ダンス規制もなくならない?現在の風営法改正案は危険な「改悪」になるとして緊急オンライン署名が開始

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今国会で成立すると見られている風営法改正案がこれまで以上に広範で恣意的な規制を許す危険なものになるとして緊急の署名運動が始まっています。詳細は以下から。

現在開かれている通常国会で成立が見込まれている風営法のダンス規制を見直す改定案ですが、風営法のダンス規制を争うNOON裁判をサポートするNOON TRIAL SUPPORTとダンス規制問題に当初から取り組み15万筆に渡る署名を集めたLet's Dance署名推進委員会がその改正案の危険性を指摘し、共同で緊急のオンライン署名を開始しています。いったいどういうことなのか、解説します。

【風営法改正法案の提出にあたってレッツダンスよりの声明文】 - Let's dance 署名推進委員会


キャンペーン ・ 国会 NOON訴訟判決を活かした風営法改正を求めます! ・ Change.org


まず、今回の改正の目玉として挙げられているのは、ナイトクラブやDJバーなどに対して「ダンスによる規制」を行わなくするということ。これは一見大きな前進に見えるのですが、そこで問題になるのがBUZZAP!でも先日取り上げた「遊興」という言葉です。

改正目前、風営法はどのように変わるのか、そして「遊興」とは何なのか? | BUZZAP!(バザップ!)

今国会でダンス議連の秋元司議員の「遊興とは何か?」との質問に対すし、警察庁の辻生活安全局長が「警察庁の想定する『遊興』」について回答しているのでここで再掲します。

「遊興」という擁護は一般には「遊び興じる」という意味で、法律上では現行法でも既に使用しています。風営法の規制の対象となる「遊興」は「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」と解釈しています。具体的には音楽を流して不特定の客にダンスをさせる行為、不特定の客にダンス、ショー、演芸等を見せる行為、歌、バンドの生演奏を不特定の客に聞かせる行為、のど自慢大会等の不特定の客が参加する遊戯、ゲーム、競技等を主催する行為がこれに該当するとして警察庁のサイトでも公表している。


先にも指摘したように、遊興とは「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」の全般を指すなど非常に広範で曖昧、しかも具体例として「音楽を流して不特定の客にダンスをさせる行為」と回答しているため、ダンス規制がそのまま残る可能性が濃厚です。

また、それ以外に挙げられている例を見ると「不特定の客にダンス、ショー、演芸等を見せる行為、歌、バンドの生演奏を不特定の客に聞かせる行為」はジャズバーやライブハウスなど、「客にダンスをさせる」ことが想定されていない店も規制対象に含まれる可能性があります。

それ以外にも「のど自慢大会等の不特定の客が参加する遊戯、ゲーム、競技等を主催する行為」などとあり、営業者が飲食の提供以外の企画を行った場合、それが即遊興であると判断されてしまう恣意性を非常に強く含んでいると言えます。

NOON裁判などで積極的に風営法改正問題で活動している高山佳奈子京都大学教授は「これはうどん踏んでるだけ!」だったテクノうどんさえも「営業者の積極的な働きかけにより客に遊び興じさせる行為」なので規制対象になるということだと非常に分かりやすく指摘しています。

また、高山教授はブログの同ポストの中で、警察庁が「法律上では現行法でも既に使用しています」としている「遊興」の対象について以下のように指摘しています。

本来、法律上の「遊興」とは、旧「遊興飲食税」の対象となる「芸者遊び」をさしていました。
現行法で「遊興」概念を用いている更生保護法も、芸者遊びなどを想定し、これを「浪費」を伴う活動としています(51条2項1号)。
そうだとすれば、改正法が成立しても、「遊興」はそのような意味で解釈されなければなりません。

高山佳奈子(京大職組委員長)のブログ 風営法の規制強化を許すな!より引用)


国会答弁で辻生活安全局長は現行法で「遊興」がどのような局面で、何を対象として使用されているかについては述べていなかったため、単に既存の妥当な考え方だと受け止められる可能性があります。

しかし、現行法では高山教授の述べるような「芸者遊びなどを想定し、これを『浪費』を伴う活動としています」とされている以上、この「遊興」をナイトクラブなどの営業に無批判に適用することは不適切と言わざるを得ません。

これに加え、今回の改正案でクラブの多くが当てはまることとなる「特定遊興飲食店営業」と呼ばれる区分は許可制になるとされています。これは届出制となっているバーや酒場などの深夜に酒類を提供する「深夜酒類提供飲食店営業」と同様の業態であるにも関わらず不公平な扱いであることが指摘されています。

特にその区分を分ける「遊興」が非常に曖昧で恣意的な解釈がいくらでも可能であり、しかも現行法で芸者遊びなどを対象に用いられている言葉であることから、これらの飲食店の区分を分ける根拠は薄弱と言うしかありません。

また、その現行法ですら「深夜遊興の禁止」の規定に対する刑事罰がないにも関わらず、改正案では刑事罰を設けるとされています。これを規制強化の改悪と言わずして何と言えばよいのでしょうか?

NOON TRIAL SUPPORTとLet's Dance署名推進委員会はこの署名において、風営法改正案のあるべき姿を「国民的コンセンサスやNOON訴訟判決の立場を生かした改正」にすべきであると主張します。

現在NOON裁判では1審の大阪地裁は「客にダンス及び飲食をさせる営業」である風営法3号営業の規制対象を「性風俗秩序を乱す具体的なおそれがある営業」であると限定的に解釈し、2審の大阪高裁も「すべてのダンスが3号営業の要件となりうるダンスに当たらない」として共に無罪判決を言い渡しています。

二審も無罪となったNOON裁判、一審判決との違いと風営法改正への展望 | BUZZAP!(バザップ!)

つまり「客にダンスをさせるナイトクラブなどを一律に風俗営業での規制対象とすることは適当ではない」と判断しているわけです。

しかし改正案では真逆の方向性となっており、「遊興」によってナイトクラブのみならず、ライブハウスなどの広範囲の業種を刑事罰まで新たに設けて規制しようとしており、これはNOON裁判で司法が示した判断に真っ向から対立するものとなっています。

風営法改正運動は「ダンスを規制要件にするのはおかしい」「もはや時代遅れのルールになっている」というところから出発しており、2020年の東京オリンピックをも念頭に政府の規制改革会議が議論を繰り返し、70名余のダンス文化推進議員連盟が結成され、「問題事象はダンスが原因でなく、個別の法律で取り締まろう」とのコンセンサスを作り出してきました。

【追記あり】「ダンス営業を風俗営業対象外に」規制改革会議が提案へ、風営法改正に大きな前進 | BUZZAP!(バザップ!)

こうした司法、行政、立法という三権の全てが合意し、民意と時代性を組み上げてきた改正を警察庁が捻じ曲げ、あまつさえ規制強化を計ることは全くもって認められるものではありません。

NOON TRIAL SUPPORTとLet's Dance署名推進委員会は以下の3点を改正案に盛り込むべきとして強調します。

・「深夜遊興規定」の撤廃、あるいは定義の明確化で規制の拡大を抑えること
・「許可」でなく「届出」とすること
・許可要件や立地規制が現在営業している事業者の不利益とならないようにすること


今や国民的な娯楽となり、教育にも浸透しているダンス。そのダンスの文化を振興し、東京オリンピックに向けて世界に誇れるようなダンス文化と、それを認め、守り、発展に繋げる法体系を作り上げていくことが大切ではないでしょうか。

署名は以下から可能です。

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