いったい何がこのBoom Festivalをここまでスペシャルなものにしているのでしょうか?
レポート最終回となる今回は、Boom Festivalのオーガナイズのきめ細かさ、このフェスティバルを支えるシーンや文化の広がりと深みを会場に現れた数々から見ていきます。このBoom Landに存在する全てのものには、Boom Festivalを貫く哲学が染み渡っているからです。
オーガナイズの面から見ると、1週間過ごすに当たって快適さがこの上なく重視されています。もちろん暑さと乾燥、夜の冷え込みなどの過酷な条件はありますが、そうした中でも気持ちよく、Boom Festivalの世界に浸りきれるようなきめ細やかな配慮が行き届いているのです。
例えばBoom Landにはオーガナイザーが運営するスーパーマーケットが存在しています。保湿クリームや日焼け止めをはじめとした日用品が並んでいます。
フルーツや各種ドリンク、パンやチーズやヨーグルトなどの食品も購入することができます。
さらにはテントやタープ、チェアなどのキャンプ用品も手に入れることが可能。
レジも複数存在し、常に稼働しています。
インフォメーションセンターは24時間オープンしており、帰りのBoom Busの予約や遺失物預かり所なども併設されています。
写真がぼけてしまいましたが、こちらはATMコーナー。もちろん24時間オープンで、常に2人のガードマンが警備しています。
こちらはシャワールーム。40人程度が一度に浴びることができる巨大なシャワールームがテントサイトに複数存在しており、水シャワーではありますが、いつでも無料で浴びることができます。夜は寒いですが、昼間はむしろ気持ちいいですね。
水道もBoom Landの各所に設けられています。引用可能なため、みんなペットボトルに水を入れて持ち運び、水分補給に余念がありません。熱中症対策として必須なためですが、どこを歩いていてもすぐに水道が見つかるのは本当に素晴らしい配慮でした。
トイレも同様に多数設けられています。テントサイト寄りのトイレは朝は混雑しますが、場所を選べば待たずに入れます。常にトイレットペーパーが供給され、掃除も常時行われていました。細菌を使って分解するタイプのトイレであり、後々自然に返すことができるとのこと。乾燥しているためか悪臭もほとんど気にならず、1週間の最後まで快適に使用できていたのは驚きでした。
こちらはダンスフロア近くの男性用トイレ。こうした設備があるとより回転がスムーズになるので助かります。
ゴミ箱なども会場各地に設置されています。さすがに1週間ということもあり、衛生上の問題があったり、飛行機などで訪れて持ち帰るのが難しい人が多いため、この辺りの処理も徹底していました。
そして、音楽が掛かっていないような場所でもところどころにこのような日陰のスペースや建造物が設けられています。移動の最中にちょっと休んだり、じっくりチルアウトしたり自由にできるようになっています。
Boom Landは自転車持ち込みがOKのため、このようなスタンドも要所要所に置かれています。
こちらはキッズエリア。木陰の中に遊具や休めるスペースが作られていて、近くにはフードブースもありました。子連れで快適に遊べるようになっています。
ヨガやワークショップを行うBeing Filedというエリアです。予約登録制で毎日多くの講座が開設されていました。ヨーロッパのトランスフェスティバルのシーンはスピリチュアルやオルタナティヴと極めて親和性が高く、隣り合っているという以上に被っている部分も少なくありません。もちろんトランスミュージックによるダンスは瞑想であるというBoom Festivalの理念からすればなんら不思議なことではないのですが。
湖に突き出した半島の突端にはファイアサークルも。基本的に直火の取り扱いは厳禁なのですが、ここだけは許可されています。
こちらはプレゼンテーションや講義、ドキュメンタリー映画やアートフィルムの上映会などが行われるLiminal Village。扱われるのはメディア論や教育、環境保護からインターネットにおける禅やSNSのあり方についての議論など、極めて多種多様な分野に及びます。
Being FieldにしてもLiminal Villageにしても、有名アーティストがDance TempleでLiveの真っ最中だったとしても常に満員だったことは本当にこのシーンの裾野の広さと分厚さを思い知らされました。Boomerの多くは Boom Festivalに単に踊って遊びに来ているわけではないのです。自らの思考や生活に新しい、良きものを取り入れる学びのチャンスとして捉えているのです。
この辺り、日本のシーンがあくまで音楽とダンスで遊びに興じることがメインとなっていることを考えると、次元が違うなと感じざるを得ませんでした。ヨーロッパではこうしたシーンと日常生活が地続きで繋がっており、断絶がありません。
そしてこちらがマーケットエリア。トランスミュージックやフェスティバルのシーンの服や雑貨、アクセサリなどを売るお店がずらりと並んでいます。まさに商店街という規模で、テイストも店によってそれぞれ違っています。
こちらは喫煙具や栽培キット屋。
また、面白いのがこちらのフリーマーケット。こちらはオフィシャルなものではなく、勝手に出店している感じです。世界を回るトラベラーがあちこちで買い付けしてきたもの、それらを元に自作したものなどが主に売られています。オーガナイズ側は全く我関せずで黙認しており、基本的にBoom Land内で自由にお店を出すことができます。
ガラナやマカの入ったパワーボールというチョコレート菓子を自作して売っていたり、寿司ロールを販売していた日本人のチームもいました。この辺りのDIY大歓迎の放任主義は自由や自治を大切にするカルチャーのなせる技でしょう。
会場内では散水車が常時走り回っています。乾燥していて多くの人が歩くため、細かい砂埃が立つためです。メインとなる道だけですが、これだけでもずいぶん軽減されています。
場所によっては人の手でホースを使って撒いています。
そしてこちらは会場内シャトルバス。本当にバスなのかもよく分かりませんが、スペースがあれば勝手に飛び乗り、降りたい時に勝手に飛び降ります。暑くて歩くのが大変な時には重宝しますが、なかなかタイミングが合わないと乗れませんし、結構早いので飛び乗るのもちょっと大変。でも乗ると楽しいんですよね。
ここはドラッグチェックを行うブース。会場内で売られているドラッグの成分をチェックすることができます。まがい物や混ざり物による事故を防ぐための目的で設置されており、常に人が並んでいました。以前の記事でも書いたように、ポルトガルではあらゆるドラッグの個人使用が非犯罪化されています。なのでオーガナイザーとしても安全策としてこうしたブースを設置できるのです。
そしてこちらのKosmicareはドラッグの過剰摂取で調子が悪くなった人のためのケア施設。非犯罪化されたとはいえ合法化された訳ではありませんが、ポルトガルではドラッグのリスクを最小化させ、健康被害を軽減させるハームリダクションの考え方からこうした設備の設置が認められています。
なお、これらのブースはBoom Festivalのオーガナイザーのみならず、カトーリカ・ポルトゥゲーザ - ポルト・カンプス・フォス大学と薬物中毒者らへのケアなどを目的とした国家機関であるSICADの協力の下で設置されています。
フードも極めて整然と、そしてバリエーション豊かに展開されています。まず驚くのがドリンクブース。大量の水とビールがまるで工場の倉庫のように積み上げられています。
でもスタッフたちはみんなフレンドリーです。
ここがフードコートのCentral Plaza。巨大な屋根があり、夜はもちろん暑い昼間でもゆっくりと過ごせます。もちろん喫煙もOK。
時間帯によっては空いていますが、ご飯時にはかなり混雑します。
お店は極めて多様で個性的。ピザからファラフェルなどの地中海料理、カレー、パスタ、ジャマイカ料理、ベジタリアンフードなどからコーヒーやスムージーのブースも。
夜になるとさらにきらびやかになります。
その辺りに座って食べ始める人も。ゆるいですね。
その場で焼き上げる1枚5ユーロのピザです。激ウマでした。クラフトビール3ユーロと共に。
8ユーロ程のBBQセット。後ろのビールは2ユーロです。
ベジタブルラップ(6ユーロ)とグリーンスムージー。朝食に最適でした。サラダにミントが入っているのが素敵。
他にもSacred Fireステージの近くにはオーガニックやマクロビ、ビーガンなどの出店の並ぶフードエリアもあります。こちらはメインに比べて混雑している度合いが高かったです。食に対する意識の高いBoomerが多かったためかもしれません。
なお、こちらがBoom Festival名物の「アサイーwithグラノーラ」。Dance Templeの後ろの飲食ブースで5ユーロで売られていますが、暑さに疲れた身体に速攻で染み渡ります。しかも美味い。これぞスーパーフードです。
さて、いかがでしたか?Boom Festivalのきめ細かなオーガナイズにかけられる途方もない時間と労力、そしてそれを可能とする分厚く幅広い文化の存在を感じ取っていただけたでしょうか。Boom Festivalは単なる巨大な野外フェスティバルではなく、長い時間を掛けて作り上げられ、練り上げられてきた文化の集大成の表象であると言うことができるでしょう。
それは、単に形のとしての野外フェスティバルを日本に持ってきて真似てみたとしても、決して到達できるような類いのものではありません。10年単位の時間と経験を積み上げ、より広い文化や地域社会、場合によっては国とも繋がり、深め、広めていったからこそのBoom Festivalなのです。
ここで躊躇なく断言しますが、日本でこれと同じ経験をすることはできません。どんなに素晴らしい野外フェスティバルがあったとしても、それはまた別物なのです。それだけのものをBoom Festivalは独自に積み上げ、ここまで来ているのです。
そうしたものを目の当たりにし、思い知らされるためにも現地を訪れ、1週間という時間をこの灼熱の楽園で過ごしてみてはいかがでしょうか?次は2018年、会場でお会いできるのを楽しみにしています。
BOOM FESTIVAL, 1997-2016, Oneness _ Music _ Arts _ Environment _ Culture _ Love
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