国交省「6月から睡眠不足のバスやトラックの運転手は乗務禁止にする」→事業者に逃げ道を与え運転手の負担とリスクを増やすと批判

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結局は運転手個人に責任をなすりつけるだけの結果に終わると大きな批判です。詳細は以下から。

人手不足が極めて深刻になり、それに伴って運転手らがますます過酷な勤務を強いられ、睡眠不足による事故が目立つ運送業界。国土交通省は寝不足を解消して事故の抑制を図るべく睡眠不足のバスやトラック、タクシー運転手の乗務を禁止することを決めました。

ですが、当然ながらこの方針は全く無意味どころか逆効果になるとの批判が相次いでいます。どういうことでしょうか?

◆事業者が「睡眠不足」を確認
国交省は貨物自動車運送事業法などに基づく省令を改め、事業者がドライバーを乗務させてはならない項目に疾病」や「疲労」「飲酒」などに加えて「睡眠不足」を新たに盛り込むことを決めました。

事業者は、乗務前に運転手の健康状態や飲酒の有無などを確認する「点呼」の際に睡眠が十分かを対面などで丁寧に確認し、その結果を記録することが義務となります。同時に睡眠不足についての正直な申告を義務化するとしています。


さて、これによっていったい何が起こるでしょうか?

◆事故の「自己責任化」に一直線
当然ながら運転手は運転しなければ仕事に(もちろんお金にも)なりません。そして事業者も運転手に運転させなければ仕事になりませんし、やるべき仕事ができなければ信用を損ない、大きな損害が発生します。

企業は一定の人員で仕事をしていく以上「今日は寝不足だから運転できません」とその日だけ内勤に回して「めでたしめでたし」とならないことくらいは社会人なら誰でも想像できるはず。

つまり、点呼の際に事業者が「あなたは睡眠不足ですか?」と確認しても運転手側は例え睡眠不足であっても「Sir, no, sir」と答えるしかないのです。その結果起きるのはこれまで同様の睡眠不足での運転です。

そして悪いことに、それで事故が起こっても事業者は「確認したけど睡眠不足ではないと答えたので運転させた」という逃げ道ができ、運転手の「睡眠不足なのに虚偽の報告をして運転して事故を起こした」という最悪の自己責任になってしまうのです。


つまり状況はまったく改善が見込めない上に運転手の負担とリスクだけは増大するため、人手不足の解消どころかむしろ拍車を掛ける結果になることが十分に予測できます。

◆ではどうしたらいいの?
睡眠不足での運転とそれに伴う事故を防ぐために必要なのは何か。それは非常に単純で、真っ先に行うべきは長時間労働の規制と退社から次の出社までに一定の時間を空ける「勤務間インターバル規制」の導入です。

長時間労働が必然的に睡眠時間を削ることは今更確認するまでもありませんが、それに加えてひとつの勤務から次の勤務までに一定時間を空けることを義務づけることで過酷な連続勤務を抑制できます。

個々の運転手がそれでも夜更かしや深酒の結果として睡眠不足となる可能性はもちろん否定できませんが、勤務体系というシステム上の問題を取り除くことで構造的な睡眠不足は大幅に抑制が可能です。

ですが、これらの方針は働き方改革関連法案の対案として各野党が主張しているものの、実際には自民党と維新の会との修正協議によって全企業の99.7%に当たる中小企業への適用が「猶予」されようとしているのが現状。

こうした小手先の対症療法をあれこれと繰り出すのではなく、抜本的に睡眠不足を引き起こす働き方そのものを本当の意味で「改革」する必要があります。

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