【追記あり】従軍慰安婦問題と特別報告者に関する首相懇談の外務省文書が国連公式サイトで否定される→菅官房長官「日本側が発表した通り」と認めず

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これでは「ポスト真実」と呼ばれても仕方がありません。詳細は以下から。

G7タオルミーナ・サミット出席のためイタリアを訪問していた安倍晋三内閣総理大臣が現地時間5月27日にアントニオ・グテーレス国連事務総長と10分間ほど立ち話をした際、グテーレス事務総長から引き出したとされる従軍慰安婦問題と特別報告者に関する言質が国連の公式サイトで全否定されてしまいました。

外務省は5月27日付けで「安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長との懇談」とする文書を公表。それによると、

また、安倍総理から慰安婦問題に関する日韓合意につき、その実施の重要性を指摘したところ、先方は、同合意につき賛意を示すとともに、歓迎する旨述べました。

さらに、安倍総理から、国際組織犯罪防止条約の締結に向けた日本の取組につき説明しました。この関連で、先方は、人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は、必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べました。

安倍総理大臣とグテーレス国連事務総長との懇談 | 外務省より引用)


NHKなど一部の報道機関はこの外務省の文書に基づいた報道を行っていますが、国連は5月28日付けで公式サイトで特派員諸氏へと題された文書を公表。その内容は外務省の文書とは大きく異なっていました。

Note to Correspondents_ In response to questions on the meeting between the Secretary-General and Prime Minister Abe of Japan _ United Nations Secretary-General

短いのでそれぞれの部分を全訳します。まず、従軍慰安婦問題については

「シチリアでの会談の際、国連事務総長と安倍首相はいわゆる「従軍慰安婦」の問題について話し合った。事務総長はこの問題が日韓の同意によって解決されるべき問題であることには賛同した。しかし事務総長は特定の合意に対して意見を述べたのではなく、両国がこの問題の解決の性質と内容について二国間で定めるべきであるという原則について述べただけである。(During their meeting in Sicily, the Secretary-General and Prime Minister Abe did discuss the issue of so-called “comfort women”. The Secretary-General agreed that this is a matter to be solved by an agreement between Japan and the Republic of Korea. The Secretary-General did not pronounce himself on the content of a specific agreement but on the principle that it is up to the two countries to define the nature and the content of the solution for this issue.)」


ということで、グテーレス国連事務総長は2015年12月28日に結ばれた慰安婦問題日韓合意については言及しておらず、原理原則に言及しただけです。外務省はあたかも国連事務総長が日韓合意という特定の合意に「賛意」を示し「歓迎」したとねじ曲げてしまったのです。

また、国連の特別報告者については

「特別報告者に関して、事務総長は安倍首相に対して『特別報告者は独立した立場の専門家であり、人権委員会に直接報告を行う』と説明した。(Regarding the report of Special Rapporteurs, the Secretary-General told the Prime Minister that Special Rapporteurs are experts that are independent and report directly to the Human Rights Council.)」


と独立性が確保されている専門家であることを説明しており、日本政府の述べるような「国連とは別の個人の資格」ではありません。

いずれも別段難しい話をしているわけではありませんし、英語としても高校生レベルの話でしかありません。その場に同席したはずの、難関大学を卒業して国一に合格して外務省に入るレベルの官僚が聞き間違えるようなことがあるはずはなく、つまりは外務省は意図的に国連事務総長の談話を捏造したということになります。

これだけでも外交上極めて重大な問題になりかねませんが、なんと菅官房長官はこの文書が出された後の5月29日にこれらの問題について「日本側が発表した通り」と説明するという全く意味不明な行動に出ています。特に従軍慰安婦問題については「明快に首相から日韓合意について実施の重要性を指摘している。先方は賛同を示すとともに歓迎する旨を述べた」と強調。

東京新聞_政府と国連の公表内容に差 政府、日韓合意で「事務総長が賛意」_政治(TOKYO Web)

菅氏「国連総長は日韓合意に賛意」韓国からは異論:日本経済新聞


なんと、菅官房長官は国連が自らの公式サイトで日本政府の間違いを正したにも関わらず、それよりも日本の言うことの方が正しいと強弁しているのです。

自分が間違ったことを言っておきながら、それを咎められても認めずに自分が正しいと言い張る。小学生でもいけないことだと分かりそうなものですが、いったいどうしてしまったのでしょうか?

国連報道官、日本の説明否定 日韓合意や「共謀罪」の報告巡り:朝日新聞デジタル

【5/31 10:00追記】
上記問題について日本政府は30日、民進党の逢坂誠二衆院議員らの質問に対して「書簡については国際連合またはその機関である人権理事会の見解を述べたものではない」とする驚くべき答弁書を閣議決定しました。

特別報告者については上記のように「独立した立場の専門家であり、人権委員会に直接報告を行う」存在。今回の公開書簡での質問への回答をもって人権委員会に直接報告が行われます。つまり、質問に回答もせず、中身ゼロの「怒りの表現」だけの抗議を行った日本政府の対応も含めて正式に報告されると言うこと。

答弁書では「我が国政府から説明を受けることなく作成されたものであり、誤解に基づくと考えられる点も多い」と指摘していますが、公開書簡は説明を求めて4つの質問を行ったものであり、誤解があると日本政府が考えるのであれば、即座に誤解を解くべく回答しなければなりませんでした。

しかし政府は特別報告者を個人呼ばわりした挙句に「誤解を解く」努力すら放棄して中身のない抗議を行った上にこのような閣議決定まで強行。国連から人権無視のならず者国家であると判断されてもおかしくない燃料を自ら投入してしまったことになります。

政府“国連または人権理事会の見解ではない”答弁書を閣議決定

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