超音波による脳のコントロールに成功


「電磁波で脳を操られる」ことを避けるためにアルミ箔で作ったヘッドギアを被ることが以前から一部で流行っていましたが、実際に脳を操れるのは超音波だったようです。詳細は以下から。

近年、磁気を用いて記憶を改善したり、精神的な状態を安定させる試みは実際に行われてきており、また超音波で脳の特定の部位を刺激し、特定の活動を促進や抑制する実験も始まっていました。

ですがユタ大学のJan Kubanek博士はそこからさらに一歩進み、超音波を猿の脳に照射し、選択をコントロールすることに成功しました。

ジャーナル「Science Advances」に掲載された研究では、Kubanek博士らの研究チームは2匹のマカクザルに対し、スクリーンの左右に複数の画像を見せています。

研究チームはマカクザルがどの画像に注目したかを記録。この手法は、見る場所に偏りが生じる可能性を調べられるため、脳卒中後の脳の病変の検査にも用いられるもの。

実験で、Kubanek博士はマカクザルが選択を行う直前に27万Hzの超音波を左右の前頭眼野に照射。

ひとつの画像が他方の1ミリ秒前に超音波なしで表示された場合、マカクザルは通常先に表示された画像に注目します。表示されるタイミングのずれが大きくなるほど、注目される画像はより分かりやすく早い方になっています。

片方のマカクザルは先に表示された画像に注目すると報酬を得られるようにし、もう一方はどちらを選んでも報酬を得られるようにしていましたが、超音波の照射を行うと、いずれのマカクザルも照射された側の前頭眼野の逆側に表示された画像に反応しやすくなります。

通常であればマカクザルは左右どちらでも先に表示された画像に反応するところ、2/3もの確率で照射とは逆側の画像に注目するようになりました。

先に表示された画像で報酬を得られるように仕込まれたマカクザルは超音波の刺激に比較的あらがっていましたが、それでも55%は照射された逆側の画像に注目しています。

これにより、脳への超音波の照射によってマカクザルの選択に影響が生じていることが確認されました。

これはまだ極めてシンプルな事例に過ぎませんが、外部からの刺激が脳の選択に影響を及ぼすというメカニズムが存在していることは間違いありません。今後の発展次第では、より広範囲の複雑な選択を外部からコントロールすることも可能となりそうです。

Kubanek博士らはこの技術を薬物などの依存症からの脱却に応用できると考えていますが、当然悪用されれば自分で決めたと思ったことが実は外部からの超音波照射によってきめられていたといったサイバーパンク的な状況が訪れる可能性もあります。

ただしマカクザルであってもある程度の照射への抵抗を見せているため、特定のひとりの特定の選択を完全にコントロールするといった使い方は難しそうでもあります。

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