日本のプロダクトデザイン黎明期の代表的な存在であり、食器や鍋などのキッチンツールほか、生活のごく身近な部分に関わる製品を生み出してきたデザイナー・柳宗理さん(96)が、12月25日に肺炎で死去しました。
柳さんの訃報については昨日中にTwitterを中心に情報が出回っていたものの、確証となる情報がなかったため関係各者も様子を見守っていましたが、新聞報道によって確定してしまった形になります。
asahi.com(朝日新聞社):柳宗理さん死去 工業デザイナーの草分け、文化功労者 - おくやみ・訃報
新聞各社の報道でやはり一番多く言及されているのは、蝶のような特徴的な形状をした椅子「バタフライスツール」。1957年にミラノ・トリエンナーレにて金賞を受賞し、ニューヨーク美術館やルーブル美術館といった世界的な美術館にも収蔵されているプロダクト。1954年当時からずっと製造を手がけている天童木工が今も作り続けている一品で、Amazonでも買うことができます。
Amazon.co.jp: 天童木工 バタフライスツール ローズウッド S-0521 RW-ST: ホーム&キッチン
父・柳宗悦が、生活に即した民芸品に注目して「用の美」を唱えて起こした「民藝運動」の影響を受けながらも、東京美術学校で学んだ際にル・コルビュジェの存在を知りデザインを志すようになった結果、形状の美しさと便利さを同居させた希有なデザインを可能にした人物です。
キッチンツールなどのデザインがよく知られている彼ですが、実は公共空間のデザインも手がけていて、横浜市営地下鉄の共用部などがそれにあたります。青と黄色のコントラストが鮮やかです。
Sori Yanagi Drinking fountain.JPG - Wikipedia
Amazonでは彼のデザインしたキッチンツールがカテゴリ化されて一覧できるようになっています。昨今はオシャレなカフェが彼のカトラリーをこぞって使用していることもあり、眺めていると見覚えのあるプロダクトに出会えるかと思います。
注ぎ口が緻密に計算され、こぼさず注げるミルクパンや、単なる円形ではないスプーンなど、美しさと便利を兼ね備えたプロダクトばかり。それらには未だ多くの羨望のまなざしを集める魅力があり、Amazonのレビューを見るとその一端が垣間見えます。
Amazon.co.jp: 柳宗理 ステンレス・アルミ3層鋼 片手鍋 18cm つや消し: ホーム&キッチン
単なる大御所デザイナーとして収まるのではなく、終生プロダクトデザイナーとして多くの人に製品を提供しつつ、金沢美術工芸大学でも教鞭を執っていました。葬儀は近親者で行うとのことです。ご冥福をお祈りいたします。