厚労省で最低賃金引き上げの議論が始まるも目標はたったの「時給20円アップ」…ではどうすればいいの?

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Photo by Hiroshi Nishimoto

最低賃金引き上げの議論が始まるも、上昇幅の目標値は雀の涙でしかありませんでした。詳細は以下から。

厚生労働省の中央最低賃金審議会が6月14日に2016年度の最低賃金を決める議論を開始しました。安倍政権が「ニッポン1億総活躍プラン」の中で最低賃金を「年率3%をめどに引き上げ、全国平均で1000円を目指す」としていることから、時給換算で20円超のアップが実現するかが焦点とされています。

◆月収3200円アップに留まる
ただし、仮に20円アップが実現したとしても1日8時間、20日間働いても1ヶ月の収入は3200円しか上がりません。個人消費が低迷し続け、消費増税延期に伴う社会保障の削減も示唆されている現状では、この程度の上昇幅は簡単に呑み込まれてしまうことは十分に考えられます。

審議会に出席した塩崎厚労相は「最低賃金を含めた賃金引き上げを通じ、消費を喚起する」としていますが、最低賃金水準で働く人が750万人にも達しており、最低賃金の全国平均である798円を基準に考えてみると、そうした人の年収は153万円から157万円に増えるに留まります。これで本当に塩崎厚労相の言う「成長と分配の好循環」を達成することができるのかは大いに疑問。

◆アメリカ合衆国の挑戦
アメリカ合衆国では現在次々と最低賃金15ドル(約1600円)への引き上げが進んでいます。アメリカ大統領選で大きな旋風となったサンダース候補が全米での最低賃金を15ドルへの引き上げを公約し、クリントン候補もこれに追随する形となっています。

アメリカ各地で最低賃金を時給1680円に引き上げ。なんと日本の倍! (BuzzFeed Japan)

こうした大幅な最低賃金引き上げが企業にとって人件費の莫大な負担増となり、失業者が増加するとの批判もありましたが、既に15ドルへの上昇が行われているエリアでは失業者の増加などの数字は示されていません。

安倍政権に「国際金融経済分析会合」に招かれた、ノーベル経済学賞を受賞した世界的な経済学者クルーグマンも「最低賃金を引き上げても失業者は増えない」として最低賃金の大幅な引き上げを支持しており、雀の涙のような引き上げ幅ではなく、実効性のある大幅な賃上げが必須。

クルーグマン「最低賃金を引き上げよ!」 労働市場は他の市場と違う。常識を覆した経済学の”知的革命” The NewYork Timesより The New York Times 現代ビジネス [講談社]

◆最低賃金1500円になったら?
以前BUZZAP!で取り上げた「最低賃金1500円」を目指すデモを主催したグループAEQUITAS(エキタス)は先日ツイッター上で「#最低賃金1500円になったら」というハッシュタグで、最低賃金1500円になった時に何をしたいのかというツイートを呼びかけました。

そこで集められたツイートがTogetterにまとめられているのですが、これがなんともささやかにして切実なもの。

AEQUITAS エキタス @aequitas1500 が呼びかけた #最低賃金1500円になったら のまとめ。 - Togetterまとめ

つまり、逆の言い方をすれば最低賃金が1500円になればこれだけの「消費が喚起」されるということになります。十分な分配が起こり、消費が喚起されれば物が売れ、成長が起こるというわけです。特に現在日常生活にも汲々とせざるを得ない低所得層においては、増加した分の多くは消費に回されることとなるためその効果は顕著。

もちろん「最低賃金が2倍近くになれば物価も上がってしまう」という意見もありますが、それこそ安倍政権が目指しながらも達成できなかった物価上昇なので、アベノミクス的に考えてもプラスとなることは間違いありません。また、最低賃金が2倍になれば物価も2倍に…というのはアメリカ合衆国で同様の事例が起きていない以上、無根拠な印象論でしかありません。

なお、最低賃金1500円は中小企業にとって極めて深刻な経営圧迫になるという意見に対してAEQUITAS(エキタス)は、現在大企業に大きく偏っている助成を見直し、中小企業に対して賃金補助をはじめとした手厚い助成を行うべきだとしています。

実際に最低賃金が1500円になったとしても、8時間労働で1ヶ月20日働いた年収で考えると288万円。これは決して高い額ではありません。普通に働いてこの程度の年収を得ることが難しいのであれば、どれだけ景気を刺激しようと喚起されるべき消費の原資が消費者側に存在しないことになります。

富裕層の富が一般人にしたたり落ちるというトリクルダウン理論が竹中平蔵氏にもOECDにも否定されている以上、ボトムアップで「成長と分配の好循環」を作り上げていくしかないのではないでしょうか?

最低賃金「20円上げ」攻防 厚労省、労使議論開始  :日本経済新聞

最低賃金改定へ議論=「20円以上」焦点-厚労省:時事ドットコム

(Photo by Hiroshi Nishimoto


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