「幸せホルモン」オキシトシンと社会的圧力がレイシズム(人種差別思想)を治癒させるかもしれない


レイシズムには論破よりもホルモンと社会的圧力の方が有効かもしれないという研究結果が示されました。詳細は以下から。

先日もアメリカ合衆国バージニア州で白人至上主義者とネオナチのデモに抗議する市民が殺傷される事件が発生しましたが、レイシズムはもしかしたら理詰めで論破したり宗教的な意味で改心させるよりもより実効性の高い治癒方法があるかもしれないという研究結果が発表されました。

◆オキシトシンと社会的圧力の実験
ドイツのライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボンのRené Hurlemann教授らの研究チームは実際に発生した経済的な損失に関わる50の物語を収集しました。その半分は難民からのもので、残りの半分は元々のドイツ人のものです。いずれの物語でも国連の定める安全で健康的な最低限度の生活に必要な食品や住宅などが示されています。

76人の学生らは50ユーロを渡されて全ての物語を提示され、琴線に触れた物語にそれぞれ1ユーロまでの募金の機会を与えられます。また、募金しなかった分は自分の取り分となります。

さらに、どの物語にいくら募金していくら自分の懐に入れたかは周囲から分かるという社会的圧力の発生した状態でこの実験は行われました。

この結果、被験者は平均して30%以上のお金を募金し、恐らくは差し迫った状況を反映してか難民に対して19%多く募金しています。しかし事前の調査でレイシストであったり排外主義的な考え方を示した被験者は当然ながら総募金額が少なく、特に難民に対しての募金は極めて少ないものでした。

第2の実験グループは、ほぼ同じプロセスで実験を行いましたが2点大きな変更点がありました。1点目はそれぞれが実験の24時間前に「幸せホルモン」として日本でも知られるオキシトシンか、対照実験としてプラシーボを投与され、実験は個人用の小部屋で行われて社会的圧力が排除されました。それでも第2グループの一部は社会的圧力を受けたグループと同じ募金の平均値を出したのです。

オキシトシンを投与された被験者は衆人環境ではより寛容な態度を示し、この薬品の向社会的な効果が確認されましたが、発見はそれだけに留まりませんでした。

排外主義的な考え方を持ち、プラシーボを投与された被験者は寄付の平均額を知らされても難民への募金額に変化はありませんでした。しかし、オキシトシンを投与された排外主義者が平均募金額という社会的圧力となる情報を知った場合、寄付金額が74%増加したのです。

◆オキシトシンってどんなホルモン?
オキシトシンは良好な対人関係が築かれているときに分泌され、闘争欲や遁走欲、恐怖心を減少させる事が知られています。元々は出産や授乳に関連するホルモンと考えられてきましたが、今では男女問わず普遍的に存在することが知られています。

その性質から「幸せホルモン」「愛情ホルモン」と呼ばれ、抱擁や愛撫、性行為(特にオーガズムの瞬間)に大量に分泌されることから「抱擁ホルモン」の呼称もあります。

マッサージなどで心地よく触られたりペットを撫でる行為でも分泌され、直接的な皮膚接触がなくとも、会話、家族団らん、井戸端会議、居酒屋などでのおしゃべりなどでも分泌されることが知られています。

この実験結果はレイシストや排外主義的な傾向のある人は、オキシトシンが不足している可能性があることを示しています。つまりは、オキシトシンが分泌されるような他者との暖かく豊かな接触やコミュニケーションが行われない状況が常態化しているかもしれないということ。

そうした状況は単に他者の心や状況への想像力を知識として損なうのみならず、ホルモン分泌という面からも共感し、寛容であれる状態からかけ離れてしまう可能性があるということ。

他者を差別し、場合によっては生活や生存を脅かすヘイトクライムに直結するヘイトスピーチは既に日本では対策法も制定されて禁止され、それでも繰り返されるヘイトスピーチに対しては多くの批判が多方面から浴びせかけられています。

しかし実際問題としては、それらに加えて「治療」すべき人格上のひとつの障害としてのアプローチも有効なのかもしれません。

Oxytocin Plus Peer Pressure Might Overcome Racism _ IFLScience

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