「1万9800円のドンキPCと大差ない基本性能のパソコンが27万8000円」
思わず目を疑う人も多いであろうこの金額、はたしてどこまで妥当なのでしょうか。詳細は以下から。
◆1台27万8000円の「ARROWS Tab」
まず見てもらいたいのがNEWSポストセブンの『小中学校のパソコン1人1台 「1台27万円」のケースも』という動画ニュース。
渋谷区が「1人1台」を実現するために24億7200万円(1台あたり27万8000円)を投じ、富士通の「ARROWS Tab」を3年リースしたという内容です。
◆渋谷区の資料から詳細を紐解いてみた
高性能なゲーミングパソコンを配ってもお釣りが来そうな規模の予算が動いた渋谷区の「1人1台」。そこでBuzzap!では渋谷区の資料を元に、その実態に迫ってみることにしました。
「渋谷区モデル」とされる施策の解説。なんと児童生徒1人ずつにセルラーモデルのタブレットを配布し、学校以外の環境でも学べるようにする試みが2017年9月から実施されています。
背景にあるのは情報技術の発展や指導内容・大学受験の変化、教員の多忙化など。
「1人1台タブレット持ち帰り」「どこでもつながるセルラー回線(LTE)」「フルクラウド」という、かなり高い要求水準となっています。
そこで導入が決まったのが富士通の「ARROWS Tab Q507/PE」。10.1インチ液晶にIntel Atom Z8550、4GBメモリ、64GB SSD搭載で、児童でも安心して使えるよう堅牢性と防水防塵機能を兼ね備えています。
富士通公式サイトでの製品解説。NEWSポストセブンでは希望小売価格8万5300円とされていましたが、正しくはLTEモデルのため1台10万8300円から。Atomタブレットで10万円オーバー……。
ハードウェアの基本仕様に手は加えられていないようですが、MS Officeインストール済み。どんどん値段が上がっていく選択肢です。
有害なサイトや動画・SNSサイトを閲覧できないようにしたほか、インターネットの利用時間制限も。
最新のウイルス対策や電話でのサポートが提供されます。
返却期限は2020年8月。3年間のリース契約です。
◆高くなる要素しかありませんでした
防水防塵の高堅牢性仕様にLTE対応で10万円を超えたベースモデルにMS Office、子ども向け各種あんしん機能、アンチウイルス、故障時の電話サポート……と、各種オプションがモリモリとなった渋谷区の「ARROWS Tab」。
これだけでも高くなる要素ばかりですが、極めつけがスタディサプリで学習できる仕組みを採用したところ。つまりLTE回線で動画を見ることが前提なわけです。
さらに1600時間以上の動画を使って学習できる「デジタルドリルシステム」も提供されています。
「3年間、いつでもどこでも制限なしで動画見放題」というサービスを提供するために必要なコストは決して低くなく、ましてやリースが開始された2017年当時では、今よりさらにコストがかさむことが容易に想像できます。
理想的ではあるもののコストが跳ね上がる一方なので、家にWi-Fi環境がない家庭の児童だけLTEモデルを提供すればいいのではないか……という気がしてならない渋谷区のアプローチ。
当時ですら2万円程度で売られていたものと大差ない性能のWindowsタブレットが1台あたり27万8000円で導入された背景には、このような事情があったようです。
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