【コラム】電通の「社員230人を個人事業主に」する新制度の底知れぬ危険性と影響

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これは決して他人事ではありません。この方針で何が起こり、どれだけの影響が広がることになるのか考えてみましょう。

日本最大手の広告代理店、電通が230人の社員を業務委託契約に切り替えて「個人事業主」として働いてもらう制度を始めるというニュースが大きな話題となっています。

電通は現在副業を禁止していることから、新制度の適用で兼業や起業が可能になるとしており、日経新聞は電通がこの制度で「他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう考え」であると報じています。

企業が社員として雇用する代わりに個人事業主として業務委託する制度では、現在すでにUber Eatsが大きな社会問題となっていますが、どういった問題が発生するのか、見てみましょう。

◆労働法制が適用されず働かせ放題に
まず、「個人事業主」とされることで雇用関係が発生しなくなるため、実際には「適用者は電通社内の複数部署の仕事をする」という状態でも、労働基準法や労災保険、失業手当をはじめとした労働者を守る労働法制が適用されなくなります。

これによって月100時間を上限とする残業時間規制は適用外となり、電通は残業代を支払わずに「個人事業主」を定時後も休日も好きなだけ働かせることが可能に。

「電通時代の給与を基にした固定報酬のほか、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティブも支払われる」とのことで、いわゆる「定額働かせ放題」に近い状態となってしまいます。


加えて、厚生年金や健康保険をはじめとする公的社会保険制度や福利厚生制度を電通が負担する必要もなくなります。

この新制度が人件費や社会保障費などの大幅削減に繋がるものであることには十分注意しておく必要があります。

◆不要な人材が切り捨て放題に
新制度の適用者については「営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集」としており、中高年の不要な人材を切り捨てるためには非常に有効なしくみとなっています。

「契約期間は10年間」とされており、社員であれば65歳まで雇用しなくてはならないところを10年で切れるのであれば、それだけでも大きな経費削減となることが分かります。


なお募集を「自発的な応募のみに限る」とされたとしても、日本企業でいわゆる「肩たたき」が行われてきた歴史を鑑みれば、これをただの「募集」でしかないと鵜呑みにすることは当然できません。

◆業績やアイデアをぶんどられる可能性も
「競合他社との業務は禁止」しつつ「他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう」としており、あくまで社外で得たものを電通に還元させるための施策であることを隠してもいません。


「個人事業主」として兼業や起業で得た繫がりや経験、アイデアを電通のために差し出すことを求められる可能性は少なくありませんし、巨大企業と「個人事業主」との関係でそれを拒否するのが困難なことは火を見るよりも明らかです。

◆責任が「個人事業主」に押し付けられる
また、仕事を行うのは「電通と業務委託契約した個人事業主」となるため、仕事上で不備や犯罪行為などの不祥事が発生した際にも電通は直接責任を取る必要がなくなります。

せいぜい「弊社と契約した個人が違法行為を行い極めて遺憾です」と表明するだけで法的な責任を逃れることも可能ということに。

それを不服とした「個人事業主」が電通を相手に裁判を起こしても、果たしてどこまで闘えるのか、極めて厳しいことは誰にでも分かります。

◆労災や過労死でも責任を取る必要なし
また雇用関係がないため、もちろん「労災」が発生しても、例え高橋まつりさんのような過労自殺が起こったとしても、電通は雇用者としての責任を負う必要がなくなります。


単に「自己管理のできない個人事業主の不手際」に過ぎないと主張でき、電通はそれによって仕事が遅れて損害を受けた側だとすることすら可能になってしまいます。

◆労働組合としての団交も認める義務なし
会社員であれば労働組合として団体交渉を行い、雇用している企業に待遇の改善などを求めることが法的に保障されています。

ですが「個人事業主」扱いになってしまえば、電通はたとえ「個人事業主」とされた元社員らが労働組合を作っても団体交渉を行う義務はありません。


実際にUber Eats日本法人は配達員は労働者ではなく個人事業主であるため、団体交渉に応じる法的義務はないとして一貫して対応を拒否しています。

◆「電通もやっているから」と日本中にこの方針が拡大するおそれも
ということで「電通、社員230人を個人事業主」とする新制度が被雇用者の持つ手厚い保障や権利を奪い去り、責任を免れるための極めて虫のいい施策であることがお分かりいただけたでしょうか。

問題は、政府とも強いパイプを持ち、日本の広告代理店の最大手である電通がこのような「社員の個人事業主化」を行ってしまえば、同様の方針が「あの電通もやっているから」として日本中に広まってしまう可能性が高いということ。

ニーメラーの警句ではありませんが、「高給取りの電通社員ざまぁww」などと笑っていると、数年後に個人事業主化を求められるのはあなたかもしれません。

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