9月にも正式発表&発売されるとみられる「iPhone 6」。
昨年iPhone参入を果たしたNTTドコモが怪気炎を上げ、iPhoneで先行するソフトバンクやauが迎撃する……という構図が展開されると思いきや、今年は大きく変わることになりそうです。詳細は以下から。
◆au、ソフトバンクの戦略的新機種「HTC J butterfly」「AQUOS CRYSTAL」
まず今回、注目しておきたいのがauとソフトバンクが相次いで発表した新機種。いずれも独自色が強い、戦略的なモデルという位置付けで、世界展開することで製造コストを削減し、比較的安価に提供されるのが特徴です。
・新しいHTC J butterfly
飛ぶように売れたと評判の「HTC J butterfly」を最新スペックにバージョンアップさせ、JBLの高級イヤホンを同梱したモデル。処理能力・カメラ・音質・デザインのすべてに全力投球したフルスペックモデル。日本にとどまらず台湾や北米などで世界展開されます。
・AQUOS CRYSTAL
性能は高くなく、防水非対応であるものの、フレームレス液晶・ハーマンのBluetoothスピーカー同梱を武器に日米で発売されるモデル。外見のインパクトは他の追随を許しません。
◆タブーとなった「秋モデル」をあえて投入へ
上記2機種はいずれも8月29日(金)発売なため、「遅い夏モデル」と言えなくもないものの、実質的には秋モデルとなるわけですが、そこで気になるのが「どうしてiPhone 6にぶつかるこの時期に投入するのか」という部分。
かつて携帯各社は春夏秋冬と、季節が移り変わるごとに新機種を投入していましたが、自社内で食い合ってしまうことを避けるため、iPhoneを取り扱い始めた会社から順番に秋モデルを廃止してきた経緯があります。
iPhone人気のえげつなさが良く分かる、2012年10月の携帯電話販売数ランキング。唯一iPhoneを取り扱っていないドコモが発売した秋モデル「AQUOS PHONE si」がiPhoneに完全に圧倒されてしまい、見るも無残な事態に。
そのインパクトはドコモの幹部をして会見で「なんとか5」と言わせしめるほどだったわけです。
上記のケースを見ても分かる通り、携帯各社にとって秋モデルを投入することはタブーに近いわけですが、今回auおよびソフトバンクはあえて秋に「iPhone以外の選択肢」を提示したことになります。
◆iPhoneとぶつかっても勝算はある?
いくら戦略的な機種とはいえ、日本市場で絶対的な人気を誇るiPhoneにぶつけるのは無謀すぎるのではないか……という気がしなくもありませんが、日本におけるiPhoneの実力をチェックした上で、勝算があるのかを考えてみましょう。
・3社参入で最もiPhoneが売れたタイミングでもシェアは6割弱
NTTドコモが参入し、類を見ない盛り上がりを見せた昨年のiPhone 5s/5c商戦。しかしBCNランキングの市場調査によると、iPhoneが最も売れた2013年10月でさえも、シェアは携帯電話全体の57.9%にとどまっています。
ちなみに今年初頭の学割商戦でもiPhoneの売れ行きは飛躍的に伸び、再び5割程度のシェアを獲得していましたが、これは多額のキャッシュバックによるもの。実際キャッシュバックが終了すると、iPhoneのシェアはたちまち3割に落ち込んでしまいました。
以上のことから携帯3社がiPhone 6を販売しても食い込める余地が必ずある上、ドコモすら秋モデルを出さなくなった今、競争相手がほとんど存在しないことを考えると、あえて秋モデルをリリースする価値は十分にあるのではないでしょうか。
・「ドコモのツートップ」は一定の戦果を挙げていた
また、NTTドコモが対iPhoneの切り札として昨年夏モデルで導入した「ドコモのツートップ」も、Xperia Aがかなりのシェアを獲得していたことが2013年6月の販売ランキングから明らかに。
ソフトバンクも2013年冬モデルを2機種、2014年春モデル・夏モデルにいたってはわずか1機種……と、ラインナップの絞り込む方向にシフトしていますが、性能・価格面で魅力ある「強い機種」を用意し、広告費・販売促進費などのリソースを集中してつぎ込めば、十分iPhoneと戦える武器を作り出せるわけです。
◆iPhone 6商戦は「ドコモだけがiPhone頼み」に
料金が横並びとなり、各社のネットワーク整備もある程度進んだ今、同じ武器を使って殴り合っても差別化は難しく、単なる消耗戦に終始することが容易に想像できるiPhone 6商戦。
しかし前述のデータから判明したように、世の中の人間すべてが必ずしもiPhoneを求めているわけではないことや、携帯各社の「色」を出すという観点からも、「HTC J butterfly」「AQUOS CRYSTAL」の投入には十分意味があると思われます。
KDDIはHTC、ソフトバンクはシャープ……といったように、携帯各社と比較的良好な関係にあるメーカーが製造を担当したことも今回の秋モデルの特徴です。
一方でNTTドコモは唯一iPhone頼みで戦うことになるわけですが、これは電電公社時代から良好な関係を築いてきたパナソニック、NECが相次いでスマホから撤退し、残った富士通もスマホ事業で苦戦を強いられていることによるもの。
HTCやシャープと異なり、富士通やドコモには日本以外の市場でスマホを売るための足がかりが無いため、仮に富士通がiPhone 6にぶつけるスマホを開発しても生産規模は小さくならざるを得ず、採算が取れない可能性が高いわけです。
auやソフトバンクがiPhoneと秋モデルの二刀流で攻める中、一本足打法での戦いを迫られるNTTドコモ。ともすれば「ドコモだけがiPhone 6発売で盛り上がる」という、一人相撲に陥る可能性も浮上しただけに、しばらく目が離せそうにありません。
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