法改正のその先へ、クラブとクラブカルチャーを守る会の「風営法改正の現況に関する報告会」で報告されたこと

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8月13日、クラブとクラブカルチャーを守る会がめまぐるしく状況が変化し続けている風営法改正の現状に関する報告会を開きました。現時点でのクラブシーンと風営法を巡る最新の状況はどうなっているのか、レポートします。

蒸し暑さの残るお盆の東京、青山生涯学習会館のクラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)の主催する「風営法改正の現況に関する報告会」にはオーガナイザーやDJ、アーティストやクラブ情報に関わるメディアなど、関係者が集まり、風営法改正に向けた動きの現状の共有が行われました。

クラブとクラブカルチャーを守る会  去る8月13日、青山生涯学習会館にてクラブとクラブカルチャーを守る会(CCCC)主催の報告会が開かれ...

この報告会で共有された内容をまとめていきます。

◆そもそも風営法の問題とは何か?

「ダンス」と「飲食」を同時にお客さんに提供するためには風営法の3号営業を取らなくてはいけない。そうすると、18歳未満は時間帯に関係なくNG、さらに一部地域を除き0時までしか営業できない、営業場所も制限されてしまうなど、多くの制約が課せられる。

これは戦後の混乱期にダンスホールで売春が行われていたためにできた制限であり、現状に則さなくなっていて、文化としてもビジネスとしても発展してきているダンスに関わるシーンの成長を阻害している。

◆風営法改正の現状はどうなっているのか?

ダンス文化推進議員連盟(以下、ダンス議連)による議員立法が試みられたが、自民党の内閣部会などでの反対意見によって修正を余儀なくされ、結果的に6月5日未提出で通常国会が終了している。

その後警察庁主導のもと、閣法という内閣提出の法案が作成中であり、秋の臨時国会への提出を目指している。こうした形での立法ではダンス議連の議論が反映されず、却って規制強化になるかもしれないという懸念が払拭できない。

秋の臨時国会での提出が行われれば、衆議院→参議院→奏上→公布という流れになる。現時点のニュースで風営法改正が決定したかのように楽観的に考えている人もいるが、現状では法案提出もされていない。

◆最短での改正は?

秋の臨時国会で成立しても1年程度の移行期間を定めたいとされる可能性があり、施行されるのは公布から1年後程度になりそうな見込み。ただし、施行までにクラブに関わる何らかのトラブルがあれば、アンチの意見が躍進してくる可能性もあり得る。


◆ダンス議連の風営法改正案の流れは?

最初に提出されたダンス議連案は、規制が緩すぎるという反対派の声が上がった他、警察からの待ったもあった。議連案はダンスと飲食を提供する「ダンス営業」というくくりをやめようというもの。9.5平米サイズの店で営業OKとして、営業場所もどこでも問題無いとした。

これはダンスが国際的な文化でもあるので解放しようという考えに基づいており、小さなバーやレストランでも踊れるようになる。よって、小さなDJバーの経営者、サルサやタンゴなどのダンスを踊れるレストランの経営者、小バコが支持した。

しかし、この議連案では、六本木などで実際に見られるような、大バコに行列ができて騒音やゴミなどで近隣地域に迷惑をかけるタイプの問題を解決できない。

議連は反対意見を汲んで修正案を作成したが、こちらは厳しすぎるとして提出されなかった。修正案では「六本木のクラブのようなものがあちこちあっては困る」という意見から、商業地域の一部の限定された場所でやるべきとされ、現在の風営法では営業できている場所でもダメになる可能性もあった。店のサイズは現行法通り66平米とされた。こちらの修正案に対しては、風営法を取得しているクラブオーナーが支持していた。

この段階で通常国会への提出が見送られ、警察庁主導の閣法が作成される運びとなった。

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◆閣法の風営法改正案の目指す方向性とは?

自民党は経済を中心として考え、東京オリンピックを見据えて風営法改正を行おうとしている。美術館やホテルなどがDJパーティをやりたいけれど風営法があるから今はできない。大企業もコンプライアンスで風営法の許可を取っていないパーティの(とっていても場合によっては)スポンサーになれない。それらができるようになれば経済はさらに回っていく。そうしたビジネスの参入を促す目的での改正という発想。

一方、警察庁としては騒音やゴミ問題をはじめとした近隣への迷惑、さらにはドラッグの温床というイメージがあるため、法改正はやりたくない。法改正で規制が緩めばいろいろな人が参入してよからぬことをやるのではないかという危惧があり縛りをかけたいという思いがある。

これまで20年やってきたクラブは大丈夫だとしても、やっていいということになったら新参者が防音設備も何もなくぽんとクラブを作ってしまい、それによって問題が起きる可能性がある。だからクラブをどこにでも作れるようにしたくない。

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こうした思惑の中での折衷案として、全部同じ規制にするのは無理があるため「営業の形態によって規制を段階的に変えても良いのではないか」という考え方が有識者会議のヒアリングの中で提示された。

これはダンスと飲食を組み合わせた形態の店として、ダンスの踊れるレストラン、DJの入るバー、ナイトクラブなどで営業の内容と制約を変えていくという方式。例えばレストランでは大きな音は出せない、Barでは大きな音は出せても照明設備を使えない、クラブは音や照明への制限が少ない代わりに営業できる場所が制限される、などとする規制方法。

これは、7月31日の有識者会議にてダンス文化の持つ文化面、経済面における潜在的な可能性を引き出し、世界の最先端を行く、魅力ある国際都市を主体的に形作るため、多種多様な業界により構成されるオープンネットワークCreative Music & The Culture Open Network(CMC)からの要望として出されたもの。この会議の議事録、は

7月31日に開催された警察庁有識者会議「風俗行政研究会」の議事録と各ダンス関連団体からの提出資料、警察庁からの配布資料が公開されました。 ? Medium

風営法改正問題を「クラブ」だけの話として捉えて考えると、バーのような小バコと大バコではやってることがばらばらなので矛盾が生じてしまう。内部で意見が統一されていないと規制緩和には向かわないので、クラブをしっかり定義しつつ、ダンスと飲食を提供する営業自体への規制は緩める方向で要望していく必要がある。

◆クラブ側に求められているのは?

ダンス議連からは風営法改正にあたって、クラブ事業者も業界団体を作って警察と話ができる体制を整えて欲しいとの要望がある。

これを受けて東京の風営法3号許可を取っている団体が加盟する「日本ナイトクラブ協会」が設立された。また、風営法の許可を取っていないDJバーなどのクラブに近い業態の店が参加する「JMBA(日本音楽バー協会)」も設立している。

これらはどちらも近隣地域の住民に迷惑をかけず、溶け込むための自主規制を始めとした諸活動を行うための事業者団体。

だが、現時点で警察庁は「クラブの自主規制は信じるに値しない。違法営業している人たちが何を言っても納得できない」としている。

◆クラブ側の問題の在処とは一体何なのか?

警察は近隣住民からの要望として、クラブから出てきた人の騒音、ゴミ、たむろ、吐瀉物などへの苦情、いわゆる近隣問題があるとしている。大阪のアメ村は規制緩和反対の署名を提出済み。また、違法薬物が使われているというイメージは根深く、現在行われている有識者会議でも危険ドラッグの温床なのではないかという疑いも出ている。

実際に発生している苦情とクラブという存在にこびりついたイメージの両方が問題となっている。

一連のクラブの問題の発端は2010年の傷害致死事件。大阪アメ村で大学生が19歳男性に殴られ、従業員は4日後に死亡した。こうした事件を受けても十分な自己規制に向かわなかった態度が社会に向き合う姿勢がないことを印象づけることになっているのではないか。

「パチンコもカラオケも業界団体を作っていて、警察との窓口として機能させている。クラブはなんで表に出てこれないんだ?業界団体が作れないんだ?」という疑念がある。

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このように、風営法のダンス規制問題は、既に風営法が改正されるかどうかの段階は終わっており、どのように改正されるか、というフェイズに入っています。ダンスを規制することがおかしいかどうかの議論ではなく、規制緩和を望むクラブを含めたダンスに関わるシーン全体が将来へのどのようなヴィジョンを提示し、それに向けて必要な業界団体の設立や対外アピールなどの現実的なアクションを考え、実際に動いていく段階にあります。

報告会で名前の上がった「日本ナイトクラブ協会」「JMBA(日本音楽バー協会)」は東京中心の事業者団体ですが、もちろん風営法改正は東京だけの話ではないので、全国的にこうした団体の設立なり加盟は必要となってきます。

また、今回の報告会を主催したクラブとクラブカルチャーを守る会のようにクラブ事業者とアーティストやDJが連携する形で自主ルール策定や問題解決に取り組む団体も、東京以外では大阪や福岡など一部の地域で活動はしていますが、まだまだアーティストやDJをはじめ、クラブファンを取り込む形で広まっているケースは稀です。

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踊ることは悪くない、クラブは素晴らしい文化だと言ってみても、実際に近隣問題は発生していますし、クラブに行っていない人のクラブへのイメージは未だに現実とは激しく乖離しています。報告会でも話題になっていたのがちょうどこの日に公開された以下の漫画。

【まんが】行ったことないから想像で適当に描いたクラブのワンナイトラブ オモコロ

クラブに行ったことのある人にはどのコマを読んでも荒唐無稽なギャグでしかありませんが、クラブを知らない人のクラブ観は多かれ少なかれこうしたネガティブでステレオタイプなイメージに彩られています。

クラブに関係する事業者やアーティスト、オーガナイザーはもちろんクラブに遊びに行くお客さんがこれらの実際に起こっている近隣問題の解決やこびりついたイメージの払拭を行わない限り、少なくともその姿勢を明確に打ち出していかない限り望む形での風営法改正は行われないと思ったほうがよいでしょう。

以前からBUZZAP!誌上で述べているように、風営法改正は決していかなる意味でもゴールではありません。そしてスタートラインでもありません。クラブの抱える問題をどのように解決し、自主ルールを策定して守りつつクラブとクラブカルチャーを発展させていくかということは風営法が変わっても足を止めることではありませんし、改正を待たず今から動き始めていなければならない話です。

クラブに、もしくはダンスに対してどのような立ち位置であれ関わっているならできることはあるはず。これからがまさに正念場です。

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