あからさまな失言やデマを垂れ流す政治家はなぜ増えたのか、おぞましいカラクリが仕組まれた「日本型フェイクニュース」の闇

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すぐ訂正に追い込まれると分かっているデマを、「失言」としてわざと垂れ流す国会議員や自称文化人が増えてきた感の強い日本。背景には「日本型フェイクニュース」と呼ぶべきカラクリと闇がありました。

BUZZAP!では先日フェイクニュースの拡散とその「勝利条件」について考察してみましたが、日本に蔓延する「日本型フェイクニュース」の実態に迫ってみます。

◆フェイクニュース大国、日本
世界を駆け巡るフェイクニュースは対岸の火事ではなく、むしろ日本はフェイクニュースに関しては世界の最先端を走っていると言っても過言ではありません。

森友学園公文書改ざん問題で財務省にあり得ない難癖を付けた自民・和田議員を批判した坂上忍が「在日認定」され、Wikipediaが改ざんされフェイクニュース大手・アノニマスポストに拡散された件は記憶に新しいですが、このほんの2ヶ月弱前にもWikipediaの「エンゲル係数」のページが首相答弁の翌日に「重要度低下」と改ざんされています。



匿名の有象無象に留まらず、2月には自称国際政治学者・三浦瑠麗の大阪にテロリスト分子が潜んでいてヤバいというヘイトスピーチや虐殺を煽動しかねないフェイクニュースに関してBuzzap!でも徹底的に批判しました。


大手メディアでも支局長レベルの人物がフェイクニュースで他紙を攻撃する産経新聞という自称「報道機関」が存在しますし、つい先日も「夕刊フジ」の公式サイト「zakzak」でも現民進党に罪を擦り付けるため「官僚の文書『書き換え』疑惑に前例」としたフェイクニュースを流すなど、特に産経系列は枚挙に暇がありません。


健康食品で知られるDHC傘下の会社が作成した「ニュース女子」での沖縄の基地反対派へのヘイト、デマなんでもありの誹謗中傷は、BPOに人種差別と人権侵害であると認定されています。


そして行政府の長である安倍首相本人ですら「福島第一原発の汚染水はアンダーコントロール」や菅元首相が福一事故で海水注入を中断させたというデマを流布しながら反省の色もありません。


2月には佐川国税庁長官への抗議デモに対し、麻生財務相が国会の場で「立憲の指導」とデマを飛ばした挙句に訂正に追い込まれたものの、差別主義者らによるまとめサイト「保守速報」は「【国会】麻生副総理『立憲民主党の指導で街宣車が財務省の前に来たことは承知している」』『立憲民主党の議員も出席していた』」というフェイクニュースを未だに削除もしていません。


当の麻生財務相はTPP11が「締結」されたことについて「日本の新聞には1行も載っていなかった」とマスコミを攻撃してみたものの「実際には署名だけで締結はされておらず、署名式の行われた場所も違い、実際に新聞はしっかり報道していた」という、現実と認知の間に乖離が生じているのではないかと疑いたくなるレベルの発言を現在進行系で行っています。


国を率いる閣僚クラスの権力者や知識人、全国規模の報道機関がフェイクニュースの常連発信者であるという極めて異常な事実は決して楽観できるものではなく、より重く受け取られなければならないでしょう。

◆「日本型フェイクニュース」とは何なのか?
それでは「日本型フェイクニュース」に強く見られる傾向とは何なのか、そしてその勝利条件とは何なのかを考えてみることにします。

上記の例を見れば分かるように、日本のフェイクニュースに触れて多くの人がまず感じるのが「なんで最近、すぐに訂正に追い込まれるような発言をわざとするのだろうか?」ということではないでしょうか?


この大きな目的のひとつは「情報の相対化」です。大量のフェイクニュースをコンスタントに発信することで、そのひとつひとつへのファクトチェックでの対応をリソース的な意味で困難にするということ。

ファクトチェックはどうやってもフェイクニュースの拡散に追いつかないことは研究から明らかになっているのが現状。しかもデマと明らかにされたとしても、一度拡散したフェイクニュースは完全には消え去らずにくすぶり続け、時を置いて再び顔を現します。

直近で最も分かりやすい例として挙げられるのが、台湾地震の際に流れたデマ。過去に当該団体によって否定されたデマが蒸し返されて拡散し、被災者への支援活動に支障をきたすという最悪のケースですが、今なお複数のまとめブログに同一内容が真実であるかのように掲載されています。

台湾地震で「募金が届かない」悪質デマ拡散 名指しで批判され、「法的措置も検討」の団体も : J-CASTニュース


このようなフェイクニュースがファクトと入り交じる状態が常態化すれば、フェイクニュースは「マスコミが報じない真実」という名のオルタナティブ・ファクト(代替的な真実)として普及し、定着してしまいます。

ちなみにフェイクニュースを発信する界隈はしきりに「マスコミは都合の悪いことは報じない、陰謀に満ちたもの」と断じたがる傾向にありますが、これは既存メディアの価値を毀損し、フェイクニュース提供側が世論誘導を仕掛けやすくするためのもの。

そう、つまり真偽にそもそも大した価値は置かれておらず、それどころか「誰もが信じてしまう真実らしさ」すら装わせる必要すらないのです。


分かりやすく言うと、発信側からすれば「菅元首相が福一事故で海水注入を中断させた」「デモは立憲民主党の指導」「大阪にスリーパーセルが多数潜伏している」「基地反対派は中国の手先」という言説が広まりさえすれば、もうその時点で勝ちなのです。

こうしたフェイクニュースが拡散されると、社会は世論誘導に乗る勢力とフェイクを指摘する勢力に分断されます。そして、それこそが「日本型フェイクニュース」の主目的なのです。

だからこそ安倍首相も麻生財務相も産経新聞も「ニュース女子」も三浦瑠麗も「すぐに訂正に追い込まれるような発言」を行い、匿名の一部ネット民やまとめサイトが喜んで拡散するわけです。

朝日新聞による公文書改ざんスクープが報じられた時、大手まとめブログが載せた記事の一部。とにかく朝日新聞の報道が事実でなかったのような印象付けを行うことを最優先にしており、改ざんが事実と分かった今なお、これらの記事は残っています。


お分かり頂けましたでしょうか?「日本型フェイクニュース」とは「誰もが信じてしまうような真に迫ったデマ」ではなく「信じる者と見破る者に社会を分断するデマ」なのです。

◆社会の分断という悪夢
なぜ社会が分断されてはいけないのか?考え方は人それぞれだし「みんな違ってみんないい」ならバラバラでもいいんじゃないのか?そんな声も聞えてきそうですが、分断と多様性の間には十万光年ほどの大きな隔たりが存在しています。

社会が分断されて起こることは多様性の拡大によって起こることとは真逆です。多様性は異質な存在を内包する方向に向かいますが、分断はこれまで同居していたある種同質な存在すらも断絶させてしまいます。

あるニュースが真実かフェイクかという対立では、フェイクだと認識した人間が真実をかなぐり捨ててフェイクを飲み込むことはありません。逆にフェイクを信じ込む人間は「信じたものを否定したくない」ために真実から目を背けてしまいます。


そのようにしてできた断絶は奈落のように深く、フェイクを信じた側がファクトを確認し、真実ではないと気付かない限りは解消されません。つまりこの両者の関係は著しく非対称的なのです。

◆分断がもたらす断絶が蓋を開ける地獄
分断が国民の間に断絶をもたらし、その断絶が何をもたらすのか。ここで起きるのはフェイクと真実による果てしない応酬ですが、それだけではありません。

前記事ではロシアのネット工作に関して、フェイクニュースにはバイラルなり炎上なりの悪意に満ちたタネが仕込まれる事を指摘しました。


悪意に満ち、特定の方向に向けられたフェイクニュースは、触れる人に憎悪や差別を煽り、劣情に火を付け、対象者に攻撃の手を向けさせます。上記の例を見れば分かるように、いずれも単に「デマである」「真実ではない」だけでなく、明に暗に「基地反対派」「菅直人」「民主党」「在日コリアン」などを敵に仕立て上げています。

これらの対象にどれだけ酷い誹謗中傷や、ヘイトスピーチが行われてきたかは改めて指摘するまでもないでしょう。それに留まらず、先日愛国者を名乗る自称保守界隈の活動家が朝鮮総連に銃撃テロを起こしたばかりです。


そして、こうしたフェイクニュースが多数派によって作られ、拡散される場合に事態は極めて深刻なものとなります。現代日本で言えば安倍首相や麻生財務相、そして和田正宗議員を筆頭とした自民党議員らです。

多数派どころか政権からフェイクニュースが繰り出される現代日本では「民主主義」を誤解した「多数派」から抵抗する「少数派」への攻撃が起き、「民意の頂点にいる総理大臣が言ったのだから間違いない」「それでも過半数の議席を持っているのだからこれが日本の民意だ」といった詭弁が弄され、「文句を言う奴は反日売国奴」という攻撃に直結します。身に覚えのある方もいるのではないでしょうか?

このように分断のもたらす断絶はますます深いものとなり、内心の自由すら脅かす共謀罪や「一生派遣」を可能にする派遣法の改悪、「定額(低額)働かせホーダイ」を実現する裁量労働制拡大など、人々の生活・人生設計に深刻な影響を与えるような法案すら、分断された人々がいがみ合っているうちに通過してしまうわけです。

いったいこのような「対立煽り」で得をするのは誰なのか、そして得をする層はフェイクニュースに対し、どういうスタンスかを改めて考えてみましょう。

◆「日本型フェイクニュース」はぽっと出ではない
このような「日本型フェイクニュース」はこのフェイクニュース全盛の情報化時代に突然現れたものなのでしょうか?いいえ、それは全く違います。

例えば三笠宮殿下は生前「偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた」と第二次世界大戦の時代を振り返っています。


撤退を「転進」、全滅を「玉砕」、自爆を「特攻」と言い換えた大本営発表があり、大日本帝国の大義と勝利を最後まで信じ続け、「欲しがりません勝つまでは」「進め一億火の玉だ」と全てを捧げた大日本帝国臣民が存在していたことを私たちは決して忘れてはならないでしょう。

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