風営法のパブリックコメントへの回答に見る警察庁のダンス規制へのスタンスと問題点

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風営法の一部改正に対するパブリックコメントへの回答が警察庁から行われ、その中で最新の風営法及びダンス規制に対するコメントが記載されました。

今回このコメントが記載されたのは「『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案』等に対する意見の募集結果について」 と題されたパブリックコメントへの結果公示。この中で参考として、風営法によるダンス規制の趣旨について説明されています。



風営法が客にダンスをさせる営業に対して所要の規制をしている趣旨について、参 考までに御説明いたします。風営法は、客にダンスをさせる営業が、適正に営まれれ ば国民に健全な娯楽を提供するものとなり得る一方、営業の行われ方によっては、いかがわしい営業の発生等により風俗上の問題が生じること、騒音等により周辺地域の生活環境が悪化すること、18歳未満の者が客として自由に出入りできるようになる等の少年の健全育成に係る問題が生じること等のおそれがあることから、こうした問題を未然に防止するため必要な規制をしているものであります。このように風営法は、客にダンスをさせる営業に対して所要の規制をしているものでありますが、ダンスをすること自体を規制しているものではありません。

『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案』等に対する御意見及びこれに対する警察庁の考え方について」(pdf)より引用



この記述から分かるのは、風営法は「ダンスすること自体」を規制しようとているのではなく「ダンスをさせる営業」の、「いかがわしい」「行われ方」を規制するために「ダンスをさせる営業」そのものを規制しているということ。これが現在取り沙汰されているダンス規制問題の根幹にある状況です。

風俗上の問題が生じる」「騒音等により周辺地域の生活環境が悪化する」「18歳未満の者が客として自由に出入りできる」ことが問題であるならば、それぞれについての法律が既に存在しているのだから、それらを根拠に規制すればよいはずですが、風営法によってそれらとは別に「ダンスをさせる営業」自体に規制がかかっており、結果的に「風営法がダンスを規制する」という状況ができ上がっています。

そして、警察は2010年頃から大阪を始め日本各地で風営法の「ダンスをさせる営業」上の理由による実際のクラブの摘発を始めました。本来は「ダンスをさせる営業」の「行われ方」によって発生する諸問題を抑制するためのはずの規制が、ここに至り「ダンスをさせた」こと自体を理由にクラブを摘発するまでになってしまいました。

参考:大阪の老舗クラブ「NOON」が22時前に客を踊らせていたという理由で摘発、スタッフ8人逮捕 BUZZAP!(バザップ!)

つまり、上記コメントによる警察のスタンスからは「ダンスをさせる営業が、適正に営まれれ ば国民に健全な娯楽を提供するものとなり得る」として、「ダンスをすること自体を規制しているものではありません」とされている風営法が、実質的にはクラブを始めとしたダンスをする場所を「いかがわしい営業」ではなく「客にダンスをさせた」ことを理由に摘発するという極めてねじれた現象が起こっています。

現在のLet's Dance署名委員会を始めとする風営法改正の動きでも「ドラッグや売春、騒音や未成年問題を摘発するのであれば『ダンスをさせる営業』ではなく個別の問題についての法律で規制を」という部分がひとつのポイントとなっています。

また、本回答は主には「風営法第2条第1項第4号の政令で定めるダンスの教授に関する講習の実施主体」についてのパブリックコメントとなっており、飲食の提供、客の接待を行わないダンスホール、ダンス教室におけるダンスの教授資格に関する改正への見解が示されています。その中で、男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないヒップホップなどのダンスについての記述があります。少し長いですが引用します。

そもそも風営法第2条第1項第4号において「ダンスホールその他設備を設けて客にダンスをさせる営業」(以下「4号営業」という。)を風俗営業として掲げ、これに所要の規制をしているのは、このような営業は、その行われ方によっては、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたり、善良の風俗と清浄な風俗環境を害し、又は少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれがあるからです。

したがって、社交ダンスに代表されるような男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされているダンスを客にさせる営業は、その性質上、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があり、4号営業として規制対象となりますが、一方、ヒップホップダンスや盆踊りなど、男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないダンスを客にさせる営業は、それだけでは、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるとは言い難く、現実に風俗上の問題等が生じている実態も認められないことから、原則として4号営業として規制対象とする扱いをしていません(ただし、このようなダンスを客にさせる営業であっても、例えば、ダンスをさせるための営業所の部分の床面積がダンスの参加者数に比して著しく狭く、密集してダンスをさせるものなど、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるものについては、4号営業として規制対象となり得ます。)。

よって、指定講習は社交ダンスに関するものに限られませんが、一方、ヒップホップダンスや盆踊りなど男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないダンスを客に教授するための営業は、原則として、4号営業として規制対象とする扱いとはならず、これらのダンスを客に教授する者が指定講習を受けその課程を修了しなければ規制対象となるというわけではありません。

『風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令の一部を改正する政令案』等に対する御意見及びこれに対する警察庁の考え方について」(pdf)より引用


風営法の解説 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)の解説 2条1項4号営業

これはあくまで酒類を始めとした飲食物を提供せず、客の接待も行わない営業形態のため、クラブとは別個に考える必要はあります。ただ、ヒップホップなどの「男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないダンス」であれば、(客の数に対する床面積についての条件はあるにせよ)お酒などの飲食物を出さずに風営法の規制にかからない形で「ダンスをさせる営業」ができると解釈できるかもしれません。

また、「男女がペアとなって踊ることが通常の形態とされていないダンス」は、混み合った状態(基準は曖昧です)でなければ「それだけでは、男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性があるとは言い難」いものであるという警察庁の見解は、3号営業に当たるクラブでのダンスが「善良な風俗を害する享楽的雰囲気を過度に醸成する」かの判断にも影響を及ぼす可能性があります。

もちろんここでは酒類の提供の有無が大きな違いになると考えられます。しかし、ダンス自体に問題がないのであれば、居酒屋、カラオケなどの酒類を提供する店舗が終夜営業を行なっている事実とどのように整合性を取るのかという疑問も発生するため、今後の風営法改正に向けた動きの中での論点のひとつになるでしょう。

ただし、この論点だけに話を限定してしまうとサルサ、タンゴを始めとした男女ペアのダンスの問題が置き去りにされてしまいます。現在風営法の規制によるサルサバーなどの閉店も相次いでいるため、見過ごせる問題でもありません。「ダンス規制」についてはさらに詳細な議論が必要となります。

(Photo by I-5 Design & Manufacture

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