全自動自殺機「Sarco」がアムステルダムで初の一般公開、来年より3Dプリント用データのオンライン配布も開始予定


苦しむことなく簡単に自ら人生を終わらせられる時代がやってきそうです。詳細は以下から。

人はなぜ生きるのか。生きる意味は何なのか。いや、そもそも生きなくてはならないのか。生と死に関する疑問は人類史を貫く我々人類の究極のテーマのひとつです。

生きることについては生きるって素晴らしいと歌う人がいる反面、生きてるのって、なんか気持ち悪いよねと思う瞬間もあるでしょうし萬有の
眞相は唯だ一言にして悉す、曰く、『不可解』
として滝に飛び込む人もいます。

ですがいざ死のうとしても、よほどの決心がなければ自ら命を絶つことはできないもの。基本的には多大な痛みや苦しみを伴いますし、何より死を恐れて避けようとするのは生命の根源的な欲求のひとつですから恐怖は極めて大きいものになります。

◆死がもっとお手軽簡単で苦しくないものに
そんな状況を変えようとオーストラリアの医師、Philip Nitschke博士が作成した全自動自殺機の「Sarco(エジプトの石棺サルコファガスの略より)」は昨年大きな話題となりました。Sarcoを使えば、ボタンひとつで簡単に素早く、苦しまずに人生に終止符を打てるのです。

Nitschke博士はSarcoの最新版を4月にオランダのアムステルダムで開催されるFuneral Fairで初の一般公開が行われ、VRグラスを用いた体験コーナーも設けられました。ここでは実際にSarcoに入り、ボタンを押すとどうなるのかが実体験可能だったとのこと。


Sarcoの作動原理は、カプセルに入ってボタンを押すと液化窒素がSarco内に流れ込んで酸素レベルを低下させ、低酸素症を引き起こし、1分以内に意識を失い死に至ります。

通常であれば混乱や心拍の上昇が起こって呼吸が浅く速くなり、発汗や喘鳴が起こります。しかしNitschke博士によると「Sarcoのもたらす死に苦しみはない。窒息もチョーキングもない。なぜなら自殺者は低酸素環境でも容易に息をすることができるからだ。症状はある種の多幸感と酩酊と言えるだろう」とのこと。

Sarcoの使用までのフローは、まず希望者はオンラインテストを受けて正常な判断力があることを審査されます。テストに合格した人には24時間有効のアクセスコードが与えられ、それを入力して最終確認の後に使用が可能となります。

Nitschke博士はSarcoの完成品を2018年内にリリースし、2019年にはSarcoの3Dプリント用データをオンラインで配布する予定。つまりは世界のどこにいても3DプリンタがあればデータをダウンロードしてSarcoを作り、人生を終わらせることができるようになります。

◆当然ながら大きな批判
もちろんこの状況は「死にたいけど苦しみたくない」という人の死へのハードルを大きく下げることになるため、安易な自殺の横行などが危険視されていますし、当然ながら倫理や宗教などの分野からも大きな批判を浴びています。

ただしNitschke博士は既に20年以上前の時点で合法的に4人の自殺を幇助している安楽死推進論者で人間には「死ぬ権利」という公民権があると主張し、1997年にExit Internationalという安楽死推進団体を設立した人物です。

日本でも自殺に関しては以前ドクター・キリコ事件という痛ましい事件がありましたが、Nitschke博士には迷いはないように見えます。

ネットでは「あなたが虚しく過ごした今日という日は、きのう死んでいったものが、あれほど生きたいと願ったあした」(趙昌仁「カシコギ」より)という名言が時折引用されますが、この世界に生きているのはその言葉が響く人ばかりでもありません。

果たしてこの人生からの「出口」はこのような形で開かれているべきなのでしょうか?もちろん70億人の人間全ての生や死を一言で語ることなどできないように、全ての死への欲求を一言で語ることもできません。

厭世観や将来への悲観からという人もいれば、病気や怪我の後遺症での改善の見込みのない苦痛を終わらせたいという人もいます。失恋や人間関係への絶望で生に意味を見いだせなくなる人もいるでしょう。

これらを単に「自殺念慮」と括ってひとまとめに語るのはあまりにも大雑把に過ぎますし、個別的な理由に目を向けない極めて不誠実な態度です。であればこそ、Sarcoが厳密な規制の下で運用されるケースもどこかで想定せざるを得なくなる事が考えられます。

実際に上記のFuneral Fairが開催されたアムステルダムは大麻や売春と並んで安楽死が合法である事でも知られています。例えSarcoがある国では禁止されたとしても、苦痛のない死を求めて海外から合法な国を目指し、「終活生」が訪れるようになるのかもしれません。

An euthanasia expert just unveiled his ‘suicide machine’ at an Amsterdam funeral fair - The Washington Post

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