二審も無罪となったNOON裁判、一審判決との違いと風営法改正への展望

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昨日大阪高裁が控訴棄却の無罪判決を言い渡したNOON裁判。しかし同じ無罪ですが大阪地裁の出した一審判決とは異なっている点があります。違いについて比較検討してみます。

「無許可で客を踊らせた」として風営法違反容疑で摘発された大阪梅田の老舗Club NOONに対する裁判、いわゆるNOON裁判が昨日控訴審を終えました。結果はお伝えした通り控訴棄却の無罪判決。

【追記あり】風営法ダンス営業規制のNOON裁判控訴審で無罪判決、一審判決の解釈に批判も BUZZAP!(バザップ!)

ですが、大阪地裁の一審判決での風営法の解釈とは違う部分も存在しています。ここでは控訴審の流れから始め、ふたつの判決のどこがどう違うのか。高裁は地裁の判断に対してどのような批判を加え、自らの解釈を行ったのかについて比較し、今後の法改正への流れも踏まえた上で検討してみます。

◆控訴棄却について
まず、今回の控訴審は検察側の控訴によって争われることとなったもの。検察側の主張としては風営法3号営業の「客にダンスと飲食をさせる営業」は一律・形式的に公安委員会の許可が必要であるとし、さらにダンス営業規制は一審判決でその目的とされた性風俗秩序の維持と青少年の健全育成に留まらず、違法薬物の蔓延、窃盗や傷害などの粗暴犯などの夜の繁華街のあらゆるトラブルの防止が目的と拡大解釈しました。

これに対して大阪高裁は控訴棄却の判決を言い渡したというのが大筋の流れとなります。

◆一審判決との相違点
控訴棄却で無罪という判決でしたが、大阪高裁は一審判決をそのまま支持した訳ではなく、いくつかの点で批判を加え、独自の判断を示しました。注目される違いは大きく分けて2点あります。

まず第一に、3号営業の目的について。検察側が主張したような性風俗秩序の維持と青少年の健全育成だけではない、夜の繁華街のあらゆるトラブルの防止が目的という解釈を退けつつも、一審判決が3号営業とは無関係であるとした薬物乱用、窃盗、騒音などについては風俗環境を維持するための一要素として考慮できるとしています。

しかしそれは「あくまで副次的に」としており、それらを直接目的とした法律が存在する以上そちらで規制すべきとの立場となっています。

第二の点として、規制対象営業が再定義されました。一審判決はダンス営業規制の趣旨を「風営法2条1項3号の文言に形式的に当てはまるのみならず、具体的な営業の態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸し出し、単に抽象的な可能性にとどまるのではなく、わいせつ行為の発生など、性風俗秩序を乱す具体的なおそれがある営業を規制することによって、善良な風俗及び清浄な風俗環境を保持し、青少年の健全な育成を保護する目的」と限定的に解釈すべきであるとしました。

しかし大阪高裁は、実際に「性風俗秩序を乱す具体的な恐れがある営業」かどうかは営業が始まってからでなければ判明せず、許可制という形態にそぐわないと批判。では事前にどのような営業が規制対象となるかを判断する際、規制対象となるダンスとは「男女が組となり、かつ身体を接触させることが通常であるようなダンス」としました。

つまり、社交ダンス、ラテンダンスのようなペアダンスと呼ばれるダンスについては公安委員会の許可を要すると解すべきだとの判断を示しています。

◆現行の風営法のダンス規制の意味ついて
大阪高裁は上記のような判断を示していますが、判決の中で昭和23年に制定された風営法によるダンス規制の意味についても触れています。

制定当時のダンスホールで女性従業員に寄る売春が行われていたため「客にダンスと飲食をさせる営業」の規制が求められたとしながら、その後マンボーダンス、ジャズダンス、ヒップホップダンスなどの男女がペアとならないダンスが主流となっていったこと、ダンスホールでの売春という状況そのものがなくなっていったこと、ダンスが健全な娯楽として社会に受け入れられるようになっていったことなどを挙げ、現在ではその指標を用いることが時代遅れで困難になっており、不適当であるとしています。

これはLet's Danceを始めとする風営法改正運動の中でも繰り返し主張されてきたことであり、大阪高裁がこの社会の変化とダンス規制の意味の希薄化について言及したことは非常に大きいと言えます。

ペアダンスが3号営業の規制対象とされたことは意外でしたが、改めて現行の風営法での「客にダンスと飲食をさせる営業」という指標の意味が時代遅れとなり希薄化していることが示された今回の高裁判決。今年の通常国会で再提出される風営法改正案の強力な後押しになったことは間違いありません。

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