【コラム】「給与支払いに電子マネー解禁」がもたらす利便性と危険性

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まるで「賭博破戒録カイジ」に登場するペリカのようだと話題になっていますが、いったいこの解禁によって何がもたらされ、どんな危険があるのでしょうか。詳細は以下から。

◆給与支払いに電子マネー解禁
政府の国家戦略特区諮問会議が12月17日、現行法では認められていない電子マネーによる給与支払いを解禁する方針を決定しました。経済界などとの協議を経ながら制度設計を進め来年度からの実施を目指すとのこと。

電子マネーによる給与支払いが解禁されると、企業は専用のプリペイドカードやスマートフォンの決済アプリなどに給与を入金できるようになります。これは政府の目指すキャッシュレス化の推進に合致しているため、現在主流となっている銀行口座への振り込みに取って代わる可能性も十分にあり得ます。

◆解禁がもたらしうる危険性
反面、プリカやアプリの対応店舗への「囲い込み」が発生する可能性もあります。企業が自社やグループのプリカなどへの支払いを行った場合、使用可能な店舗が限られ、受け取る側の消費行動が実質的に制限される可能性もあります。

自分の今持っているSUICAやTポイントカード、Paypayといったプリカやアプリに給与が入金されると想像してみるとイメージが沸くでしょうか?

加えてキャッシュレス決済に対応していない個人店などの中小店は圧倒的に不利な立場になりますし、プリカやアプリの規格の乱立といった混乱が引き起こされる可能性も少なくありません。

また既に指摘されていますが、電子マネーの管理業者が経営破綻した際に入金済みの給与をどう保全するかという問題もあります。購入した商品やサービスではなく給与そのものが消滅するとなれば、その影響は「はれのひ」や「てるみくらぶ」の破綻の比ではありません。

例えば日本郵船が導入予定の電子マネーは再現金化が可能となっていますが、入金された給与を銀行やATMなどで(少なくとも現在のATM使用料程度の手数料で)再現金化できる仕組みが必須となるでしょう。

◆「外国人奴隷の監視用」ともなり得る
電子マネーでの給与支払いは間違いなくキャッシュレス決済の推進に結びつくことになり、ある種の利便性がもたらされることには異論はありません。ただし上述したような危険性に対し、国として何らかのバックアップなり法整備が行われなければおいそれと同意できるものでもありません。

しかし、そうした文脈からのみこの話題を語れないのが、導入理由として挙げられている「改正出入国管理法施行をにらみ、銀行口座の開設が難しい外国人労働者の利便性を高め、受け入れ基盤を整備するのが狙い」というもの。

まずそもそも論として、人手不足解消のために外国人労働力として受け入れるのであれば、現在難しいとされている外国人の銀行口座の開設を簡便化し、後押しするのが筋です。

銀行口座がなければ与信がなく、融資をはじめとした金融サービスにアクセスすることも困難になります。外国人労働者のそうした不安定な状況を放置しながら「給与入金」のみに特化した代替手段を採用するのは本末転倒と言えます。

そして給与が入金されるプリカやアプリで再現金化ができず、使用店舗が極めて限定されたものになったとすれば、それは「賭博破戒録カイジ」に登場する独自通貨「ペリカ」と同様に機能することは想像に難くありません。

仮に再現金化が可能であったとしても、現金と違って使った先から「足が付く」ことになりますので、いわゆる「逃亡奴隷」の監視用としてこれほど便利なものもありません。

ここでは改正出入国管理法に絡めて外国人労働者の待遇として考えてみましたが、もちろんこれは容易に日本人労働者にも適用できるもの。

ある意味マイナンバー以上に働く人を監視し、縛る存在になりかねませんし、上述したようにそのマネジメントを行うのは電子マネー管理業者という民間企業です。月収や購買履歴といった極めて機微な個人情報がどのように扱われるのか、制度設計を注視しておかなければ非常に怖いことにもなりかねません。

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