おどけてみせなければ危険分子とみなされ、排除される危険があることを彼らはよく知っていました。詳細は以下から。
私たちは映画などで時折、人種や民族、性別、セクシャリティなどにおけるマイノリティ(少数者)がユーモラスな役柄で登場するのを目にすることがあります。
そうしたユーモアはフィクションの中のみならず、現実社会でも発揮されていることが示されました。
その理由は社会の偏見や差別から身を守るためという、ある種の「防衛機制」ですが、時にはマジョリティ(多数者)らの態度や行動に影響を及ぼすこともあります。
スコットランドのダンディー大学のAnna DobaiさんとNick Hopkinsさんはジャーナル「European Journal of Psychology 」に発表した研究で、
ハンガリーのロマ(ジプシー)を対象に調査を実施。その中でも偏見が予期される非ロマのハンガリー人との間のビジネス上の関係におけるユーモアの現れ方に焦点を当てています。
ハンガリーでは現在もロマへの差別や偏見が根強く残っています。研究者らは30人のロマのメンバーにインタビューを行い、彼らがそうした日々の暮らしの中で示される偏見と闘うため、どのようにユーモアを用いているかを調査しています。
それによると、ユーモアは実に多様な場面で用いられていることが判明。第一に、緊張を緩和し、決まり悪さを和らげるために典型的なロマらしい冗談を言うことが分かりました。
こうした冗談は対話をなめらかにするだけでなく、ステレオタイプに見られることで困難になる関係をうまくまとめるため、マイノリティ側が意識的に使っている場合もあるだろうと研究者らは指摘します。
別の例では、ユーモアは相手のある種の態度を引き出すために用いられます。例えば、大げさなロマのステレオタイプを演じることで生じる相手やその周囲の反応を測定するためにも用いられます。
研究者らが注目したのは、彼らが冗談に留まらず皮肉や風刺といったユーモアをも駆使していること、そしてその対象が時には公的な権威にも向かい、マジョリティの態度をある程度支配し、偏見から身を守るために用いられているということでした。
この例としては、とある回答者は空港の手荷物検査で、自分から荷物を開いて差し出して見せ、係官に「探し物を見逃さないように気を付けてくださいよ?」とある種自虐的に笑いを誘ったというエピソードが示されています。
研究者らは、こうしたユーモアの使い方はハンガリーのロマに独特なものではなく、多かれ少なかれマイノリティの集団においては一般的に見られるものであると強調しています。
マジョリティから偏見の目で見られ、場合によっては差別の対象となるからこそユーモアを用いてある種の「道化」を演じ、場合によってはそのユーモアを駆使して立ち回ることを強いられているマイノリティ。
もしあなたがあるマイノリティを「愛想のよい、コミカルで親しみやすい存在」と捉えているのなら、それは差別や偏見から身を守るための術だということは頭のどこかに留めておいてもよいかもしれません。
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