【判決文リンクあり】NOON裁判報告集会・記者会見レポート、大阪地方裁判所はいかにダンス営業規制を判断し無罪判決を言い渡したか

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NOON裁判に無罪判決が出された後に行われた報告集会、記者会見にてこの事件に対して大阪地裁がどのような判断を示し、無罪となったのかが報告されました。レポートします。

【速報】風営法のダンス営業規制で摘発されたNOON裁判に無罪判決 BUZZAP!(バザップ!)

【追記】
NOON裁判の判決文全文が公開され、NOON裁判支援サイトに掲載されていますのでリンクを追記します。本記事の解説と併せてぜひご一読下さい。

NOON裁判 無罪判決全文

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大阪地方裁判所での無罪判決の後、隣接する大阪弁護士会にて判決に関する報告集会・記者会見が実施され、無罪を勝ち取った元NOONオーナーの金光正年さんとNOON訴訟弁護団、裁判で学者証人として証言台にも立った高山佳奈子京都大学教授らが出席し、判決についての報告を行いました。


冒頭で挨拶した金光さんは「目的は風営法のダンス営業規制の法改正。この(無罪という)結果をもって、さらに運動していきたいと思います」と述べました。


続いてNOON訴訟弁護団の西川研一弁護団長から弁護団声明が読み上げられました。その中で大阪地裁の判断について

「裁判所は、風営法ダンス営業規制の趣旨を『風営法2条1項3号の文言に形式的に当てはまるのみならず、具体的な営業の態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸し出し、単に抽象的な可能性にとどまるのではなく、わいせつ行為の発生など、性風俗秩序を乱す具体的なおそれがある営業を規制することによって、善良な風俗及び清浄な風俗環境を保持し、青少年の健全な育成を保護する目的』と限定的に解釈すべきであることを明言した」


と指摘。さらに大阪地裁がこの趣旨に基づいて

「金光氏が経営に携わっていたNOONの営業実態について、『お客さんの行っていたダンスそのものは、それだけでは性風俗秩序を乱すおそれのあるものとはいえない。DJらの演出も、音楽や映像を使って単に盛り上がっている域をこえていたものとは認められないし、露出の多い服装を煽るなど、ことさらにわいせつを煽るような演出がされていたとも認められない』と認定して、NOONが、風営法の規制対象にあたらないものと判断した」


ものであるとし、

「本判決は、風営法の規制趣旨を限定的に解釈すべきことを明らかにしたものとして、歴史的意義を有するものと確信する」


として裁判所の判断を評価し、敬意を表すると述べられています。さらに風営法を根拠にクラブを摘発してきた捜査機関の基準の杜撰さにも触れ、こうした原因の大元が

「ダンスに対する社会の評価が大きく変わり、社会や文化のありようが変動しているにもかかわらず、終戦直後の混乱期の価値観を引きずり、曖昧な根拠で人を罪に問う風営法の規定のいい加減さにある」


とします。そして大阪府警察を始めとした捜査機関に対し

「もはや、現行風営法を用いて、クラブを一律にいかがわしい営業とみなし、摘発することは許されない」

「既に規制根拠を失っていることが明らかな現行風営法に基づき、クラブを摘発することは許されないことを認識し、今後、二度と不当な捜査・摘発を行わないよう強く求める」


と強く求めています。さらに風営法の改正問題にも触れ

「本判決によって、不合理さが明らかとなった現行風営法を速やかに改正し、ダンスを指標として性秩序を統制しようとする時代遅れの規制を速やかに撤廃する」


と結んでいます。

弁護団声明全文は以下サイトから閲覧できます。

NOON TRIAL SUPPORT 無罪!!!

次に水谷主任弁護人からの判決の解説が行われました。

判決が風営法が憲法の表現の自由、営業の自由に抵触しないものとしながらも敢えて憲法21条、22条、31条に言及した上で、風営法がこれらの趣旨を踏まえて性風俗秩序の規制という点を限定的に解釈し、その結果NOONの営業形態が風営法2条1項3号の客にダンスをさせかつ飲食をさせる営業に当たらない、あるいは証拠上そうとは認められないという判断をしたと理解をしています。

よって、事実上NOONは風営法に基づき大阪府公安委員会の許可を必要としない風俗営業店ではないということを、少なくとも証拠上そうとは認められないと明言しました。

弁護団としても、憲法21条1項まで踏み込むかは予想しがたいところだったが、クラブ経営者のイベントの演出、企画運営など、お客さんが踊るダンスについても場合によっては表現の自由の保証範囲に入る場合が否定できない、場合によっては保証の対象になり得るというところまで踏み込んだことは、我々の常識に則った健全な判断だと高く評価します。


また、この解説を受けて刑法学者である高山佳奈子京都大学教授からのさらなる解説が行われました。

今回の判決は平成24年12月に最高裁判所が公務員の政治的行為に関して出した無罪判決の枠組みをそのまま適応したものです。すなわち、危険があるかどうかということを、単に抽象的、観念的に判断するのではなく、実質的に判断しなければならないというもの。

そして合憲限定解釈という判断手法を取ったわけですが、法律そのものが全面的に無効であるという判断はしませんでしたが、これは事実上9割方違憲であると宣言したのに近い内容であると思います。従って、今回の無罪判決について検察側が控訴する可能性はあるけれど、今回の判断を覆すことはできないと思います。

判決のいくつかの重要な点として、ダンスの営業規制という法律が、職業、営業の自由を制約するというものであるだけでなく、表現の自由を制約するものであるということも言っています。そしてその表現の自由の中にはダンスそのものを通じて表現活動を行う自由も含まれるし、音楽、映像などの演出、あるいはそれらの組み合わせによって表現活動を行うものも含まれることを明言しました。

そしてこのような憲法上保証された自由を制約するためには、合理的な目的があることが必要であるとしています。この結果も大変重要な判断が出ております。すなわち、薬物乱用のおそれや騒音、振動といったものは、全て他の法令によって規制されているものであって、今回問題になっているダンス営業規制とは関係がないということを断言しました。従って、ダンス営業規制は性風俗秩序の維持が唯一の目的であるということをはっきり言っています。

そしてわいせつ行為が行われる危険、性風俗秩序を害する危険が実質的に認められるものだけが無許可営業罪の規制の対象になり得るという判断をしています。

結局この判断を当てはめると、無許可営業罪が適応できるのは、事実上は売春防止法違反に近いような態様で行われるような行為、公然わいせつ罪に近いような態様で行われるような行為に限られることになるように思われます。

その場合も、ダンス自体の態様もありますし、お店の雰囲気、演出の様子、露出度の要素などを全体として考慮した上で、性風俗秩序を害する恐れが実質的に認められるかどうかという基準を適応するということを言っています。よって、NOONで行われていた行為が全くこれに当たらないことは明らかです。

そしてこの合憲限定解釈というのは性風俗秩序を害する恐れ、わいせつ行為を招くおそれが実質的に認められるかどうかを一般人でも判断できるような場合でなければいけないと言っています。普通に行われるものであれば、ペアダンスなどもこれに含まれないことは明らかですので、極一部のみが合憲として残ると判断されたのではないでしょうか。


こうして、曖昧で杜撰であった風営法のダンス営業規制に対し、司法の立場からあくまで実質的かつ具体的な目的のために限定的に適用されなければならないという判断がくだされ、その判断に基づき、NOONの営業は風営法の規制対象とならないことまでもが明らかにされました。

この判決はただ無罪であるだけにとどまらず、風営法のダンス営業規制に対する法改正に向けた非常に大きな一歩であると共に、現時点での日本中のクラブへの風営法による摘発に対しても大きな影響を及ぼすことは間違いありません。


ただし、この判決には気になるところがあるのも事実。ここで言及された性風俗秩序の維持がクラブシーンにどのように影響するのか、次回考察します。

NOON裁判無罪判決の中で示されたダンス営業規制の目的とされる「性風俗秩序の維持」のクラブシーンに与える影響について BUZZAP!(バザップ!)

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