叩けば叩くほどMRJにブーメラン、産経新聞の中国旅客機「C919」批判があまりにもイタい


某全国紙に掲載された「中国が開発を進めている国産旅客機はひどい」という記事の内容が、開発難航中のMRJにそっくりそのまま当てはまる部分が多すぎて目も当てられない……というお話をお届けしてしまいます。詳細は以下から。

まず見てもらいたいのが、産経ニュースに掲載された『【瓦解する中国】“国産機”で命がけ初フライト 「世界の企業570機購入予定」も…実態は国家主導の「義務的お買い上げ」』という記事。

その内容を今年初頭に5回目の延期が発表され、初号機の納品が2020年以降にずれこむことになった国産旅客機「MRJ」と照らし合わせてみると、あまりにもブーメランが多く、実はMRJをディスるのが目的の高度な揶揄なのでは?とすら思ってしまいます。

・「エンジンなど中核部品はほぼ外国製で50%程度が国産」なのに、中国製とアピール
自ら「国産ジェット機」とうたうMRJの部品は70パーセントが外国製。もちろんエンジンや操縦システムなどの中核部分も含まれます。

・米連邦航空局(FAA)や欧州航空安全局(EASA)の型式証明を取得する目途が立っていないので国際線旅客機として使えない。だから国際市場はC919への関心を失っている
MRJも2017年5月時点で海外製の「PW1200Gエンジン」がFAAの型式証明を取得したのみで、機体の型式証明を取得できるメドは立っていないのが現状。残念ながら国際市場からの関心では、信頼と実績のあるライバルのエンブラエルに遠く及びません。

ちなみにC919に採用されるエンジンはFAA、EASAから型式証明取得済み。機体本体についてもEASAへの型式証明申請が進められているとのことです。

・「世界の企業23社が570機を購入予定」とも報じられているが、実態は中国国内の航空会社とリース会社による購入が大半で、国家主導による「義務的な」お買い上げでしかない
購入先に国内航空会社が含まれる点はMRJも同じ。ただしMRJの場合、半数近くは先方が予約を一方的にキャンセルできるオプション契約な上、開発の遅れによる莫大な違約金が懸念事項となっています。

なお、三菱はアイーダ・クルーズ社から豪華客船の製造を請け負ったところ、建造が遅れに遅れて累計2500億円超の損失を出し、大型客船事業から撤退する憂き目に。慣れない分野の新規開発に取り組むのであれば、国内勢で固めた方がいい場合もあるわけです。

・3年後の就航を目指すC919について、日本を含む先進国の航空関係者らは「日本や欧米で飛ぶことは、少なくとも近い将来はない」と鼻にもひっかけない
開発が遅れに遅れて2020年以降の初号機納入を目指すMRJも鼻に引っ掛けてもらえるかどうかは怪しいところ。

一方で国土が広く人口の多い中国は自国がそのまま巨大な市場となるため、「まずは国内市場に投入し、十分なノウハウを身に着けてから、後継機以降で海外進出を狙う」という選択肢もあることを考えると、C919をあなどることは決してできません。

国の威信を賭けて「国産ジェット」の開発を進める日中両国。日本がリードしている立場とは決して言いがたい状況であるだけに、下手に中国を過小評価し、手痛いしっぺ返しを食らう羽目になることは避けたいものです。

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