【詳報】人口カバー率49→96%・加入者数4倍でシェア1位、LTEを本格展開するKDDIのミャンマー通信事業の現状は?


2014年に住友商事、ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と組んでミャンマーの通信事業に参入したKDDI。

「まだ2Gが主流で、一部で3G」だった同国の通信事業ですが、3年が経過した今、状況は劇的に進化していました。詳細は以下から。

まずは2014年7月に行われた発表会の内容を軽くおさらい。2013年時点で10.5%しかなかったミャンマーの携帯電話普及率。ネットワークも2G(GSM)と3Gが混在しており、データ通信容量を拡大するために10年で2000億円を投じてまずは3Gエリアを拡大していくという話でした。

そして本日行われた説明会。

登壇者はKDDI株式会社 グローバル事業本部 グローバルコンシューマビジネス本部 本部長 岡部浩一氏です。

ミャンマーの資料。KDDIの参入当時に6000万人オーバーとされていた人口ですが、これは内戦によって調査ができなかったことを受けたIMFによる推計で、2014年8月に31年ぶりに調査を実施したところ、1000万人少なかったことが判明しました。

KDDIのミャンマー通信事業は住友商事、MPTとの共同事業です。

現地でのKDDIの取り組み。まずはブランドロゴを刷新しました。

そして今まではネットワーク容量の関係で抽選販売となっていたSIMカードを、いつでも誰でもどこでも買える店頭販売に切り替え。ショップのレイアウトも大きく変更し、カウンター式にしました。

ユーザーのニーズを踏まえた料金やサービスを提供

そして最も大きなポイントがエリア整備。人口カバー率は49%から96%にまで拡大しました。また、参入当初はアンテナの調整や基地局同士の干渉対策が行われていませんでしたが、KDDI本体からネットワーク整備スタッフを出向させることで、通信品質を大きく向上させました。

CSR活動を積極展開し、経理を紙からネットワークを使ったシステムに切り替えるなどのテコ入れも。

その結果、2014年12月時点で36.6%だった携帯電話普及率は3年間で101.3%にまで上昇。MPTの加入者数は約600万→約2300万にまで拡大し、シェア4割に。日本で言うところのNTTドコモ的な立ち位置です。

外部機関から最も愛されるブランドとしての認知や通信速度1位の認定を受けています。

ミャンマーではSNSや動画サイト利用が拡大し、データ通信量が3年で約10倍に。

これを受けて開始されたのが屋内外をカバーできる高速通信サービス「LTE+」。3年前まで2Gがメインだったミャンマーで4Gが本格展開されることになります。

エリアが広い3Gと高速な1.8GHzのLTEを組み合わせることで、ネットワーク利用量増大に対応を進めていくとのこと。CDMA2000陣営な上、国内で唯一1.8GHz帯が割り当てられていないKDDIがW-CDMAの3Gと1.8GHz帯のLTEを推進しているのは、なんだか不思議な気がしなくもありません。

なお、MPTが1.8GHz帯で割り当てられたLTEの帯域幅は10MHz。通常では下り最大75Mbpsまでの通信サービスしか提供できませんが……

4x4 MIMOを採用することで、下り最大150Mbpsの通信に対応。

4x4 MIMOをサポートした「Galaxy S8」や「Xperia XZ」で実効速度を計測したところ、下り最大110Mbps以上を実現しています。


ちなみにミャンマーでのデータトラフィックの大部分はSNSと動画。

そのためSNSや動画サイトへのアクセスに別途ボーナスパケットが付属する「ハッピーデータコンボ」を提供するとのこと。

広いエリア、高速通信、エンターテイメントに対応した料金プランの3本柱を打ち出したのが「LTE+」です。

◆質疑応答
フリー石野:
競合他社の状況は?(加入者、速度など)

KDDI:
競合他社の状況は私どもも存じ上げる段階にありませんが、3Gサービスの開始時期が早かったこともあり、カバレッジは最大ではないか。4G LTEは今から立ち上げる段階なので、まだ比較する状況ではない。加入者は1位。

?:
MPTの経営状況やKDDIの収益へのインパクトは?

KDDI:
ジョイントオペレーションなので、MPTさんの意向もあって非開示とさせていただいております。

日経堀越:
データ通信量の推移が10倍くらいに膨れ上がっているようだが、ARPUは?ミャンマーでの競争軸は?

KDDI:
ARPUの数字自体はお答えできないが、私どもが参入した段階では下がっていたものの、今はフラットに。データ通信が伸びているので右肩上がりになるのではないかと期待している。競争軸はどこの国にでも同じ事が言えて、まずは人口カバー率から始まる。ようやくLTEが入ってきたのでスピード競争に。どういった付加価値を提供していけるか、満足度などの競争になっていくと考えています。

フリー石川:
去年2.1GHzで4G、今年1.8GHzでLTE+を始めるとしていますが、なぜ呼称を統一しなかったのか。

KDDI:
2.1GHzは5MHz(下り最大37.5Mbps、ちなみに3GはHSDPAだったので42Mbps)しか使えなかったので屋内での限定的な展開だったが、1.8GHzでは本格展開となるので「LTE+」という名称を導入した。今後は1.8GHzを中心に展開していきます。

フリー山田:
元々MPTが保持していた施設に、KDDIによる新規施設を組み合わせて事業展開していくという話だったが、KDDIによる新規施設の部分は、今回のLTE+の敷設を見越した整備だった?2G→3G→4Gへの移行にかかるコスト的はどれくらいだった?

KDDI:
こんなに早くLTEが来るとは思っていなかったという状況。私たちが2014年から入れ始めた装置は1.8GHz帯には対応していなかったが、新しいものではソフト側で対応できる。展開に関してはスムーズにできた。MPTの装置は比較的新しかったため、日本で世代交代を進めていった時よりはスムーズに移行できた。10年間で2000億円投資すると説明した範囲内で収まっている。

?:
参入時に「5年以内に国土の70%を物理的にカバーする」ことを条件とされたが、状況は?

KDDI:
北部が紛争地帯のため、整備が困難なことを今話し合っている。あとは山岳部についても話し合っているところ。現時点での物理カバー率は差し控えさせて下さい。

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