【現代編】飛鳥時代末期に新羅人が記し水戸黄門が本邦初の考古学的発掘調査を行った国宝「那須国造碑」を見てきました


飛鳥時代末期に新羅からの渡来人によって建てられ、水戸黄門が助さんに命じて日本で初となる考古学的発掘調査を行わせた国宝「那須国造碑」を実際に現地まで見に行ってみました。

さて、国宝「那須国造碑」を巡る冒険も今回で最終回となります。初回となる「飛鳥編」ではこの碑が飛鳥時代末期に新羅からの渡来人によって建てられたことをお伝えしました。

そして続く「江戸編」ではその1000年後、草むらに埋もれたこの碑が再び歴史に登場し、あの水戸黄門が助さんに命じて本邦初(世界初との指摘も)という考古学的な発掘調査を行ったことをお伝えしました。

時代は下って1911年(明治44年)に那須国造碑は国宝に指定されました。戦後の1952年にも新国宝に指定されています。

現在も那須国造碑は笠石神社の御神体として安置されており、現在の住所は栃木県大田原市湯津上となります。


東京方面からは東北自動車道を通って矢板ICで降り、県道161号線、県道48号線、県道343号線を通って向かいます。

公共交通機関での来訪はかなり難しく、JR東北新幹線と東北本線の那須塩原駅で下車の上、市営バス「雲岩寺行き」を黒羽で下車するか、関東バス「五峰の湯線」で黒羽出張所で下車します。その後、要事前予約のデマンドバスに乗り換え、笠石神社前で降ります。

ただし、こちらはかなり煩雑になるため可能であれば車で向かった方がいいでしょう。

さて、北関東ののどかな田園風景の中をドライブして行くと、開けた田んぼの光景の中に鎮守の森が見えてきます。入口の駐車場に車を止めると、ここだけ鬱蒼と静かな森が現われます。

なおここで那須国造碑を見るには、拝観料500円を納めて宮司さんの説明を受けて案内してもらうことになります。必ず40~60分程度の滞在時間を見越した上で訪れてください。

森の中に沈むようにして石碑がいくつもあります。

国宝の説明の文章。かなり昔に書かれたもののように見えます。

鳥居から右手側の社務所に向かい、奥の椅子のところで拝観料を納めます。ここで宮司さんからの説明(20~30分程度)を聞きます。

説明の内容は、これまでの記事で書いたような那須国造碑の成り立ちから発掘、この神社が作られていった歴史など。

実際に笠石神社を訪れるのは、国宝目当ての観光客ももちろんいるものの、歴史や考古学の研究者や学生、書道家といったプロフェッショナルな人々が多いようです。時によっては国内外の教授が学生を連れて訪れることもあるといいます。

多くの資料を見せていただきながらの解説なので、より学問的な興味をもっている人ほど楽しめることは間違いありません。ここには碑の拓本などもあり、碑の資料や御守などを購入することも可能。

説明の後、鳥居を潜って本殿へと向かいます。

境内は静かでシンプル。

お稲荷さんを取り囲む木々に歴史の長さが偲ばれます。

こちらが本殿。扉を開けていただき、那須国造碑を文字通り目の前からじっくり眺めることができます。文字のひとつひとつの美しさはもとより、1300年という時間をそれぞれの文字が経てきているという圧倒的な事実に息を呑まされます。

平城京よりも古い時代、日本海を渡って朝鮮半島からやってきた新羅の渡来人。彼らは都を超えてはるか東の地まで旅を続け、ここに骨を埋めました。彼らはこの那須国造碑を建て、後には奈良の大仏のための金を発見し、採掘にも尽力します。

そうした歴史は一度失われ、1000年という途方もない時間の後に見出されました。まるでSFの「失われた古代文明」のように。それを見つけ、いったいどんな物語があったのかを知ろうとしたのが我々のよく知る水戸黄門だったというのは、なんとも感慨深いもの。

そうした興味が世界でも最も古いといわれる純粋な学術的な意味での発掘調査を行わせ、現代にまで国宝としてこの笠石神社に残り続けているのです。

那須国造碑そのものはもちろん、この碑を巡る全ての物語こそが何者にも代えがたい宝物なのではないでしょうか。

気になった方はぜひ、現地を訪れて話を聞き、現物を見てみてください。

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