あまりにも的外れ、配偶者控除見直しで「女性の社会進出」は進まない

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女性の社会進出を目指し、政府が配偶者控除見直し検討を表明しましたが、あまりにも的外れと言わざるを得ません。詳細は以下から。

自民党の宮沢洋一税調会長が日本経済新聞のインタビューに対し、2017年度税制改正で専業主婦世帯を優遇する所得税の配偶者控除の見直しを検討することを表明し、物議を醸しています。

◆自民党の考える新しい配偶者控除の制度とは?
宮沢税調会長によると、現在の配偶者控除を廃止し、専業主婦世帯だけでなく共働き世帯にも適用する新しい控除の制度を18年1月にも作る案が有力とされています。

現在の配偶者控除制度は妻が働いていないか年収が103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円を差し引くことができ、誰でも受けられる基礎控除に加算されます。この制度は約1400万人に適用されています。

この控除に関しては女性が控除適用を受けるために本格的な就労を控えたり、1年間の収入を103万円以下に抑えるために働く時間を敢えて減らすといった調整が一般的に行われてきました。このことが「女性の社会進出を妨げている」との指摘があり、宮沢税調会長も「女性に社会進出を果たしていただくための後押しも必要になってきている」と見直しの必要性を強調しています。

新しい控除の具体的な制度としては収入の多い夫か妻の所得か所得税額から一定額を控除する案が有力で、妻が年収103万円以上を稼ぐ共働き世帯も対象となる一方、専業主婦世帯も対象から外れることはありません。

宮沢氏は年収要件の検討にも触れており、所得の高い人の控除を少なくし、低い人の控除額を手厚くすることで低所得層の負担増を抑制する方向性です。ただし、現在では控除額が38万円から上がるのか下がるのかも分からないため、どの世帯にとってどの程度負担が増えるのか減るのかは明言できません。

専業主婦世帯の控除額が変わらなければ不満は出ませんが、それでは対象者が増える分、財政を圧迫することになるのでどこまで期待できるかは不透明です。

また、これは見直し案のひとつでしかなく、全く別の形になる可能性もあります。

◆配偶者控除見直し「だけ」しても女性の社会進出は進まない
問題はこの見直しが本当に目的としている女性の社会進出の手助けになるのかということ。これは完全に的外れと言うしかありません。女性が38万円の配偶者控除を受けるためだけに敢えて社会進出を思いとどまっているのだと考えているのであれば、それはあまりに問題を矮小化し過ぎです。

結婚した女性の多くが直面する問題が出産と育児、働く女性であればそれに伴う育児休暇の取得の問題も発生します。現在でも女性が結婚し、出産に絡んで休職することは極めてネガティブに捉えられており、復職が容易でないケースや、そもそも結婚と同時にいわゆる「寿退社」を勧められるケースも少なくありません。

こうした社会の風潮は女性の社会でのキャリアを寸断し、継続的にステップアップしていくことを妨げます。これを「結婚も出産も自己都合なのだから自己責任だ」とするならば、政府の目指す女性の社会進出が前進することは考えにくいと言わざるを得ません。

また、子供が生まれた後に働こうという意志を女性が持っていたとしても、育児休暇に伴うキャリア寸断に加えてのしかかってくるのが保育園の問題。これは今年に入ってから大きなトピックとして扱われてきたため、多くの人の知るところとなりましたが、子供を預ける保育園のない状態で働きに出ろと言われても無理なもの。近所に親が住んでいるような幸運な例外を除けば極めて非現実的な想定です。

もうひとつ忘れてはならないのが介護問題です。現時点で要介護1、2は基本的に在宅介護を行うことになっていますが、現実問題として多くの場合その介護を担うことになるのは女性です。家に要介護者がいる状態で継続的に就労するのは極めて困難なことは想像に難くありません。

政府は「介護離職ゼロ」を掲げていますが、現時点で明確な対策があるとは言えない状態。介護問題が、それに関わる女性の社会進出を阻害する大きな要因となっているケースは少なからずあるはずですが、この辺りのサポートがなければ要介護の老いた父母を家において働きに出るのは現実的とは言えません。

◆ではいったいどうすればいいの?
宮沢税調会長の言う「共働き世帯にも専業主婦世帯にも控除を行う」という案自体は実現されるなら、そしてその控除額が各々の年収の層にとって適切なものになるのであれば否定するものではありません。しかし、それが女性の社会進出の後押しになるかと言えば、ならないと答えるしかないのが現状です。

少なくとも先に挙げた育児休暇に伴うキャリアの問題、保育問題、介護問題などに適切なサポートがなければ、共働きを選択しない、もしくはできない女性が相当数出ることになるのは明らかです。仮にこれらの問題が「現時点で」影響を及ぼさなかったとしても、将来的に子供ができる可能性、親が要介護者となる可能性は決して否定できず、その際に仕事を続けられなくなります。

なお「少子高齢化で働き手が減っているから女性も社会に出るべき」という論調もあるようですが、単に目の前の労働力不足の解決であれば、現在の配偶者控除制度の年収の上限を200万円なり250万円なりに上げることで控除の適用を狙って敢えて働かないという抑制はなくなります。

時給1500円換算で1日8時間、月20日働く計算でも年収288万円なので、現状の賃金体系ではフルタイムで働いても多くの場合控除を受けられることになるため、敢えて働かなかった人が働くようになることで、少なからず働き手は増えることになるでしょう。

配偶者控除見直し検討 自民税調会長が表明  :日本経済新聞

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