聞き取り調査も報告書たたき台も内部のお手盛り、厚労省の統計不正の調査が露骨すぎて大炎上

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国家の根幹を揺るがす大事件のはずですが、厚労省は火消しにしか関心がなさそうに見えます。詳細は以下から。

◆厚労省「毎月勤労統計調査」の統計不正問題
厚生労働省が賃金や労働時間などの動向を調べて毎月公表している「毎月勤労統計調査」で、従業員500人以上の事業所は全数調査するルールだったものの、一部のみ抽出するケースがあった事が判明したのは2018年12月31日の事。

問題が発見されたのは東京都の事業所を対象にした調査で、都内に約1400ある500人以上の事業所のうち、3分の1の500程度のみを抽出して調べていたことが判明しました。

勤労統計は、統計法で国の重要な「基幹統計」と位置付けられており、この時点で調査の信頼性が崩れ去ったことになります。

問題はそれだけに留まらず、この統計不正が2004年から15年間に渡って脈々と引き継がれてきたこと、そして調査手法を正しく装うためのデータ改変ソフトも作成していたことも明らかにされました。

雇用保険や労災保険はこの統計を基に給付水準が決まるため、この15年の間に統計不正によって過少給付されたのは1973万人及び30万事業所のぼり、過少支給の総額は計567.5億円にも上る事が明らかになりました。

政府はこれに対して追加給付を決定しましたが、そのためのシステム改修や事務経費が数百億円かかることになります。事務経費には人件費や相談窓口の委託料、郵送料が含まれており、追加給付に掛かる総額は800億円にまで膨れあがる見込みです。

この中で事務経費は2019年度予算案を組み替えて対応する予定ですが、雇用・労災保険の特別会計から捻出する方向でも検討されています。ただしその財源となる保険料は企業と労働者が支払ったもので、国家機関の不正の尻ぬぐいを事実上民間が負担して行うということになっています。

◆厚労省の調査がお手盛り過ぎて炎上
当然ながらこの統計不正の調査が行われる事になりましたが、調査開始からわずか7日後の1月22日、特別監察委員会は「統計法違反を含む不適切な取り扱いが長年にわたり継続しており、公表数値にまで影響を与えていたことは、信じがたい事実であり、言語道断」と指摘しつつも隠蔽の意図があるとまでは認められなかったと結論付けました。

ただし特別監察委員会の樋口美雄委員長は「厚生労働省所管の独立行政法人」である独立行政法人労働政策研究・研修機構の理事長であることなどから、この時点で既に「第三者による調査とは言えない」との批判が出ています。

そして1月24日、衆参両院の厚生労働委員会でこの問題を巡って閉会中審査が行われました。その中で、厚労省の局長や課長級の20人は監察委のメンバーが聞き取り調査をしていたものの、課長補佐以下の11人には厚労省の職員だけで聞き取りをしており、監察委は同席すらしていなかったことが判明。

また、監察委は東京都の職員らには聞き取りをしておらず、電子メールやサーバーの情報の確認も行っていないことが分かりました。

さらに根本厚労相は立憲民主党の石橋議員の追求に対し「事務方がいろいろ整理して、監察委に提示した」「原案というよりは、むしろ議論を整理したたたき台を、議論のどだいとして示したのだろう」と回答。

「隠蔽の意図があるとまでは認められなかった」とした報告書のたたき台を、当事者である厚労省の内部職員がつくったことも認めてしまい、この調査が完全なお手盛りであることが暴かれてしまいました。

もはや隠蔽の意図がなかったという調査結果すら信用できる状況ではなくなりましたが、調査のやり直しを求める声に根本厚労相は「この報告で受け止めたい」と回答しています。

◆2018年1月に発生したもうひとつの疑惑
この閉会中審査でも立憲民主党の西村議員が「アベノミクスで成果が上がってきたとされている、うそをついていたという賃金偽装の問題なんですよ」と追求していますが、この統計不正にはもうひとつ重要なポイントがあります。

それは2018年1月、厚労省が世の中の実態に合わせるとして「毎月勤労統計調査」で大企業の比率を増やして中小企業を減らすデータ補正を行ったというもの。

厚労省はそのデータ補正の影響を考慮せずに賃金伸び率を算出したため、企業規模が大きくなった分「賃金が急伸する」という結果となりました。

本給や手当、ボーナスを含めた「現金給与総額」をみると、2018年7月が正式の1.6%増に対し参考が0.8%増、6月は正式3.3%増に対し参考1.3%増となるなど、実態に近い参考値に比べると正式な数値は倍以上の伸び率を示しています。

このため政府の専門的かつ中立公正な調査審議機関である「統計委員会」に「毎月勤労統計調査」の賃金伸び率が実態を表していないと公式に指摘されています。厚労省がデータ補正の問題を夏場までほとんど説明しておらず、統計委の西村清彦委員長も「しっかりした説明が当初からされなかったのが大きな反省点」と苦言を呈していました。

デフレ脱却を掲げる安倍政権の目玉経済政策であるアベノミクスにとって賃金伸び率は極めて重要な統計となるため、この時点で既に政策の成否に関する「印象操作」を越えた統計データの「水増し」が行われていたことになります。

実際に1月23日に厚労省がデータ補正が可能な2012年以降の再集計値を発表したところ、2018年1~11月の伸び率はすべて縮んで最大で0.7ポイント下方修正されています。

日刊ゲンダイはこの18年のデータ補正の号令を出したのが麻生財務相であると報じていますが、実際のところはどうなのか、こちらの経緯も別件としてしっかり調査する必要があります。

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