変わり映えしない料金プランやサービス、似通ったスマホのラインナップなど、横並びとなった大手携帯電話3社に対して「談合じゃないのか」など、厳しい言葉が投げつけられる昨今ですが、その「戦犯」は一体どこなのか……というお話をお届けします。詳細は以下から。
◆「新しいサービスはauから」と言い切ったKDDI
まず今回取り上げておきたいのが、先日iPhone 6s商戦に向けた記者発表会でauが打ち出したキャッチコピー。「新しいサービスはauから」と銘打ち、携帯各社に先駆けて行ってきたサービスを取り上げました。
2012年3月に開始した「auスマートバリュー」は、自社だけでなく、CATVや電力各社の固定回線と携帯電話のセット割引を実現するもの。ソフトバンクは「スマホBB割」、ドコモは「ドコモ光」などを打ち出しましたが、いずれも後出しになります。
続いては2014年6月にスタートしたプリペイド型カード「au WALLET」。貯まる一方で機種変更時くらいしか使いどころの無いポイントを活用させるべく立ち上げられたもので、やはり今年に入ってからソフトバンクが「ソフトバンクカード」、ドコモが「dカード」を立ち上げる形で追従しています。
◆ドコモ、ソフトバンクのパクリっぷりがひどい
上記のように、「まずauが新しいサービスを開始し、ドコモやソフトバンクが追従する」という構図が生まれているわけですが、特にひどいのが今回のiPhone 6s商戦。
auが発表した新料金や新サービスに対して、ドコモやソフトバンクがどのように対抗したのかをまとめてみました。
・「スーパーアップグレードキャンペーン」
まずは1年で最新のiPhoneに乗り換えられるスーパーアップグレードキャンペーン。これは月額300円のプログラム利用料を支払えば、18ヶ月経過後に残債0円で機種変更(旧機種は回収)できる「アップグレードプログラム」を強化したもの。
12ヶ月経過後に前倒し利用料(2000円、12月31日までにiPhone 6sを購入したユーザーは無料)を支払えば、18ヶ月経過後の残債0円という特典はそのままに、1年で最新機種に機種変更できます。
そんなスーパーアップグレードキャンペーンへのドコモ、ソフトバンクの対抗状況はこんな感じ。
ドコモ:
1年で機種変更できる「機種変更応援プログラム」を発表。プログラム利用料などは同じ。新機種購入に使える最大2万7000円分のポイントを還元する代わりに、残債はそのまま。最大1年間のローン二重払い期間が発生。
ソフトバンク:
「1年で機種変更キャンペーン」を発表。auのアップグレードプログラムをそのままコピーした「機種変更先取りプログラム」を、auのスーパーアップグレードキャンペーンに合わせて、そのまま強化。
・「スーパーカケホ」
そしてiPhone 6s商戦で最も大きなトピックとなった、auの新料金プラン「スーパーカケホ」。月額1700円で1回5分までの通話がかけ放題になるもので、2700円で横並びだった携帯各社新プランの基本使用料をauが初めて引き下げ、ユーザーに新たな選択肢を与えた形になります。
パケットパックも3GBから選択可能。今までの「月額6500円で完全通話定額+2GBパック」よりも安価な「月額6200円で5分以内の通話定額+3GBパック」という選択肢が用意されました。
もちろんauスマートバリューの適用も可能です。
そんなスーパーカケホに対抗する形で、ドコモやソフトバンクも月額1700円で1回5分までの通話がかけ放題になる「カケホーダイライト」「スマ放題ライト」を相次いで発表。しかしよくよく見るとパケットパックでauのプランをコピーしきれていないどころか、改悪しています。
auと異なり、3GBパックを提供しないソフトバンク。なお、同社は割引額のみ税込表示にすることで、他社よりも割引額が大きいかのように見せていますが、固定回線と組み合わせる「スマート値引き」適用時の最安価格は、auの5GBパック契約時と同じ月額5590円です。
ドコモに至っては3GBパックが無いどころか、10GBパックまでもが省かれる始末。詳細はこちらの記事で解説していますが、わざと使い勝手を悪くしているようにしか見えません。
一連の対抗策を見ていると、「あくまでauのコピーをするだけで、自分から一歩踏み込むような真似をするつもりは無いし、自社にとって都合の悪い部分があれば、そこはあえてコピーしない」という、スタンスが見てとれるドコモやソフトバンク。
これでは健全な競争が起きるはずもなく、少なくともiPhone 6s商戦の一連の施策を見る限り、ユーザーに携帯各社の「横並び」感を与えている戦犯は、この2社と言わざるを得ません。
◆すっかり既得権益者になってしまったソフトバンク
そしてもう一つ、ここで言及しておきたいのが、最近のソフトバンクの体たらく。
ボーダフォンを買収し、当時画期的だった新料金プラン「ホワイトプラン」を発表した2007年当時は、記者会見で以下のように述べるなど、日本の携帯電話市場に一石を投じる挑戦者のような立ち位置でした。
「料金プランというと、各社ともにわかりにくいという批判がある。ゴールドプランも、※印が多すぎてわかりにくい、という指摘を受けたのも事実。今回はそういったことをふまえて、※印のいらない、一切付帯条件のつかない、シンプルな料金体系にした」
しかしかねてからBuzzap!でもお伝えしている通り、今となってはソフトバンクは新料金プランや新サービスが発表される度に、よくよくプレスリリースや関連ページを精読しないと「罠」に陥る可能性が最も高い携帯電話会社です。
さらに唯一無二のホワイトプランを武器に戦っていた当時と違い、2014年に導入された新料金プラン「スマ放題」はドコモから、新たに導入する「スマ放題ライト」はauからコピーしたもの。
auが旧料金プランを当面続けると発表すれば、ソフトバンクも続けると発表し、auが打ち出した各種新サービスについても、基本的に内容をコピーするだけで、自分から攻める姿勢を見せることはありません。
つまり挑戦者の顔をして携帯電話事業に参入したはずのソフトバンクは、とっくの昔に他社が動かないと動かない、既得権益者の側に回ってしまっているわけですが、これから先もなお、ソフトバンクは横並びの戦犯であり続けるのでしょうか。
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