安倍首相も間違えた「難民」と「移民」、いったいどこがどう違うの?

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Photo by Freedom House

国連での安倍首相の記者会見で問題となった難民と移民の混同。全くもって大違いなのですが、では実際のところどこがどのように違うのでしょうか?詳細は以下から。

国連総会で大きな問題となっているシリアやイラクからの難民。日本は970億円相当の支援を発表しましたが、記者会見での安倍首相の答弁が大きな物議をかもしました。

それはロイター通信の記者が「日本が一部の難民を他の国と同じように受け入れる可能性はあるのか?」との質問に対する安倍首相の以下の答えです。動画では3:50から。

今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなけれないけない課題であろうと思います。人口問題として申し上げればですね、我々はいわば「移民」を受け入れるよりも前にやるべきことがあって、それは女性の活躍であり、高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。


安倍首相は「難民」の受け入れについて質問されているのに「移民」についての回答をしてしまっています。難民は英語でRefugee、移民はimmigrantとなり完全に別物なのですが、日本人では安倍首相を筆頭に区別のついていない人が少なくありません。ではどこがどのように違うのか、比べてみましょう。

◆難民とは?
まずWikipediaの記述を見てみると

難民(なんみん、英: refugee)は、対外戦争、民族紛争、人種差別、宗教的迫害、思想的弾圧、政治的迫害、経済的困窮、自然災害、飢餓、伝染病などの理由によって居住区域(自国)を逃れた、あるいは強制的に追われた人々を指す。

Wikipediaより引用)


とされています。つまりは自らの居住区域や国で何らかの問題が発生し、その場で生き延びていくのが困難となって逃れたり、強制的に追われたりした人々のこと。

また、日本も批准している「難民の地位に関する条約(Convention Relating to the Status of Refugees)」(難民条約)」が規定し、外務省発行のパンフレットに記載されている定義ではより狭義の政治難民を難民であると定義しており、それによると

人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの(難民条約第1条A(2)より抜粋)


となります。

◆移民とは?
移民についてもまずは同様にWikipediaを見てみます。

移民(いみん、英語: immigration, emigration)とは、異なる国家や異なる文化地域へ移り住む(移住)する人(英語: immigrant, emigrant)・移住した人々、またそれらの事象を指す。

Wikipediaより引用)


となっており、自分の属する国から別の国や文化地域へ移り住んで仕事をし、生活をする人々のことを指しています。ここでは自国で問題が発生しているかどうかは特に関係なく、自らの新たな仕事や生活の場を求めて新天地へと赴くという選択が行われています。

◆難民と移民の違い、そして難民問題とは?
ここまで見てきたように、移民は自らの意志で仕事をし、生活をする環境の選択肢のひとつとして他国を選ぶ人々のこと。それと比べて難民は、自国内でのやむなき理由によって住む国、もしくは場所を追われた人々ということになります。

そこにあるのは自由意志か、戦乱や迫害による緊急の避難かという大きな違い。難民を受け入れ、生命を脅かす危険から保護するのは、第一義的に「人道問題である」ということが最も大切なポイントです。目の前で大怪我をして倒れている人を助けるのか、見捨てるのかという発想に近いかもしれません。

安倍首相はこの難民受け入れという人道問題に対し、「人口問題」として返答してしまっており、完全に話がすれ違っています。しかもここで難民を「移民」と呼び、女性や高齢者の活躍という、労働力の問題として考えてしまっています。

移民政策について質問されたのであればこれはひとつの見解として成立するのですが、こと難民受け入れに関する質問でのこの返答は「まったく当たらない」と言わざるを得ません。

そしてこうした返答は難民問題という人道問題に対して極めて冷淡な日本というイメージを海外に与えてしまっています。ガーディアン紙は日本は『シリアの難民を受け入れる前に自国民の面倒を見なきゃ』と言った(Japan says it must look after its own before allowing in Syrian refugees)と報じ、質問をしたロイター紙はAbe says Japan must solve its own problems before accepting any Syria refugees(安倍は「日本はシリアの難民を受け入れる前に自分たちの問題を解決しなければならない」と言った)と報じています。

◆日本のこれまでの難民の受け入れは?
外務省が公式に出している難民受け入れの歴史については以下のとおり。

日本は1970年代後半のインドシナ3国(ベトナム・ラオス・カンボジア)からの難民大量流出をきっかけに難民との関わりを急速に深め、1981年に難民条約に加入しました。ベトナム・ラオス・カンボジアの人々を中心としたインドシナ難民の受け入れ事業は、2005年度をもって終了しましたが、これまでに受け入れたインドシナ難民の数は11,319人にものぼりました。

また、1982年に難民認定制度が導入されてから2008年末までの間に、508人の条約難民を受け入れました。さらに、平成22年度からは、第三国定住の枠組みによって、3年間で約90人のミャンマー難民を受け入れる予定です。

外務省 難民問題Q&A PART1 難民とはどのような人たちなのでしょうか? 日本は難民を受け入れているでしょうか?より引用


としていますが、言及のある2008年以降増えることはなく、2012年からは申請者に対する難民認定率は1%を切り続け、2014年には5000人の申請に対して11人となり、認定率ではなんと0.2%まで下がっています。問題になっているシリアからの難民は2014年の3人のみ。

ヨーロッパ諸国が数千人から数万人単位で難民を受け入れているのに対し、ここまで難民が少ない理由は日本政府による「難民」の定義、そして審査が他の先進国に比べて苛烈と言っていいほどに厳しいことが大きな要因です。

また、審査に何年もかかる可能性が非常に高い上に、その間身柄を拘束される外国人収容所の待遇の劣悪さなど、多くの問題をはらんでいます。

前の記事でも引用しましたが、国連難民高等弁務官事務所は「あまりに厳格で、制限的すぎる」が批判し、元国連難民高等弁務官の緒方貞子氏も難民の受け入れくらいは積極性を見いださなければ、積極的平和主義というものがあるとは思えないと批判しているように、日本の難民受け入れはこの上なく狭き門となっており、難民問題への国際社会の結束を訴えるのであれば、まずは自国の現状を変えていかなければリーダーシップを発揮することは難しいでしょう。

(Photo by Freedom House

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