の割合が1994年から2014年までの20年間で11%から17%に増加、1.55倍という衝撃的な数値になっています。

これに関連したニュースとして、厚生労働省は2017年12月8日に生活保護費に関し、大都市部を中心に食費や光熱費など生活費の受給額が大幅にカットとなる見直し案を提示。

生活保護の生活費は最低限度の生活を営むのに必要な水準が支給されるもので、「生活保護を受けていない低所得世帯と同じ生活水準」になるよう算出されています。この水準は5年に1回見直され、2013年にも既に平均6.5%引き下げられています。

厚労省は、現在の受給額と低所得世帯の消費実態を比較し、消費実態のデータと世帯人数数に対する消費支出の指数などを用いて2案を産出しましたが、「低所得世帯の消費支出が減少しているから」という理由でその差額分、生活保護の水準を引き下げるとのこと。

つまりは日本全体で賃金が減少した世帯が増えており、その低所得世帯の消費支出も生活保護の水準に影響するほどに冷え込みが激しくなっているということ。そうなれば当然ながら日本のエンゲル係数は上昇しますし、これらの一連の流れから景気の回復を読み取ることは到底できません。

◆結論
つまり、有効求人倍率がいくら高くなろうともそれは少子高齢化に伴う人口減少に起因するものでしかなく、働く人の収入が増えるどころか減っていることが明確に示されている以上、安倍首相の「この景気回復の波が全国津々浦々に及んでいる」という小川議員への答弁で示した認識は端的に言って間違いということになります。

賃金が上がらず、趣味や嗜好品、旅行、車や住宅の購入などの目的で消費することができない状態であるからこそのエンゲル係数の上昇であり、景気の冷え込みであるということです。

シンプルに賃金を上げ、安定した雇用とブラックではない待遇を保証すれば景気は回復するのですが、いつまでその本丸に手を付けるのをためらうのでしょうか?

参院予算委 アベノミクスの問題点を追及(日本テレビ系(NNN)) – Yahoo!ニュース

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