湘南の「海の家での音楽放送全面禁止」に見るクラブと近隣問題と風営法

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湘南の代表的な海水浴場、江ノ島を臨む藤沢市の片瀬西浜海水浴場で今年から音楽放送が全面的に禁止されるというニュースが報じられました。この問題は風営法による摘発や規制ではありませんが、クラブがこれまで抱えてきた近隣住民との問題、ひいては現在論じられている風営法問題とも無関係ではありません。

海の家での音楽放送が全面禁止、片瀬西浜海水浴場で今夏/藤沢:ローカルニュース ニュース カナロコ -- 神奈川新聞社

首都圏に住んでいたら毎年のように海開きや海水浴のニュースでお目にかかる有名な海水浴場の片瀬西浜海水浴場。江ノ島を目の前に臨む絶好のロケーションであることに加え、小田急江ノ島線の終点、片瀬江ノ島駅からも徒歩5分程というアクセスの良さからも有名な海水浴場です。

そのため海開き後、夏休み期間中は家族連れや若者グループなどで文字通り芋を洗うような大混雑になります。海の家も国道沿いにびっしりと建てられており、昔ながらの海の家はもちろん、エスニック料理が食べられるおしゃれなカフェ風から今回問題になっているような完全にクラブと化しているお店もあります。

ビーチサイドで大音量のダンス・ミュージックを流すクラブは海外のビーチでも珍しい存在ではありません。世界的に有名なイビサ島や映画「ザ・ビーチ」にも登場するタイのパンガン島、インドのゴアなど、ビーチツーリズムがクラブシーンと結びついた例はいくつもあります。ただし、これらはあくまでうまく結びついた例。


今回は明らかに近隣住民との間に問題が起こっており、苦情が発生しています。神奈川新聞の記事内には「重低音は海を隔てた江の島や、国道を越えた住宅街にまで響き渡る」「真っ昼間から水着姿の男女が酒に酔って、ふらふらと住宅街にまで迷い込んでくる」「けんかや違法駐車、騒音などによる110番通報は、ひと夏で数百件に上る」との記載があります。これは2010年にアメリカ村が風営法で大規模な摘発を受けた時の理由に被るものがあります。簡単に言えば、お店側が音楽や客をコントロールできていません。

そういった意味で、これらの海の家を管理する立場にある江の島海水浴場協同組合が藤沢市や藤沢署の要請を受けて「音楽放送全面禁止」という自主規制に乗り出したことは評価できる対応と言えます。

組合専務理事の「エスカレートして歯止めがきかなくなれば、条例などで規制が強化されてしまう可能性もある。もし許可が下りなくなって困るのは海の家の経営者。組合員が一丸となって徹底した自主規制で改善したい」との言葉、条例を風営法に、海の家をクラブに言い換えればまさにクラブへの摘発の現状を物語っています。


現在大手メディアでもダンス規制の理不尽さが大きく報じられるようになりましたが、最初の摘発の「理由」とされたのがアメリカ村のクラブ客による傷害致死事件やゴミ、騒音問題などのいわゆる近隣問題。苦情が近隣住民から警察署に入り続け、それに対応して警察が動いた形でした。

今回、江の島海水浴場協同組合は苦情を受けた警察や市当局からの要請に素早く対応し、自主規制を行うことで海の家の存続を保とうとしています。クラブシーンがこれまで近隣住民からの苦情に対してどのような態度を取ってきたのかに関しては(地域によって対応は違ったにせよ)自省の余地はあるでしょう。

風営法改正を目指すLet's DANCE署名委員会とLet's DANCE法律家の会の見解としても、風営法改正の方向性について「ダンスを規制対象にするのではなく、騒音、喧嘩、ドラッグ、売春などの問題が起こればそれぞれ個別の法律で対応すべきだ」との立場を取っています。

また、ダンスをさせる営業をする経営者による同業者団体を作り、行政や警察と個々のお店との間に立ち運営のガイドラインを設けて自主規制をするべきではないかとも繰り返し提案されています。

この湘南の例で言えば、実際にけんか、違法駐車、騒音といった触法行為が発生し、近隣住民との間でトラブルが発生している以上、それぞれに対応する法律で取り締まり、さらなるトラブルを避けるために全体として自主的な基準を設け、規制を行うということになります。

もちろんクラブは音楽を鳴らさなくては営業にならないのでそのまま当てはめるわけには行きませんが、トラブルを起こさないためにどのようなガイドラインを定めてコントロールするのか、そのためにはどのような組織づくりが必要かなど、今回の事例は非常に示唆に富んでいます。

「ダンス規制」の問題のゴールは「風営法からダンス規制の記述をなくすこと」では断じてありません。渋谷区議会の意見書にあるように「多くの国民の愛好する趣味」であるダンスを、これからもずっと踊り続けられる国にすることです。

印象論だけではなく実際にダンスの場でこのようなトラブルが起こっている以上、解決への道筋を付けずに放置すれば風営法改正への理解は得られにくくなりますし、仮に風営法が改正されてダンス規制がなくなったとしても、暴力や騒音を始めとした触法行為の現場であるという評価と現実は残ります。つまりは、これは風営法改正の次に待ち受ける「踊り続けるため」に考えなくてはならない問題です。

Let's DANCEの署名は15万筆を超え、4月中には風営法改正を求める議連が発足する動きもあります。まさに法改正の表舞台に立とうとする今こそ、クラブに関わる全ての人がダンスの場をどのように維持し、コントロールしていくかのヴィジョンを表明するときなのではないでしょうか。



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