経済格差が分断を生み全国民に影響が及ぶ、最新の研究で指摘

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かつては「一億総中流」と呼ばれ、均質性の高い社会だった日本。そんな社会はとっくの昔に崩れ去りましたが、誰もがそうした格差社会の影響を受ける当事者であることが示されています。詳細は以下から。

ジャーナルScience Advancesに発表された最新の研究によると、不況と経済格差の双方が社会の分断と緊密に結びついているとのこと。

特に、自分の属する社会「階級」の外の人々との相互交流を拒む風潮は伝染し、容易には元に戻らないことが示されました。

この研究を主導したセント・アンドルーズ大学のAlexander J. Stewart数理生物学主任講師は、格差による社会の分断は長年アメリカ合衆国では問題視されてきたものの、この10年の間に世界中で顕在化してきたと指摘します。

特にブレグジットやトランプ大統領の誕生に始まり、インドやブラジル、EU諸国などでも分断が大きなトピックとなってきました。この間オンラインを筆頭とした社会全体で分断を煽る態度や論説が飛び交うようになってきています。


研究者らは文化的進化と進化ゲーム理論を基礎とした数学的モデルを作成。経済的状況の変化に伴うグループ内及びグループ外との相互交流の変遷をテストしました。

このモデルでは、個人が繰り返し自分と似た境遇の人かそうでない人との相互交流を選択して成功を目指します。同じグループ内での交流は低リスクですが、グループ外との交流よりも利益が少なくなります。

加えて、モデルでは個人の経済的成功は経済活動と直結し、個人は他の成功者の振る舞いを模倣する傾向を持ちます。

このモデルによると、一般的な不況と経済格差が個々人にリスク回避型の戦略へのシフトをもたらし、分断がより深まるという結果となりました。


Stewart氏は、国民全体が不況に見舞われる時には、リスク回避と利益の最大化のためのトレードオフとしてグループ外との相互交流が減少し、結果的に分断が助長されると指摘します。グループの一部が経済的な困難におちいると、それ以外の国民全体との間の亀裂は決定的なものになる可能性も。

加えて、そうした集団はリスク回避や分断の状況が元に戻った後も最適とは言えない状態にとらわれてしまうことになります。

なお、研究者らがアメリカ合衆国の連邦議会選挙調査全米選挙研究のデータを分析したところ、州レベルの経済格差がアメリカ全体の政治的分断と深く結びついていたことも判明しました。

Stewart氏は経済の健全性、特に経済格差のレベルが強く世論の風潮と結びついていることを指摘します。そしてこれらは相互に補強しあっており、分断が進めばガバナンスは悪化してより格差を広げ、それが再び分断をもたらすことになるとします。


そして重要なのは一度起こってしまった分断を回復させることは、分断を防ぐよりもはるかに難しいということ。なによりもまず分断を起こさないことが大切だとします。

もちろん社会の分断は経済的要因だけによって起こるわけではありません。人種や民族、宗教による対立があり、都会と地方や地域の文化的な際による分断、さらには従事する産業や雇用形態による違いなど、一概に言えるものではありません。

ただしそうした中でも経済の問題、特に格差や貧困は根深く絡んでくるものです。食うに困る日常がある場合、不当に冷遇されていると考えざるを得ない場合、それは簡単には拭い去れない分断へと成長してしまいます。

あくまで数学的モデルに基づく予測とはなっていますがこの研究の示すものは非常に生々しく、自分たちの身の回りに存在する分断と重なるものも少なくありません。

既に決定的な分断が生じていることは今年の米大統領選挙を見ても分かるとおり。誰もが対岸の火事だと眺めていられない切迫した状況が増えてゆくことは間違いなさそうです。

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