ストーキングや車泥棒など、悪用が危険視されているAppleの紛失防止用のスマートタグ「AirTag」。なんと極秘のはずの諜報機関まで特定してしまいました。詳細は以下から。
海外メディアによると、AirTagを仕込んだ小包により、極めて巧妙に隠されたドイツの諜報機関の存在が暴かれたそうです。
ドイツ人のソフトウェア開発者であるLilith Wittmannさんは、政府機関の行動をセミオートで評価するソフトの開発中、政府機関リストで奇妙な組織を発見しました。
その組織は「連邦電気通信サービス(Federal Telecommunications Service)」という名称ながら、多くの行政のデジタル化を手がけてたWittmannさんですら聞いたことがないもの。奇妙に思ったWittmannさんはググってみますが、やる気のないサイトがあるのみ。
不審に思って電話をしても誰も取らず、Eメールも送信できない状況でした。
行き詰まったWittmannさんは、連邦政府関係者のフォロワーからのコメントを期待してこの件をツイート。
この動きを知った連邦議員から接触があり、議会でこの組織の予算や組織図、人員について質問が行われたものの、政府側の回答は「5年間予算が付いていない」という驚くべきものでした。予算がなければ当然その組織は何もできないはずです。
その後もWittmannさんは、住所とされているベルリンのトレプトウ=ケーペニック区の現場を自ら訪れ、IPアドレスも独自に調査。
複数の情報から、内務省のトレプトウ支部と連邦電気通信サービスが同じ住所を使っていることを突き止めたWittmannさんが最後に行き着いたのがAirTagを用いた位置情報の追跡でした。
連邦電気通信サービス宛の郵便が最終的にどこに届くのか。それが分かればこの組織の実態に迫れると考え、WittmannさんはAirTag入りの小包を内務省トレプトウ支部に送付します。
Appleの「Find My」システムを確認すると、小包はベルリンの仕分けセンターを経由してケルン市にある仕分けオフィスに届けられ、最終的にケルンの連邦憲法擁護庁に届けられました。
連邦憲法擁護庁は第二次世界大戦後の西ドイツで作られた、反憲法活動を調査するための諜報機関です。
東西ドイツ分裂時代は東ドイツの諜報機関「シュタージ」とも対抗していましたが、現在はイスラム過激派やネオナチへの対処を主な任務としています。
つまり連邦電気通信サービスは、内務省のオフィスにカモフラージュされ、郵便物は連邦憲法擁護庁という正真正銘の諜報機関に届くという、極めて巧妙に隠された組織だったわけです。
表向きは予算も付かず人員も仕事も存在しないこの組織の実態はどのようなものか、Wittmannさんは今後さらに調査を継続するとしています。
犯罪への悪用どころか、隠された諜報機関を暴き出すというスパイ道具級の活躍を見せたAirTag。今回は地道な調査の最後のダメ押しではありましたが、気軽に使うのが怖くなるほどの性能を発揮しています。
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